2016年11月25日

霧の向こうの不思議な町

 柏葉幸子さん作の児童向けファンタジー小説です。

あらすじ
 小学6年生のリナは父親に提案され、一人で霧の谷へと旅へ出た。小さな田舎町から誘われるように霧の谷の森を抜けると、そこにはどこか日本離れした洋館の立ち並ぶ不思議な町であった。会う人会う人がどこか普通と違う、へんてこりんな町。リナはこの町で働きながら夏休みを過ごすことになるが…。




 映画「千と千尋の神隠し」の原作ということで手に取った一冊であります。児童文学というものを久しぶりに読んだわけですが、読みやすく、面白く、それでいて教訓的な意味合いを持たせていて、ものすごく作りこまれていることがよくわかりました。
 「千と〜」ではアジア風(和風?)な異世界が描かれていますが、『霧の向こうの〜』ではヨーロピアンな世界観。そんな異世界に神社という極めて日本的な空間からつながっているのが面白いです。
まためちゃくちゃ通りは現実世界とは大きくかけ離れているはずなのに、非現実的な浮遊感がないというところも好感です。登場人物の描かれ方がそうさせているのでしょうか。登場人物のもつめちゃくちゃさがどこか私たちの持つめちゃくちゃさに通じている気がします。彼らのめちゃくちゃさを私たちはどこか滑稽に思いながらこの本を読んでいますが、私たち自身も多かれ少なかれ彼らのようなめちゃくちゃさ(非道理さ)を持っていると思います。ある意味親近感を感じるからこそ、彼らに滑稽さを感じるのではないでしょうか。加えて、登場人物は皆私たちが持つべき優しさを持っています。彼らの優しさは彼らの魅力を作るだけでなく、私たちを彼らの近いところまで持ってきてくれているのではないでしょうか。
 優しく、親しみやすく、心躍る良い作品です。児童文学ということで敬遠せず、ぜひ一度お読みください。

評価:A
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2016年11月15日

後期雑感

  読み終わった本の感想をだらだらと書き連ねるだけのブログになりつつあるこの頃ですが、今日は珍しく日記でも。夏休みが終わり、大学一回生も後期に差し掛かりました。
地理学や都市空間論関係の授業をとりまくる、かなり趣味性の強い履修を行い、毎日授業に臨んでいます。以前は「過疎地域の活性化をやりたい!」とばかり考えていましたが、最近ではそれに加えて「(変わっていくはずの)文化を守る」とはどういうことか、さらに関連して「文化を守る」思想の変遷やそのありかたを考えたりしています。
 土日は、10月中はほとんどワンゲルで埋まり、金比羅山でロッククライミングのトレーニング、比良の奥の深谷や南紀の立間戸谷などで沢登りなどをしていました。沢は楽しいのですが、かなりの週末が潰れるのでほかのやりたいことが全然できなくなるのがつらいところであります。
 11月6日は山仕事サークル杉良太郎のほうで「森の文化祭」というお祭りに参加しました。このお祭りは林業お手伝い先の雲ケ畑にてサークル主催で行ったものです。私はバルーンアートのパフォーマンスをしてまわりました。そのほか、廃材を使った積み木や杉玉づくり、バームクーヘン、竹ごはん、鹿肉コロッケ、野菜販売、ネームプレートづくり、輪投げなどなどいろいろな企画・料理がふるまわれていました。自分は立場上あまり遊びまわれなかったのですが、それでもとっても楽しかったです。今年は先輩におんぶにだっこでしたが、また来年か再来年には自分が中心となって動きたいです。過疎地でのお祭りを企画できる、というのは自分のやりたいことを考えると素晴らしい機会を与えられていると思います。来年のこの日を心待ちにしています。
 そして13日の日曜日には薪割りの作業。初めてやった時と比べるとだいぶ良くなったとは思いますが、先輩方のやるのを見ると、まだまだ精進が必要だな、と痛感。さらに、はじめてチェーンソーを使って木を伐採させてもらえました。少し怖いという思いはありましたが、なんとか伐採。なかなかできない良い経験をさせていただいたと思います。一番大変だったのは、切った木をロープで引っ張って作業場まで持っていく作業。綱引きの要領で引っ張っていくのですが、重くて大変な木もいくつか。久々にサークル活動で筋肉痛になりました。
 山仕事サークル杉良太郎、楽しいし、勉強になるし、居心地が良いしで本当に良いサークルです(居心地が良すぎてはめをはずし気味な気もするので、気をつけないと、ということはありますが)。入ってよかったな〜と最近殊に感じています。
 さて、次に来るのは学祭です。いよいよ今週末。クラス有志であげもの屋さんを出します。揚げスイーツ、揚げあんこもち、揚げチーズを売ります。高校に学園祭がなかったこともあり、かなり楽しみにしています。シフトが多くてあまり遊ぶ時間はないけれど、これも思う存分楽しみたいです!
posted by みさと at 17:46| 奈良 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年11月09日

コミュニティデザインーー人がつながるしくみをつくる

 山崎亮さんの本です。コミュニティを形成することで、長く人気の続く公園を作ったり、地域を活性化させてきた筆者の取り組みがつづられてきています。
 人がいなくなってコミュニティが消えるのではなく、コミュニティがなくなることで人がいなくなる。そのようなことが書かれており、考えてみれば当然のことではありますが、なるほど、と思いました。
 地域を守るためにコミュニティが必要だ、ということは地域活性化を考える人ならば誰もが思うことでしょうが、なかなかコミュニティを作る、ということは積極的に行われていないように思います。観光客誘致、地域でのお祭りや交流会などがあっても、その実践は極めて安直なことが多く、それで地域を活気づけるほどのコミュニティを形成できるかというとかなり疑問です。
 主体的な事業/地域の担い手を育てること。それが筆者の取り組みの根幹です。単発的なイベントや箱モノの建設などは、一時的に地域は賑やかになり、潤うかもしれませんが、その先に続くことは稀であります。そのイベントや箱モノを通して人々がつながり、コミュニティを形成していくことが必要なのです。そして、そのコミュニティが主体的に続くイベントや箱モノなどを運営し、地域を未来へ繋げようと動いてゆく。あくまで行政や事業者が行うべきものは、きっかけづくりなのです。

 私は高校時代から地域の活性化に取り組みたいといろいろ考えてきましたが、その内容は都市計画、教育制度、文化財保全などハード面のことが多くを占めてきました。この本を読んで新たな視点を得ることができたと思います。
地域の活性化を考える人にはぜひ読んでほしい一冊であります。

評価:AA
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2016年11月07日

女子と愛国

佐波優子さんのドキュメンタリーです。自虐史観的な教育に反し、「愛国」に目覚めた女性たちを描いています。
 図書館でなんとなく手に取った一冊。いわゆる「ネット右翼」の行う思考をそのまま表したような本でした。あまりにもステレオタイプにすぎ、逆側の立場を持つ人が皮肉的に描いたといっても不思議には思わないほどです。
 論理的に戦後教育などを批判するわけではなく、それらが批判されるべきものという前提で、女性たちが「愛国」に目覚める様子が描かれており、その時点で、同じような思想を持つ人に読者層を絞っていることがわかります。その目覚める理屈も同じ立場からきわめて主観的に眺めているため、いまいちよく理解できませんでした。
 外を説得させるのではなく、内輪で共感を持ちながら読むような本なのだろうなー、と思いながら読了しました。

 このような思想を見ていると、「国」というものが何なのかよく考えないまま「愛国」を叫んでいる人が多いような気がします。また機会があれば国家や「愛国」についての私見を改めて載せるかもしれません。

評価:D
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2016年10月25日

神去なあなあ日常

 三浦しおんさんの小説です。

あらすじ
 平野勇気は高校卒業後フリーターで食いつないでいこう、と思っていた。しかし、担任の計らいで「緑の雇用制度」に勝手に応募され、三重県神去村で林業をすることとなる。はじめこそ慣れない山仕事に反発していた勇気だが、次第に神去村の美しい自然と林業の面白さに魅了され、個性あふれる村人たちにもなじんでゆく…。



 私は現在大学で林業のサークルに入っているのですが、それまでほとんど林業というものを意識したことがありませんでした。柏原の山村はいずれも農業が主要な産業で、林業に触れ合う機会がなかったのです。都市の若者にとって林業というのは縁遠い存在であることが多く(多摩の林業は有名ですから東京はそうでないかもしれませんが)、農業や漁業でなくそんな林業に焦点を置いたことがこの小説の良いところだと思います。
 軽快なタッチで勇気やヨキら村人たちの生活の様子が生き生きと描かれています。勇気の現代っ子らしさや神去村の古き良き田舎らしさは少しステレオタイプにすぎる感はありますが、ここまではっきり描かないと物語の躍動性は生まれなかったのだろうな、とも思います。
先月同じくステレオタイプな田舎像を描いた『夏美のホタル』をリアリティがない、と辛口に評価しましたが、こちらは林業をとりあげる過程で村人の生活が表出しており、リアリティに欠けていながらも、物語の裏にしっかりとしたものが敷かれている感じがして高評価できます。
また美しい感動譚ではなく、騒動劇的な形にしたのも、軽い文体がうまく生かされて良かったと思います。
続編『神去なあなあ夜話』も近く読んでみたいです。

 ちなみに、、「緑の雇用制度」もあって林業の担い手は若返ってるという統計データが出ていたり…。いや、林業って興味深いです。本当に。

評価:A
posted by みさと at 11:50| 奈良 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書(その他の著者) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年10月11日

改訂新版 文化人類学

 内堀基光さん、奥野克己さんらによる教科書です。私は将来日本の過疎集落や衰退都市の地域活性化を行いたいと思っているのですが、そこに文化の保全というものが深くかかわってくることに気づき、文化人類学についても少し学んでみようと思ってこの本を読みました。
 ある程度文化の消失を覚悟して新規開発を行うにしても、今ある集落・都市の文化を活かして町おこしをするにしても、その文化を持っている人たちがどうしたいかを考えねばなりません。「文化」というものそれ自体移り変わっていくものなので、それを保全するとはいかなることかということも大きな問題です。文化相対主義は一見わかりやすい思想ですが、そのありかたについてもかなり奥が深いと思います。(また機会があればこのあたりの自分の考えをまとめて改めてブログに載せるかもしれません。)
 文化人類学をかなり広い観点から概論した一冊です。教科書というものはどうも読みにくいもので読了に時間はかかりましたが、学ぶことも多く、時間をかけて読んだ価値はありました。

評価:B
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2016年10月01日

猫と針

 恩田陸さんの小説です。

あらすじ
 高校時代の友人の葬式の後、高校の映画研究会の同級生四人が集まった。久々に集まった面々は四方山話に花を咲かせるが…。




 「人はその場にいない人の話をする」というテーマのお話です。実際面と向かった相手の話題を出すのってやはりどこか抵抗がある感じはします。第三者について話す方が比較的遠慮なく、おしゃべりを楽しめるのでしょうね…。
 さて、この小説は恩田陸さんが書いた戯曲の脚本です。実は私はもともとこれを、恩田さんが戯曲の台本を書いたという小説で、戯曲自体が架空のものだと思っていました。キャストの女優さんの名前をグーグル検索して初めて劇団や戯曲が実在のものと知ったのです。さらに、劇中でさらに劇を作っているという描写があるので実世界と劇のあわいが曖昧になったような感じがします。噂話という主題の特性も虚構と現実の曖昧さに拍車をかけています。
 形だけを見れば恩田作品の中では異色ですが、中身や手法を見れば恩田ワールド炸裂ですね。

評価: B
posted by みさと at 23:35| 奈良 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書(恩田陸) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年09月29日

夏美のホタル

 森沢明夫さんの長編小説です。

あらすじ
 大学生の相羽慎吾は写真家を目指していたが、中々芽が出ずにいた。ある日恋人の河合夏美とともに写真を撮りに出かけた折、山奥の寒村にある「たけ屋」というよろず屋に立ち寄る。そこでは、老母子がひっそりと暮らしていた。彼らの温かさに触れ、親しくなった二人は、夏休みの間たけ屋の離れに住まわせてもらうことになるが…。




 表紙の有村架純さんの可愛さに惹かれたのは内緒です…笑(田舎を舞台にした本を読みたくなったというのもありますから(^^;;)
 先日紹介した『文豪山怪奇譚』の次に読んだのがこの本です。戦前の文豪連の作品を読んだ後でこの本を読んだからか、かなり文体が軽く感じられました。今の小説ってこれくらいの感じやったっけ?とも思いましたが、そんなことはないですよね…。しかし文体が軽いということは読みやすいということでもあるので、良悪裏表ですね。
 内容は住民の絆が強く、自然豊かで遊び場に溢れる典型的な「田舎」を舞台に温かな人間像が描かれています。王道ですと言えば王道ですが、やはりぐっとくるものがあります。
 ただ、二時間ドラマ的というか、リアリティに欠けるのと、文章から作者の意図があからさまにわかりすぎるのが少し気になった点です。
 少し否定気味のレビューになりましたが、決して面白くない作品ではなく、軽く読めて感動する作品ですので、また手に取られる機会があればぜひお読みください。

評価:C
posted by みさと at 19:14| 奈良 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書(その他の著者) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年09月26日

長い夏休み

 さて、大学は8月の頭から9月いっぱい夏休み。二ヶ月も授業がなくては堕落しそうだ…などと思っていましたが、サークル活動や自動車教習所などで意外と暇のない生活を送っています。
 林業サークルではお手伝い先の集落でのお祭り(松上げ)のお手伝いをいたしました。地元の若中が足りないということで毎年うちのサークルが手伝っているそうです。中々他所の町のお祭りのお手伝いをするという機会はないため、本当に貴重な体験となりました。
 8月の末日からはワンゲルの沢合宿。日帰り〜2泊3日の沢登りを天候と体力気力の許す限り実行するというものだったのですが、台風の影響で二つだけ行っておしまいになりました。しかし、その二つがこれまでの沢登りの中で一番楽しいものだったので満足でした。京大ワンゲルのホームページに写真が上がっているので、よかったら検索してご覧ください笑。ちなみに下界でも野宿を貫いたので一週間かけたのに宿泊費が一銭もかからないという格安旅行でした笑
 合宿終了後は東京の友人宅に3泊して関東を観光して回りました。中々行くことの出来ない土地を回ることができて楽しかったです。
 10月からはまた授業。授業でもサークルでも詰め込みすぎてしまうきらいのある自分ですが、キャパオーバーにならない程度に頑張っていくつもりです。
posted by みさと at 23:20| 奈良 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年09月22日

文豪山怪奇譚 山の怪談名作選

 東雅夫さん編のアンソロジーです。収録作品は火野葦平『千軒岳にて』、田中貢太郎さん『山の怪』、岡本綺堂さん『くろん坊』、宮沢賢治さん『河原坊』、本堂平四郎さん『秋葉長光ーー虚空に嘲るもの』、菊地寛さん『百鬼夜行』、村山槐多さん『鉄の童子』、平山藘江さん『鈴鹿峠の雨』、泉鏡花さん『薬草取』、太宰治さん『魚服記』、中勘助さん『夢の日記から』、柳田國男さん『山人外伝資料』です。
 またまた読み終わってから感想を書かずに一ヶ月超経ってしまった…。怪奇小説が好き+登山が好きな自分なのですが、本屋さんでふとこの本が目につきました。これは買うしかない!ということで衝動買い。実際心底買ってよかったと思える一冊でした。
 山は美しく、恐ろしく、生活に密着していて、それでいて未知の領域が大きい場所。怪談、幻想小説の格好の舞台であります。近代の文豪連が書いたというだけあってどの作品も文章が素晴らしい。もちろん、幻想的で美しいもの、読者の好奇心をかきたてるもの、背筋のぞくりとするもの、心躍るもの、とその素晴らしさの質は作品それぞれに異なります。私は中でも岡本綺堂さん、泉鏡花さんの作品が気に入りました。またお二人の他の作品も読んでみたいと思いました。
 一作一作魅力を語っていきたいところですが、一月前の記憶を辿りながら書いてはうまく表現できない気がするので、近く再読してからにします。(その前に積ん読を片付けていかなくては…笑)
 本当にオススメな一冊です。ぜひ本屋さんで探してみてください!笑

評価:AA
posted by みさと at 22:31| 奈良 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書(その他の著者) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする