2014年08月15日

笑う警官

 佐々木譲さんの警察小説です。

あらすじ
 あるアパートで女性の変死体が発見された。所轄の刑事たちは、すぐにその部屋の奇妙な点に気がつくが、詳しい調査もしないまま本庁に捜査の委譲を迫られた。間もなく女性は警察官だと分かり、彼女の元カレが重要参考人とされ、銃殺許可まで降りるが……。




 随分前にレビューした「制服捜査」と同じ世界感の小説です。道警シリーズとでも言うのでしょうか。こちらも映画化されていたそうですが、知りませんでした。確かに、ドラマ向けの盛り上がる作品です。
 これも、小説の中だと、ドキドキしながら読むことができますが、本当にこんなことがあったら怖いでしょうね。世間を取り締まる立場の警察が隠蔽体質で、邪魔者を抹殺する……って、世界のどこにもあってほしくないですね。
 「制服捜査」とどちらが面白いかと言ったら、あちらに軍配が上がりますが、こちらも本当に面白かったです。

評価:B
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2014年07月20日

公開処刑人 森のくまさん

 堀内公太郎さんの長編推理小説です。

あらすじ
 悪人を殺し、ネットの掲示板に犯行声明を公表するという公開処刑人「森のくまさん」の話題で東京は満たされている。人々の畏怖の中で、次第「森のくまさん」をヒーロー視する人々が現れ始める……。




 これもかなり軽いミステリです。なんと二日足らずで読了です。単純なストーリーですが、かなりはまりますね。こういうブラックな小説は結構久しぶりで、一気に読んでしまいました。
 ミステリ的には、途中で「ああ、こうやろうな」と大体予測が立つので割と簡単。ネーミングを考えたらすぐにわかってしまいます。
 実際、正義だって行使の仕方を間違えれば立派な暴力ですよね。この小説ほどではないにしろ、世の中には誤った正義が満ちている気がします。近頃集団的自衛権やら原発問題やらで、右派も左派も極端なことを言っていますが、どちらもある面では良い処方箋となるでしょうし、ある面では暴力的なものになりうると思います。どこで縛るかが大切ですよね。

評価:B
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2014年07月17日

祈祷師の娘

 中脇初枝さんの長編小説です。

あらすじ
 わたし・春永は祈祷師の家で育ったが、母の連れ子で、母が離婚して家を出たため家族と血がつながっていない。一人だけ姉たちが持つような力を持っていないことに私は所在なさを感じていた。
 学校で祈祷師というものの存在を否定する男子や、激しい霊障に襲われる女の子、そして祈祷師の後継者としての路を確実に進む姉の姿を見て、春永は次第にある思いが強くなる……。




 あっさり読めますが、心にしみる作品でした。これも学級文庫にあったものを何気なく読んだのですが、割と当たりの作品でした。ファンタジーに近い、超自然的な現象が出てくるにもかかわらず、ファンタジー特有の臭みがなく、また思春期特有の、自分のアイデンティティーを問う主人公を描いているのもよかったと思います。
 ちょっとヴォリューム的に物足りないような気もしますが、試験中にはこれくらいが丁度良いです。

評価:B
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2014年07月07日

制服捜査

 佐々木譲さんの警察小説です。

あらすじ
 道警の人事大異動により、刑事だった川久保篤は志茂別駐在所に単身赴任することとなった。小さなこの農村では事件が少ないと思っていたが、個々の小さな事件の奥に、この町の腐敗が潜んでいることに気づく……。




 これまでに読んだことのある警察小説は全て刑事ものでしたので、駐在さんに目をつけたのは斬新に思えました。やっぱり一番身近な警察と言えば駐在所や交番です。地味なので退屈するかと思いきや、この小説の駐在さんは刑事顔負けの行動力で、全然そんなことはありません。一度本にのめりこむと中々手を離すことができません。
 個人的に、このような田舎町を舞台とした小説は好きです。無機質な都会が舞台より、遥かに興奮します。これはど田舎ってほどでもないけど、割とどこにでもある田舎町な分、よりリアルな感じがします。

評価:A
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2014年07月06日

三四郎

 夏目漱石さんの恋愛小説です。

あらすじ
 熊本から上京してきた三四郎は、都会の街・学問・女性に驚かされ続ける。未知の匂いを放つ東京で出逢った友人たちの中に、ひときわ輝く女がいた……。




 久々に明治文学を読みました。古い小説の割には、割と読みやすい類に入ると思います。ほろ苦い青春悲恋の話ですが、この小説みたいに比喩とか使った恋愛表現なんてとてもできません。その点、ちょっと感情移入しにくかったのですが、恋愛でかっこいい比喩を使えたら気障やけどかっこいいな、と思います。まあ、現実の恋愛なんてそんなこと考える余裕もないかもしれないですが……。
 三四郎からにじみ出る青さが自分や友人に重ね合わされました。三四郎という若者像は、かなり普遍的なものだと思います。

評価:B
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2014年06月05日

ふしぎの国のアリス

 ルイス・キャロルさんのファンタジー小説です。北村太郎さん訳のものを読みました。

あらすじ
 少女アリスは、面白そうな喋るウサギを追いかけて穴に飛び込んでしまった。穴の中では、奇妙なことがたくさん起こる不思議な世界だった。体の大きさが変わったり、動物や植物、無機物がしゃべったり……。




 ドラマ「アリスの棘」に触発されて、読みました。絵本やアニメで読んだり聞いたりしたことはありますが、実は小説を読むのが初めて。翻訳小説というのはどうも苦手で、読むのに大分時間がかかってしまいました。
 アニメなど絵がついていれば、まだ可笑しく読むことができるでしょうが、時折挟まる挿絵だけでこの小説を読むのは中々に苦痛です。破綻した世界を楽しむのがこの小説なのでしょうが、むしろ読んでいて頭がおかしくなってきそう。翻訳で良くあることですが、註釈を見ながら読むのもじれったいです。
 もっと英語力があれば、原文で読みたいなとも思うのですが、今はまだ辛そうです。
 尤も、長年に渡って読み続けられている世界の名作を読み逃すのも勿体ない話です。一度読んでおいて損はないと思います。
 「鏡の国のアリス」も一度挑戦してみたいですが、またしばらくしてからかな……。

評価:C
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2014年05月24日

死刑台の舞踏

 森村誠一さんの推理小説です。

あらすじ
 志水義郎は中学時代、浜口伸一を中心とするグループに苛烈ないじめを受けていた。怨念を抱えたまま志水は卒業し、やがて刑事になった。
 あるとき、持田明は女性を守るために暴漢を殺害してしまった。死体を公園の隅に隠したが、間もなくそれは消失し、全く遠いところで発見される。暴漢は、志水をいじめていた三人衆の一人だった……。




 森村さんの作品は、悪く言えば代わり映えのしないともいえますが、基本的に同じカラーの小説ばかりなので、安心して読めます。飽きがこないです。大体悪徳政治家が絡んでくるのですが、これもその例に漏れず。そこまで分かりやすく悪徳なら、選挙で落ちるやろ、と思うのですが……。まあ、風刺ですからね。そう言えば、朝日新聞の声欄でお見かけしたことがあって驚いたのですが、政治に一家言持っていらっしゃるのでしょうか。
 私は私立中高に通っているのであまりいじめの経験はないのですが、どうしてそのようなことをする人が消えないのか、不思議です。人をいじめたところで何か良いことがある訳ではないのに、と思います。

評価:B
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2014年04月12日

博士の愛した数学

 小川洋子さんの長編小説です。

あらすじ
 家政婦の私が新しく派遣されたのは数学博士の家だった。「ぼくの記憶は80分しかもたない」。そう書かれた紙が背広に貼られていた。事故で遥か昔に時計が止まり、そこから80分しか進まないのだ。戸惑いながらも私は次第に彼に愛着を覚えてくる。彼は私が10歳の子供がいることを話すと、家に連れてくるよう言ってくれ、かわいがってくれたが……。




 結構前に話題となった作品ですよね。今更といった感じはしますが、やっぱり名作です。まず、よくこのような発想をしたものだと思いますし、とっつきにくい数学というテーマを自然ととりこめたな、と思いました。これで数学が好きになる!ということは残念ながらありませんでしたが……。ただ、嫌いだという思いは薄らいだと思います。
 愛情ではないけれど、博士、ルート、私のお互いへの(解説の言葉を借りますと)慕情は、見ていて心温まり、しかし同時に博士のそれが僅かな時間で終わってしまうという淋しさがなんともいえません。
 全然違う立場の人が数学で結びつく。学問は、ただ学ぶというだけでなく人を結びつける力も持っているのだと思うと感慨深いです。もちろん、それを互いに伝達する国語もですが。読んでいる間は数学を本気で考え、嫌悪感など全くいだきませんでした。ルートと「私」だけではなく、僕たち読者すらも繋いでくれたのです。
 この本は一読の価値があると思います。ぜひ、読んでみて下さい。

評価:A
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2014年03月15日

同期

 今野敏さんの長編警察小説です。

あらすじ
 捜査一課の宇田川は、暴力団事務所のガサ入れの最中、逃走した団員に銃撃される。間一髪のところで公安にいる同僚の蘇我に助けられる。公安の蘇我はどうしてここにいたのか。疑問に思って間もなく、蘇我が懲戒免職されたことを聞いた。不審に思った宇田川は調査を始めるが、警察組織の妨害に逢う。一体どういうことなのか……。




 ミステリはよく読みますが、このような、警察の組織を描いたような作品は初めて読みました。これ一冊読むだけで、警視庁や警察庁などの仕組みがよく分かる気がします。
 残念なのは、物語の良さが専門用語の多様で潰されていること。警察の使う略称で、「ガイシャ」とか「ウチコミ」とかくらいなら分かるけど、「マルB」とか「マル対」とか何のことかさっぱり。説明のある用語もありますが、そうでないのも結構あります。 
 前半は魅力的な謎で魅き込まれましたが、後半何となく事件の流れが見えてきた後はいまいち退屈だったかな、という気がします。よくない意味で二時間ドラマ的だと思いました。
 やっぱり私はミステリの方が肌に合う、と思いました。

評価:C
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2013年11月12日

虫とりのうた

 赤星香一郎さんの長編ホラー小説です。

あらすじ
 作家を志して会社をやめ、妻に疎んぜられている赤井は、ある日河川敷で知らない男に追いかけられている、と少女に助けを求められる。しかし男は彼女の父親だと主張する。
 助けようと思ったが、妻や通りかかった老人・青年の言動により、何もせず少女を男に返してしまう。
 後に赤井は少女が殺されたことを知り、責任を感じた私は少女の葬式に参列する。そこで、「虫とりのうた」の呪いの噂を聞くが……。




 久々に読書感想です。嫌いじゃない設定の物語ですが……ゾクッとするのを狙っているような感じもしますが、どちらかというと気分が悪くなる様なタイプのホラー。主人公の人間性がすきになれなかったり、ありがちな設定でだれてきて、中々読み進まない。中盤から結末が見え見えで、ミステリ要素も強くない。虫取りのうたの、つじつまの合う解釈が多すぎて不自然というのも気になりました。
 自分の好みとしては、いまいちでした。上に挙げた「気持ち悪くなる」とか「主人公のうざい人間性」とかは、そういう演出でしょうから、そういうのが好きな人はこの本も好きになれるのでしょう。
 私としては、短編でテンポよく読めるなら、結構高評価だったかもしれません。

評価:C
posted by みさと at 23:15| 奈良 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書(その他の著者) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする