2014年11月02日

エンドロール

 鏑木蓮さんの長編小説です。

あらすじ
 僕は映画監督への道を目指しながら、アパートの管理人のバイトをしていた。ある日住人の通報を受け、新聞が何日も貯まっている一室の扉を開けた。部屋の主である帯屋老人はラジオを聞いたまま永遠の眠りについていた。その後遺品整理をしていると遺品の中から8ミリフィルムを見つけ、ふと興味を持ってそれを見た。内容に心うたれた帯屋老人の人生に魅かれ、ドキュメンタリー映画を作ろうと思ったが……。




 孤独死というのが一つの大きなテーマの小説です。高齢化が進む無縁社会がどんどん進んでいると言われる現代、孤独死というものは結構すぐ近くに見えるようになってきました。ただそのことを憂うだけで終わるのではないのがこの小説の魅力。死んだ瞬間孤独であったとしても、その人生は決して孤独とは限りません。死に様より生き様。そのことをこの小説は教えてくれました。

評価:B
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2014年10月12日

白ゆき姫殺人事件

 湊かなえさんの長編小説です。

あらすじ
 しぐれ谷で美人OLが黒こげ死体となって発見された。鹿尾は勤める化粧会社の商品「白ゆき」に因んで「白ゆき姫」と呼ばれ、世間で話題となった。フリージャーナリストの赤星はネットや人脈を使って情報を集めはじめるが……。




 主人公が探偵役かと思いきや……。ネットやら週刊誌やら噂やらの嫌らしさを思い知らされた作品でした。
 たくさんの人の憶測を含んだ証言が合わさり、次第に現実と乖離した事件像が現れてくるのが本当に恐ろしいと思いました。
 Twitterみたいな「マンマロー」や週刊誌の記事が資料編として載せられていました。斬新な試みですが、それがリアリティーを与えていて良いなと思いました。自分もTwitterやらブログやらの発言は注意しないといけないな、と考えさせられたりします……。

評価:A
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2014年09月28日

こころ

 夏目漱石さんの長編小説です。

あらすじ
 私は海水浴で「先生」と出逢い交流を始めた。先生は奥さんと二人で隠棲のような生活を送っていた。私は毎月雑司ヶ谷の友人の墓にお参りする先生の過去に興味を持ち、聞き出そうとするが、いつか話す約束をして断られる。
 あるとき、前から腎臓の病を煩っていた父の容態が悪しいと連絡を受け、実家に帰るが……。




 学校の課題で読めと言われたのですが、思いのほか面白くて二、三日で読み切ってしまいました。さすが名作と言われるだけあって、確かに古さは感じるのですが読みにくい古さは全く感じません。

 エゴイズムが主題。明治から今と同じようなことが言われていたことに驚きです。平凡な小説は教訓が押し付けがましいことが大井ですが、この小説はそんなことはなく嫌味を感じません。これを読んで、自分の自分勝手さを見つめ直す良い機会となりました。
 危篤のお父さんを放って既に死んでいると思われる先生の元に向かう「私」もかなり自分勝手ですよね……。利己を戒めるはずの手紙が利己的行動のきっかけとなってしまうというのは皮肉に感じます。
 先生のKに対する気持ちが本当にリアルです。自分より優れた人間に嫉妬するというのはよくありますが、僕自身一歩間違えば先生のようになってしまいかねないなと思いました。少しの利己心で人の人生を奪い、自分の人生も無駄にしてしまうことがあると思うと恐ろしいです。

 漱石は以前読んだ「三四郎」があまり面白く感じられなかったので敬遠していたのですが、またたくさん読んでみたいと思いました。「夢十夜」辺り図書館で借りようかな。

評価:AA
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2014年08月28日

死神の精度

 伊坂幸太郎さんの短編集です。

あらすじ
 私は死神。自分の担当の相手の側につき、一週間の観察の後、可か見送りかを決めて上層部に報告する。可の場合、担当の相手は死ぬことになる。一人一人の人間とはたった七日間のつきあいしかないが、それぞれとの付き合いには、いろいろ心に残るものがある……。




 ファンタジーのような設定ですが、ちっともそういう小説にありがちな「馬鹿らしさ」がないというのが凄いと思います。もしこれが、B級のドラマやアニメ、ジュブナイルならば、見ていて嫌になるでしょうが、伊坂さんの文章では全くそんなことがありません。現実から浮いた存在である死神が、あっさりとそこに存在しています。
 この死神、人間離れしているようで、音楽が好きだったり、渋滞が嫌いだったり、人間の行動を見ておもしろがったりと、どこか人間臭くて可愛いさすら感じます。
 この中で面白かったのは、『吹雪に死神』です。ミステリの定番である「吹雪の山荘」が舞台。連続殺人でありますから、もちろん死神が何人もやってくる。全く別のジャンルの小説に推理小説の王道をぶっ込んだのですから、面白い。真相を知りたがって探偵役を買って出るところも人間臭くて良いです。
 最終話の『死神対老女』もおすすめです。死神だけでなく、人間たちの人間くささも感じられるのがこの短編集の魅力だと思いますが、中でも最終話がその魅力が一番発揮されていたと思います。

評価:A
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2014年08月15日

笑う警官

 佐々木譲さんの警察小説です。

あらすじ
 あるアパートで女性の変死体が発見された。所轄の刑事たちは、すぐにその部屋の奇妙な点に気がつくが、詳しい調査もしないまま本庁に捜査の委譲を迫られた。間もなく女性は警察官だと分かり、彼女の元カレが重要参考人とされ、銃殺許可まで降りるが……。




 随分前にレビューした「制服捜査」と同じ世界感の小説です。道警シリーズとでも言うのでしょうか。こちらも映画化されていたそうですが、知りませんでした。確かに、ドラマ向けの盛り上がる作品です。
 これも、小説の中だと、ドキドキしながら読むことができますが、本当にこんなことがあったら怖いでしょうね。世間を取り締まる立場の警察が隠蔽体質で、邪魔者を抹殺する……って、世界のどこにもあってほしくないですね。
 「制服捜査」とどちらが面白いかと言ったら、あちらに軍配が上がりますが、こちらも本当に面白かったです。

評価:B
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2014年07月20日

公開処刑人 森のくまさん

 堀内公太郎さんの長編推理小説です。

あらすじ
 悪人を殺し、ネットの掲示板に犯行声明を公表するという公開処刑人「森のくまさん」の話題で東京は満たされている。人々の畏怖の中で、次第「森のくまさん」をヒーロー視する人々が現れ始める……。




 これもかなり軽いミステリです。なんと二日足らずで読了です。単純なストーリーですが、かなりはまりますね。こういうブラックな小説は結構久しぶりで、一気に読んでしまいました。
 ミステリ的には、途中で「ああ、こうやろうな」と大体予測が立つので割と簡単。ネーミングを考えたらすぐにわかってしまいます。
 実際、正義だって行使の仕方を間違えれば立派な暴力ですよね。この小説ほどではないにしろ、世の中には誤った正義が満ちている気がします。近頃集団的自衛権やら原発問題やらで、右派も左派も極端なことを言っていますが、どちらもある面では良い処方箋となるでしょうし、ある面では暴力的なものになりうると思います。どこで縛るかが大切ですよね。

評価:B
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2014年07月17日

祈祷師の娘

 中脇初枝さんの長編小説です。

あらすじ
 わたし・春永は祈祷師の家で育ったが、母の連れ子で、母が離婚して家を出たため家族と血がつながっていない。一人だけ姉たちが持つような力を持っていないことに私は所在なさを感じていた。
 学校で祈祷師というものの存在を否定する男子や、激しい霊障に襲われる女の子、そして祈祷師の後継者としての路を確実に進む姉の姿を見て、春永は次第にある思いが強くなる……。




 あっさり読めますが、心にしみる作品でした。これも学級文庫にあったものを何気なく読んだのですが、割と当たりの作品でした。ファンタジーに近い、超自然的な現象が出てくるにもかかわらず、ファンタジー特有の臭みがなく、また思春期特有の、自分のアイデンティティーを問う主人公を描いているのもよかったと思います。
 ちょっとヴォリューム的に物足りないような気もしますが、試験中にはこれくらいが丁度良いです。

評価:B
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2014年07月07日

制服捜査

 佐々木譲さんの警察小説です。

あらすじ
 道警の人事大異動により、刑事だった川久保篤は志茂別駐在所に単身赴任することとなった。小さなこの農村では事件が少ないと思っていたが、個々の小さな事件の奥に、この町の腐敗が潜んでいることに気づく……。




 これまでに読んだことのある警察小説は全て刑事ものでしたので、駐在さんに目をつけたのは斬新に思えました。やっぱり一番身近な警察と言えば駐在所や交番です。地味なので退屈するかと思いきや、この小説の駐在さんは刑事顔負けの行動力で、全然そんなことはありません。一度本にのめりこむと中々手を離すことができません。
 個人的に、このような田舎町を舞台とした小説は好きです。無機質な都会が舞台より、遥かに興奮します。これはど田舎ってほどでもないけど、割とどこにでもある田舎町な分、よりリアルな感じがします。

評価:A
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2014年07月06日

三四郎

 夏目漱石さんの恋愛小説です。

あらすじ
 熊本から上京してきた三四郎は、都会の街・学問・女性に驚かされ続ける。未知の匂いを放つ東京で出逢った友人たちの中に、ひときわ輝く女がいた……。




 久々に明治文学を読みました。古い小説の割には、割と読みやすい類に入ると思います。ほろ苦い青春悲恋の話ですが、この小説みたいに比喩とか使った恋愛表現なんてとてもできません。その点、ちょっと感情移入しにくかったのですが、恋愛でかっこいい比喩を使えたら気障やけどかっこいいな、と思います。まあ、現実の恋愛なんてそんなこと考える余裕もないかもしれないですが……。
 三四郎からにじみ出る青さが自分や友人に重ね合わされました。三四郎という若者像は、かなり普遍的なものだと思います。

評価:B
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2014年06月05日

ふしぎの国のアリス

 ルイス・キャロルさんのファンタジー小説です。北村太郎さん訳のものを読みました。

あらすじ
 少女アリスは、面白そうな喋るウサギを追いかけて穴に飛び込んでしまった。穴の中では、奇妙なことがたくさん起こる不思議な世界だった。体の大きさが変わったり、動物や植物、無機物がしゃべったり……。




 ドラマ「アリスの棘」に触発されて、読みました。絵本やアニメで読んだり聞いたりしたことはありますが、実は小説を読むのが初めて。翻訳小説というのはどうも苦手で、読むのに大分時間がかかってしまいました。
 アニメなど絵がついていれば、まだ可笑しく読むことができるでしょうが、時折挟まる挿絵だけでこの小説を読むのは中々に苦痛です。破綻した世界を楽しむのがこの小説なのでしょうが、むしろ読んでいて頭がおかしくなってきそう。翻訳で良くあることですが、註釈を見ながら読むのもじれったいです。
 もっと英語力があれば、原文で読みたいなとも思うのですが、今はまだ辛そうです。
 尤も、長年に渡って読み続けられている世界の名作を読み逃すのも勿体ない話です。一度読んでおいて損はないと思います。
 「鏡の国のアリス」も一度挑戦してみたいですが、またしばらくしてからかな……。

評価:C
posted by みさと at 21:33| 奈良 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書(その他の著者) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする