2018年01月03日

20歳の原点

 今月7日、私は20歳になります。そんな私に後輩が貸してくれた一冊がこの本。立命館大学の学生であり、学生運動の渦中の中自ら命を絶った高野悦子さんが、亡くなった歳、すなわち20歳の間に書いた日記です。
 高野悦子さん。旧地主の家に生まれ、京都の大学に通っている学生というのは私と同じ。しかし、時代も、さらにそれに規定される性格の表れも私とは全然違っています。

 彼女が学生時代を過ごしたのは学生運動の時代(1967−1969)です。近代資本主義への埋め込みから脱そうと試み、「個」というものを意識した時代。場所や歴史のしがらみから抜け出し、平等な条件のもと自由な個人を求めた時代とも言えます。この本を読んで、衝撃を受けたのは、高野さんのそうした思考のあり方です。自己に、他人にこうまで強い興味を持ち、内省的に思考しているのだ、ということに強く驚かされました。

 私自身はというと、生まれた時から、ある程度自由主義に解放された身であり、むしろ何らかの文脈の中に自己(同一性)を見出すようなーーひょっとすれば、文脈に自己を埋め込みたがるようなーー思考をしているような気がします。その文脈というのは、実家の持つ歴史(性)・文化(曽祖母の早逝で50年前と比べかなり平準化・変容したものでありますが)であったり、カッコ付きの「郷土」「ふるさと」ーーすなわち、柏原と周辺の王寺、三郷、河内長野など)ーーであったり、大学やサークルで通う一乗寺、吉田、雲ケ畑の学校/地域社会であったり。
 大学で地理学や都市論を学び、最近では社会学に興味を持っているように、人間を取り巻く社会の文脈について、私は強く興味を抱いています。しかし、それらを構成しているーー同時にそれらに構成されているーー「個」としての人間それ自体については、これまで興味があるように思い込んでいましたが、実はあまり興味がないのかもしれない、と思いました。
 私自身の行動ーー利己行動・利他行動も、「誰か」特定の人のためと思ってしていることのように思い込んでいましたが、よくよく考えてみれば、イエ、地域社会、クラブ、学問と言ったように、社会文脈の枠組みがいつも念頭にあるように思えてきます。

 高野さんと私の思考の違いは、モダニズムーーポストモダニズムのような「時代」に規定されたものであるのかもしれませんが、そう納得しつつも、高野さんが個人としての自己を、他人を、あのようにまで思惟しているのだということはかなりの衝撃でした。自己内省もそうですし、恋愛意識の記述もそうですし、文のあらゆるところにそれがみなぎっている気がします。
 現代に生きる自分の周りの人は、どこまで自己/他人のことを考えているのでしょうか。周囲の人たちーー個人!ーーがもし高野さんほど自己や他者のことを考えていたら、と思うと、怖くて仕方ありません。私自身がわかるのは私自身の思考だけ(果たして、それもわかっていると言えるのかどうかは怪しいのですが…)。このようなことを考えていると、これまで思惟の対象としてきた、個人の集合たる社会が、寸分も理解していないのに、一部を解き明かしたかのように思い込んで陶酔に浸っている私をあざ笑う、得体の知れない怪物のように思えてきます。



 
 この一冊の本を読んで、このような思いを抱くのは、私が私なりの背景ーー文脈ーーを持っているからかと思います(またこんな考え方をしている…)。高野さんも、日記を読んだ人がこのような感想を持つとは思わないでしょう。
 この文学作品は、日記という性質上読みやすいわけでもなく、物語としては面白いと言うわけではありません。しかし、読む人の心に何か及ぼすものがあるのは確かだと思います。読む人読む人の文脈に応じて、それぞれ違う感情を与えるのだと思います。



ーー独りであること、未熟であること、これが私の二十歳の原点である。



 50年前、同じ京都という場に、同じ大学生・ワンゲル部員という立場で、しかし、全然違うように考え、行動し、生きていった女性の胸の内に触れたこと。私自身の考え方、生き方というものを相対化できた気がします。
 ひょっとしたら、この日記は、私にとっても「20歳の原点」になるような気もします。独りであること、未熟であること。私は孤独を感じるがゆえ、社会の文脈に埋め込まれようとしているのであり、そのように向かっていく性格・思考・行動はやはり無骨で粗だらけ。ーー独りであること、未熟であること。私にとって、この言葉から引き出される意味は、彼女とは全くちがうものであります。ーーだけど、それでもやっぱり、どこか通じるところがある気がするのが不思議です。
 20歳になる記念に読んだ本に、とてもふさわしい一冊でした。


 最期の詩が、心に残りました。はじめの部分だけですが、引用しておきます。
ーーーーーーーーーーー
旅に出よう
テントとシュラフの入った
ザックをしょい
ポケットには
一箱の煙草と笛をもち
旅に出よう

出発の日は雨がよい
霧のようにやわらかい
春の雨がよい
萌え出でた若芽が
しっとりとぬれながら

そして富士の山にあるという
原始林の中にゆこう
ゆっくりとあせることなく……
posted by みさと at 22:55| 奈良 ☁| Comment(0) | 読書(その他) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年08月23日

外道クライマー

 宮城公博さんの本です。私がワンダーフォーゲル部で行っている「沢登り」という行為。それを極限まで追求している宮城さんの体験談が書かれています。那智の滝登攀(失敗)、タイでの50日近いジャングル探検(連続遡下行)、台湾・チャーカンシー初遡行、称名滝冬季初登攀……。軽妙な文体で色々な意味ですごい記録が盛りだくさんです。
 宮城さんはワンゲルの先輩たちと考え方がどこか似ているなー、と思いましたが、ワンゲルの先輩たちがこれを読んで大いに影響をうけているのかもしれません。私自身は、宮城さんをすごいな、とは思いますが到底こうした思考になることはできないな、と感じました。

 解説で「山登りは反社会的な行為」だということが書かれているのですが、それを読んで色々と考えさせられました。命を危険にさらして、藪を漕ぎ、岩や滝を上り、泥つきにしがみつく。そこにはほとんど生産性なんてない。大人には「なんでそんな危ないことを」と後ろ指を指される。多くの山ヤ、沢ヤはそれを気にしないのかもしれませんが、私は、そう言われると胸が苦しくなります。社会の矩に従うこと、社会のためになることを旨として(青臭い上に、そうできているかは甚だ怪しいことですが)生きてきた私には、そうした非難に抗弁する術を持ちません。そういわれるたびに、それどころか、下界で日常生活を送り、さまざまな人と触れ合っているだけで常に「沢をやめようか」という思いが心に芽生えてきます。
 一方で、社会的通念へ反発する人への憧れが心のどこかにあるのも確かで、沢登を純粋に楽しいと思ったり、そこでさまざまなこと(生の実感や新たな自然観など)を得たりしていることも事実。実際に沢に行くと、沢を続けたいという気になります。
 こうした葛藤は沢をやる限り永遠に続くのだろうな、と思います。冒険家への憧憬はありますが、自分は冒険家にはなれない。

評価:A
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2017年08月03日

街を変える小さな店

 恵文社一乗寺店店長・堀部篤史さんの本です。京都市左京区内にある様々な個人店を紹介しています。
 左京区は現在私が生活の拠点としているまちなのですが、紹介されているお店の中で行ったことがあるのは恵文社と出町ふたばだけ。(恵文社は下宿のすぐ近所ということで通っていたり、出町ふたばは友達がバイトをしていたりしますが…)
 ほとんど喫茶店で気分転換したり、飲みに行ったりすることもなく、学校と下宿、あと数少ないお店(ほとんど定食屋)のルーティンで生活しております。下宿を初めて一年弱が立ちますが、左京区という町にまだなじみ切っていないような気も。
 町と深く結びついた、紹介されているような店々を訪ねてみたいな、という気持ちになりました。(そこを目的地として消費しにくというのはこの本の趣旨からは外れているような気もしますが^^;)

評価:B
posted by みさと at 18:48| 奈良 ☀| Comment(0) | 読書(その他) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年08月14日

死者は還らず 山岳遭難の現実

 丸山直樹さんのルポルタージュです。山岳遭難の状況からさらに踏み込んでその背景となる心理状況にまで踏み込んで、事故の原因を考えています。私自身、大学のワンゲルで沢登りをしているため、かなり身につまされる内容でした。自分は死ぬほどの危機一髪、といった経験はまだありませんが、少し滑落しかけたことや一歩間違えば20メートル下へ真っ逆さまというところを木の根をつかんでトラバースしたことはあります。ああいう時、やけに冷静なんです。死ぬ時は「ああ、死ぬんやな」ってあっさりと死ぬんだろうな、と思いました。
 一番ゾッとしたのが、遺族の章。自分が死ぬことは諦められたとしても、自分が死んだ後家族・親族や友人に迷惑をかけると思うと絶対に死にたくないと思います。

 このルポを読んでいて、筆者が事故の死者や同行者を散々にこき下ろしているのがやけに目につきました。読んでいる最中筆者の文章にかなり苛立ちながら読んでいました。後書きによると、筆者はできるだけ真の原因を追求したいとしています。その上で、自分の意見を率直に、あるいは読者にインパクトを与えるため計算して強く書いたとしています。このような態度を通して、読者に遭難について真剣に考えてもらいたいというのが筆者の意図だそうです。私は腹が立ちながらも、それならばその作戦は私に関しては成功しているな、と思いました。
 作者の(文章から伝わってくる)人格は到底好きにはなれませんが、登山者や登山者の家族はぜひ読むべきルポだと思います。

 読了後一月近く経っての感想なので、ただでさえ下手な文章が一層ひどくなってしまった気がします。感想がうまく伝わっていないかもしれませんが、何卒ご勘弁を。

評価: A
posted by みさと at 09:28| 奈良 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書(その他) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年05月24日

プロ弁護士の思考術

 矢部正明さんの本です。弁護士の体験談を通して、人生における物事の見方を教えてくださっています。物事を広視野を以って見る。具体的に考える。思いつく限りのオプションを考える。偶然を必ず考慮に入れる。自体がどう進んでも対応できるように案を考えておく。主体性を持つ。肩書きなどにとらわれず直視する。言われてみれば中々当たり前のことばかりのような気がしますが、実際この手のことを確信をもって言うことができるのは中々できないことかもしれません。いろいろなことを再確認することができました。

 特に「具体的に考える」というのは本当に重要だと思います。何事につけても、一般化した思考結果を具体的事象に敷衍するには限界があります。ある程度一般化というものが必要なことは否定できませんが、一般化を過度に行うことで個々の出来事への対応が粗雑になってしまい、誰かが涙を流すことになるかもしれません。そのことを、昨年度末のハンセン病フィールドワークで気づかされ、この本を読んでその思いを強くしました。

評価:B
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2014年12月08日

文章の書き方

 辰野和夫さんの作品です。文章を書くことは、私たちの日常生活のかなり重要な位置を占めていると思います。しかし、案外うまく文章を書くことを考えることはありません。実際このブログも、思うまま適当に書いてるだけなので、駄文を垂れ流しているのですが、この作品を読んで、上手い文章を心がけてみた方が良いかな、と思いました。実際そうすると、ただでさえ低ペースなブログ更新がさらに遅くなりそうなので、実行できるかな(-。-;
 上手い文章というのは感性と経験だと思っていたので、このように体系づけられたものというのは中々衝撃的で、読んでいてかなり参考になりました。

評価:A
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2014年04月27日

わたしが正義について語るなら

 やなせたかしさんの「わたしが正義について語るなら」を読みました。

 「なんのために生まれてなにをして生きるのか。答えられないなんてそんなのは嫌だ」アンパンマンの歌って、考えてみれば本当に深い歌詞の歌ですよね。答えられるはどれくらいいるのでしょうか。
 自分の才能を過剰に自慢するのでもなく、過度に謙遜するのでもなく、素直に認めつつ書いていっているのが好感でした。本当に才能のある人なのだな、と思います。
 昔はアンパンマンを単なる勧善懲悪の物語としか捉えていませんでしたが、この歳で改めて見てみてもいいかもしれません。仮面ライダーとか鉄腕アトムとかもそうですね。案外子供向けと思われるものにこそ学びがあるのかもしれません。

評価:B
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2013年07月25日

社長を出せ! 実録クレームとの死闘

 川田茂雄さんの本です。クレーム処理について、カメラ会社でのご自身の経験を書かれています。

 会社での仕事を思い浮かべろと言われて、クレーム処理なんて中々思いつきません。そういえば、小泉孝太郎さん主演のクレーム処理ドラマがあったなぁ、と思い出しました。懐かしいです。
 実際、この仕事はどんなところに就職しても、自営業、農業などをやるにしてもつきまとってくるものだと思います。この本を読んで具体的にどういうものなのか、少し実感が湧いた気がします。
 あと、あまりにクレームしないのもいけないのだな、とよく考えたら当たり前のことに気づきました。

評価:B
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2013年04月27日

別冊宝島 気持ちいいクスリ

 石井慎二さん編集の本です。ビタミン剤から覚醒剤、LSDまで、様々な習慣性のあるクスリを体験談を中心に紹介しています。

 読んでいて、これってヤバいんじゃないのと思うことが多くありました。恐ろしさも描いていますが、記事によっては「クスリをしても別に問題ない」みたいなものもありました。特に大麻に関してです。薬物に溺れて何が問題ないのだか。
 いろんな問題は感じましたが、経験談が多く載せられてあったのはやはり興味深かったです。薬物をするとどうなるのか。それを考えたら、絶対にやっちゃいけないと思いました。いくらいっとき気持ち良くても、永遠の苦痛を同時に受け取りたくはありません。

評価:C
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2013年04月21日

日本の歴代総理大臣がわかる本

 岩見隆夫さんの、戦後首相のことをまとめた本です。

 父に借りて読みました。よく知っている首相から、全然聞いたことのないような人まで色々ありました。
 面白いのは、首相たちの人となりが分かることですね。読んでいて、どれだけ批判にさらされている首相でも、やっぱり非凡だったんだと思いました。良いことでも悪いことでも、ほんとに大物って感じがします。
 戦後の政治史なんて殆ど知らなかったので、本当に勉強になった一冊です。まだ一五歳の私が知っているのはせいぜい郵政改革以後。一通り戦後を知ることができて、驚いたこともたくさんありました。自民党と社会党が連立していたとか、社会党に右派左派があったとか、皇族宰相がいたとか……。

評価:B
posted by みさと at 17:24| 奈良 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書(その他) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする