2016年03月05日

蜘蛛の糸/杜子春

 芥川龍之介さんの短編集です。収録作品は『蜘蛛の糸』『犬と笛』『蜜柑』『魔術』『杜子春』『アグニの神』『トロッコ』『仙人』『猿蟹合戦』『白』です。

あらすじ
 財産を使い果たした杜子春は宿もなく、洛陽の西の門にもたれかかって空を眺めていた。すると、どこからか片目すがめの老人がやってきた。老人の指示に従い、杜子春は再び金持ちになるが…。




 童話を中心に芥川さんの名作を収録した短編集です。そろそろ芥川さんのカテゴリ独立させようかな…。
 『蜘蛛の糸』『杜子春』は言わずとしれた寓話的な超有名作品です。『羅生門』のイメージが強すぎてか、個人的に芥川さんは暗くて重厚なイメージがあるのですが、この二作品は強烈な印象を残しながらも心をえぐってしまわない程度で歯止めが聞いています。絵本を読んでいるような少し懐かしい感じもしました。将来子供に読み聞かせてやりたい。そう思わせる作品です。
 『犬と笛』『魔術』『アグニの神』『仙人』『白』も童話の類ですね。子供向けの作品、というとまるで侮っているように聞こえますが、子供向けに書くって、大人向けに書くよりも遥かに難しいと思います。簡潔で、示唆に富んで、読む人を心躍らせ、感動させる。いずれも佳作で楽しめました。『犬と笛』『白』みたいな話を一回自分でも書いてみたいな、なんて思ったり。
 『猿蟹合戦』。解説で「所詮は気軽な戯作』とさらっと書いていて、「解説で作品批判してええん?」ってものすごく思いました。皮肉が効いていて面白いです。ただ、これは子供には読み聞かせたくないですね笑。
 『トロッコ』。実は読むのは初めて。子供の心理の描写が素晴らしいですね。先が分からず、次第に心細くなっていくあの気持ち。ものすごくよく分かります。山登りしてる最中によく獣道や踏み分け道に突っ込んでちょこっと冒険するのが趣味なので、今でもよく感じます笑 帰った後、アレが少し心地よいものに感じるから少し不思議。そもそも人生自体先の見えない不安なもの。そうですよね。。。
 『蜜柑』。どんよりと曇った暗澹たる気持ちが、色鮮やかな蜜柑が乱落する様子を通じて、見事に朗らかな気持ちに転換する描写がこの上なく秀逸だと思います。暖な日の色の蜜柑が汽車からバラバラと落ちていく様子。映画を見ているようにありありと目の前に浮かびます。読んでいる自分の気持ちまで作品の語り手に一致して変化しているみたいな感じがします。最終シーンの感情は、ほんとうになんとも言えないですね。明るくなれるとか勇気をもらえるとか心よいとか書くと、ものすごく陳腐で筆足らずになってしまいます。とにかく、読んでみてください! この短編集の中でも一二を争う名作だと思います。

評価:A
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2015年09月13日

地獄変

 芥川龍之介さんの短編集です。収録作品は『地獄変』『藪の中』『六の宮の姫君』『舞踏会』です。

あらすじ
 良秀は非凡な才能を持つ絵師だが、見た目にも醜く、絵のためであれば人の命をも危険にさらす非情の持ち主であった。そんな彼だが、唯一娘には煩悩で溺愛していた。あるとき堀川の大殿様に地獄変の屏風を描くよう命じられたが……。
 表題作『地獄変』ほか、藪の中で殺された男を巡る様々な食い違った証言を描いた『藪の中』、喜びも悲しみも少ない毎日を好んで送る姫君の物語『六の宮の姫君』、美しい菊と管弦楽の彩る艶やかな舞踏会の中人生の儚さが垣間見える『舞踏会』収録。




 受験生だというのにまたしても一気に読んでしまいました…苦笑。まあこうしてあらすじを書いたり感想を書くっていうのも現代文の勉強の一環ということで。記述力育成に…なるかなぁ笑。
 芥川さんといえば、中学二年のときに『藪の中』の短編集を読んで、『羅生門』に甚く感動を受けたのですが、それ以来。この人の作風、自分に合うな、などと思いつつも中々手を出せませんでしたが、ようやく。

 『地獄変』は、『羅生門』再びと言った体の感動。だんだんと狂っていくかのような不思議な迫力。良秀の奇行に得体の知れぬ恐怖感を抱きながら、同時に大殿にも薄気味悪さを覚えました。不安に近いような興奮が募ってゆくクライマックスシーンの、良秀の姿。やっぱり良秀も人の感情を持っていて、どうしようもなく可哀想だと思いきや…。ここまで芸術にこだわる良秀に、畏怖に近い尊敬と、微かな羨望、そしてやっぱりこういう人間とは付き合いたくないな、という思いも抱きました。芥川さんの芸術至上主義の表れなのでしょうか。
 良秀の描いた「地獄変」…。芥川さんのこの小説が、100年間の読者一人一人の心の中に投影してきたのですね。存在しない絵を、ここまで畏怖と感動を持ってみられるなんて、芥川さんの表現力ってほんまに凄いと思います。

 『藪の中』は、以前読んだときと比べものにならないくらいの衝撃を受けました。確か東野圭吾さんが『新参者』でこんな感じの構成の話を書いていたのを思い出しました。初めて読んだ中学二年のときは、推理小説一辺倒だったもので、「これってミステリ?」って思いつつ少し釈然としない思いを抱いていましたが、今回読んで、想像がいくらでも膨らんでいく名作だと思いました。読む人の想像力を上手く引き出し、かつ答えを一つに収斂させない。ある意味理想的な小説かもしれません。

 『六の宮の姫君』。これって、現代人を象徴しているようなお話ですよね。100年近く前に出された小説とは思えません。極楽も地獄も知らぬ…。現代人ってそんな状態を「平凡だけど幸せな」などと良いように言い換えて理想的な人生としている気がします。自分自身、そう思ってしまう時もよくあります。でも、人生無為に過ごすよりは、何か生き甲斐を持って過ごす方が良いと思います。平穏主義って結局自分の身を中心に考えている面もありますから。このお話は、そのことを気づかせてくれる良い小説です。現代の若者だからこそ読むべき小説。教科書に載せてほしいなって思います。

 『舞踏会』。題材的にはレトロなのに、全然古さを感じず、現代の本を読んでいる気分になりました。鹿鳴館の幻想、明治のノスタルジックな優雅さを感じさせるのに、同時にどこか清新な若々しさを感じさせます。明子の回想シーンはもちろんなのですが、ラストに出てくる小説家の青年ーー芥川さん自身でしょうかーーのごく短い描写からもそれが感じられます。最後の場面、本当に好きです。青年も、老婦人・明子も、ほんとに若々しい。昔を懐かしむおじいさんおばあさんって不思議な若々しさを持っているものだと思いますが、それが感じられるというのは他の小説ではなかなかありません。むしろ、そういう描写をするとかえって老いが強調されるものが多いくらいです。やっぱり芥川さんってすごいです!
 回想シーンから、現在に戻って筆者と思われる人物との会話に至るという設定、現代作家もたまにやる書き方ですよね。そこに大正小説が平成小説に通じるのを感じて、清々しい今様さを感じるのかもしれません。そういう平成の若者だからこそ感じるという個人的な理由こそあれ、やっぱり芥川さんの筆の妙がこの若さを生み出しているのに間違いはありません。この構成だからこそ生まれる小説の魅力が、精一杯引き出されています。
 ぜひこの物語も同世代の人たちに読んでもらいたいです。

評価: AA
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2015年07月10日

明日の記憶

 荻原浩さんの長編小説です。

あらすじ
 広告代理店営業部長の私・佐伯は50歳にして若年性アルツハイマーだと診断された。仕事の遂行が困難になってゆき、記憶が覚束なくなってくるのが恐ろしく感じた。娘の結婚・出産を控え、私の不安・恐怖はますます募る……。




 妹に勧められて読み始めた一冊です。私は最近社会福祉に興味があって、「こんな本があるのやけれど」と勧められたとき、迷わず読もうと決めました。
 あるはずの将来を奪い、日常を崩し、過去までも蝕ばんでゆく恐ろしい病気。こういう病気こそ周囲の理解が必要ですよね…。
 ともあれば夢の中に入ってしまいそうな不安定さが次第にページを繰っていくごとに増してくる感じがして、読んでいて自分まで不安になってきます。もし自分の身にこんなことが起これば…などと想像すると、本当に怖いです。恐怖と悲しみ、不安。それらすべてが身体にじわじわ染みこんでくるような感じがしました。
 ラストシーンは涙なくしては読めません。感動。電車の中で泣いてしまいそうになりました。社会福祉に興味ある人はもちろん、そうでない人にも是非読んでいただきたい一冊です。

評価:A
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2015年07月01日

春琴抄

 谷崎潤一郎さんの中編小説です。

あらすじ
 盲目の美女・春琴は三味線の達人であったが、吝嗇や嗜虐の気があるわがままな女性であった。少年・佐助は春琴の身の回りの世話をしていたのだが、ふとしたきっかけに年下の彼女を三味線の師匠として仕えるようになる。男女の関係を持つようになっても、春琴は佐助を旦那と認めず、佐助は弟子兼世話役としての生活を長らく続けた。
 あるとき、春琴は誰かに大火傷を負わされるが…。




 谷崎潤一郎さんは、学校の授業で読んだ『陰翳礼讃』に甚く感銘を受けて、興味を持ちました谷崎さんの本を何か読みたい、と思って家の書庫を探していて見つけたのがこの小説であります。あらすじを見てみると「被虐」とか「官能」とか書いていて「これって高校生が読んでもええんやろか…」と思いましたが、まあ江戸川乱歩さんの「芋虫」とか「人間椅子」とか読んでるし今更やなどと思いまして読み始めた次第でございます。
 先に挙げた二作品ほどエグみは少なく予想以上に読みやすかったです江戸川さんの持つ怪奇色は薄くやはり耽美派というだけあって官能的という言葉がよく合っています佐助が己の目を潰す場面には思わず自分まで目を覆いたくなりますが憐憫は殆ど感じず驚きと感嘆と少しの恐ろしさを感じました。盲目になったからこそ敬愛する春琴の永遠の美が保たれるようになったのです同時に複雑な恋愛関係もある意味でさらなる境地へ移行したように思えます中々常人では共感しがたい世界ではありますが読んでいて本当に圧巻されます。
 耽美派…。意外と好きなジャンルかもしれないです。もっと谷崎さんの本を読んでみたいな、と思いました。今年は受験勉強で中々読めないのが残念です…。

 気まぐれで句読点の使い方を真似てみましたが、素人がやったら読みにくいだけでしたね(苦笑

評価:A
 
posted by みさと at 22:56| 奈良 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書(その他の著者) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年04月05日

日本殺人事件

 山口雅也さんの中編集です。収録作品は『微笑みと死と』『侘びの密室』『不思議の国のアリンス』『南無観世音菩薩』

あらすじ
 義母のふるさと・憧れの国である日本へ移り住んだトウキョー・サム。日本は、神仏や侍の精神を色濃く残しながら西洋的文明を取り込んだ奇妙な異国であった。彼は日本で私立探偵事務所を開こうとしていたが、そうするまでもなく三つの事件に巻き込まれる。奇妙な切腹、茶室の密室、花魁の見立て殺人、彼の常識を逸脱する日本人の思考に彼は戸惑うが…。




 山口雅也さんが、沖縄の古本屋で見つけた外国人作家の推理小説を翻訳したという設定の物語です。勘違い外国人が想像したようなちょっぴり奇妙な、デフォルメした日本。大変面白い趣向でした。
 奇天烈な感じは受けるものの、案外日本の特徴を抽出・誇張したものとしては的を射てるのではないかなと思います。少し、デジャブを感じますね。
 同時に、不思議の国を冒険しているような感じもして楽しいです。幼い頃に読んだ不思議島の物語とか、小学校の頃に見ていたファンタジーアニメとかのような、懐かしいドキドキ感も感じられました。
 またミステリにこの舞台設定が上手く活かされていて、本当におもしろかったです。

評価:B
posted by みさと at 16:01| 奈良 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書(その他の著者) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年02月27日

押入れのちよ

 荻原浩さんのホラー中心の短編集です。収録作品は『お母さまのロシアスープ』『コール』『押入れのちよ』『老猫』『殺意のレシピ』『介護の鬼』『予期せぬ訪問者』『木下の闇』『しんちゃんの自転車』です。

あらすじ
 恵太は現在失業中だが、格安で条件のいいアパートを求めることができた。しかし、そこは奇妙な隣人たちに加え、押入れから明治30年生まれの14歳の女の子の幽霊が出る物件であった。恵太は初め、戸惑っていたが、次第に幽霊に情を覚えるようになり始めた…(表題作)。



今回紹介するのは妹に紹介してもらった一冊です。だいぶ熱心に勧めてくれただけあって、良い作品ばかりでした。軽い文体でさくっと読めるのも魅力です。
『お母さまのロシアスープ』は、ミステリ好きな人なら途中くらいから仕掛けがわかると思います。自分は読み始めた当初、人間じゃなくて動物か何かかな、と思っており、途中で異形の何かなんやろな、と気付きました。枯葉剤とシャム双生児に結びついたときは、ああ成る程と手を打ちました。(←ネタバレ・反転)それにしても、こういうのって結構後味重たいですね……。それも含めて、こういう話の魅力です。
『老猫』は、ちょっとポーの『黒猫』を意識してるのかな、と思いました。どこかグロテスクさや官能性を感じさせるところとか、特にそうですね……。じわじわと汚染するように染み込んでくる恐怖がなんとも言えません。
『殺意のレシピ』『予期せぬ訪問者』の狂い具合も秀逸です。
『介護の鬼』、初めに視点となる女を胸糞悪いな、と思いながら読み始めたら…意外な展開で、かなりゾッとしました。かなり恐ろしいと同時にどこか懲悪めいていてスッキリする面もあります。
『木下闇』はホラーミステリの優等生的作品。こういう雰囲気の推理小説大好きです。
『コール』『押入れのちよ』『しんちゃんの自転車』の三つは、所謂ジェントルゴーストストーリー。有栖川有栖さんの『赤い月、廃駅の上に』を読んで以来、こういう物語が大好きです。心温まり、ちょっと切なくなる。そんな感じが大好きです。いずれもミステリの要素が含まれているのもポイントですね。有栖川さんもそうですが、ミステリ作家とジェントルゴーストストーリーって凄くマッチしますよね。

評価: A
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2014年11月02日

エンドロール

 鏑木蓮さんの長編小説です。

あらすじ
 僕は映画監督への道を目指しながら、アパートの管理人のバイトをしていた。ある日住人の通報を受け、新聞が何日も貯まっている一室の扉を開けた。部屋の主である帯屋老人はラジオを聞いたまま永遠の眠りについていた。その後遺品整理をしていると遺品の中から8ミリフィルムを見つけ、ふと興味を持ってそれを見た。内容に心うたれた帯屋老人の人生に魅かれ、ドキュメンタリー映画を作ろうと思ったが……。




 孤独死というのが一つの大きなテーマの小説です。高齢化が進む無縁社会がどんどん進んでいると言われる現代、孤独死というものは結構すぐ近くに見えるようになってきました。ただそのことを憂うだけで終わるのではないのがこの小説の魅力。死んだ瞬間孤独であったとしても、その人生は決して孤独とは限りません。死に様より生き様。そのことをこの小説は教えてくれました。

評価:B
posted by みさと at 22:54| 奈良 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書(その他の著者) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年10月12日

白ゆき姫殺人事件

 湊かなえさんの長編小説です。

あらすじ
 しぐれ谷で美人OLが黒こげ死体となって発見された。鹿尾は勤める化粧会社の商品「白ゆき」に因んで「白ゆき姫」と呼ばれ、世間で話題となった。フリージャーナリストの赤星はネットや人脈を使って情報を集めはじめるが……。




 主人公が探偵役かと思いきや……。ネットやら週刊誌やら噂やらの嫌らしさを思い知らされた作品でした。
 たくさんの人の憶測を含んだ証言が合わさり、次第に現実と乖離した事件像が現れてくるのが本当に恐ろしいと思いました。
 Twitterみたいな「マンマロー」や週刊誌の記事が資料編として載せられていました。斬新な試みですが、それがリアリティーを与えていて良いなと思いました。自分もTwitterやらブログやらの発言は注意しないといけないな、と考えさせられたりします……。

評価:A
posted by みさと at 21:18| 奈良 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書(その他の著者) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年09月28日

こころ

 夏目漱石さんの長編小説です。

あらすじ
 私は海水浴で「先生」と出逢い交流を始めた。先生は奥さんと二人で隠棲のような生活を送っていた。私は毎月雑司ヶ谷の友人の墓にお参りする先生の過去に興味を持ち、聞き出そうとするが、いつか話す約束をして断られる。
 あるとき、前から腎臓の病を煩っていた父の容態が悪しいと連絡を受け、実家に帰るが……。




 学校の課題で読めと言われたのですが、思いのほか面白くて二、三日で読み切ってしまいました。さすが名作と言われるだけあって、確かに古さは感じるのですが読みにくい古さは全く感じません。

 エゴイズムが主題。明治から今と同じようなことが言われていたことに驚きです。平凡な小説は教訓が押し付けがましいことが大井ですが、この小説はそんなことはなく嫌味を感じません。これを読んで、自分の自分勝手さを見つめ直す良い機会となりました。
 危篤のお父さんを放って既に死んでいると思われる先生の元に向かう「私」もかなり自分勝手ですよね……。利己を戒めるはずの手紙が利己的行動のきっかけとなってしまうというのは皮肉に感じます。
 先生のKに対する気持ちが本当にリアルです。自分より優れた人間に嫉妬するというのはよくありますが、僕自身一歩間違えば先生のようになってしまいかねないなと思いました。少しの利己心で人の人生を奪い、自分の人生も無駄にしてしまうことがあると思うと恐ろしいです。

 漱石は以前読んだ「三四郎」があまり面白く感じられなかったので敬遠していたのですが、またたくさん読んでみたいと思いました。「夢十夜」辺り図書館で借りようかな。

評価:AA
posted by みさと at 18:27| 奈良 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書(その他の著者) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年08月28日

死神の精度

 伊坂幸太郎さんの短編集です。

あらすじ
 私は死神。自分の担当の相手の側につき、一週間の観察の後、可か見送りかを決めて上層部に報告する。可の場合、担当の相手は死ぬことになる。一人一人の人間とはたった七日間のつきあいしかないが、それぞれとの付き合いには、いろいろ心に残るものがある……。




 ファンタジーのような設定ですが、ちっともそういう小説にありがちな「馬鹿らしさ」がないというのが凄いと思います。もしこれが、B級のドラマやアニメ、ジュブナイルならば、見ていて嫌になるでしょうが、伊坂さんの文章では全くそんなことがありません。現実から浮いた存在である死神が、あっさりとそこに存在しています。
 この死神、人間離れしているようで、音楽が好きだったり、渋滞が嫌いだったり、人間の行動を見ておもしろがったりと、どこか人間臭くて可愛いさすら感じます。
 この中で面白かったのは、『吹雪に死神』です。ミステリの定番である「吹雪の山荘」が舞台。連続殺人でありますから、もちろん死神が何人もやってくる。全く別のジャンルの小説に推理小説の王道をぶっ込んだのですから、面白い。真相を知りたがって探偵役を買って出るところも人間臭くて良いです。
 最終話の『死神対老女』もおすすめです。死神だけでなく、人間たちの人間くささも感じられるのがこの短編集の魅力だと思いますが、中でも最終話がその魅力が一番発揮されていたと思います。

評価:A
posted by みさと at 18:50| 奈良 ☔| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書(その他の著者) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする