2019年05月22日

古文書はじめの一歩(油井宏子)

 くずし字の入門書です。油井さんは歴史畑出身の方で、中学校教師をへて、NHK学園の古文書の講師をしている方。本書は山城国上狛村の「南組夜番帳」が題材で、漢字が中心となっております。
 上狛は祖母の実家があり、さらにいうならこの夜晩帳は祖母の実家の本家の文書であり、面識のある家の所蔵文書であるため、かなり親しみを持ってテキストに取り組むことができました。
 くずし字に触れたのはこの本が殆ど初めてでしたが、解説はかなり詳しく易しく、抵抗なく入ることができました。一つの史料を読むだけで、結構共通する文字が出てくることが驚きでした。分量的に少し物足りない感があるかもしれませんが、初学者には平易なのが嬉しい。
 今期は国文学系のくずし字の演習の授業を取り、本格的に勉強を始めました。こちらはひらがな中心ですが、仮名漢字を問わず読めるようになりたいものです。
 私は地理学や建築学の基礎を積んで、研究は近代造園史が対象のつもりですが、くずし字が読めれば、使える史料の幅も研究の射程も広がるだろうなぁと感じます(もちろん、今更国文学や史学の本職のようになれるとは思っておりませんが、、、)。
 実家にも古い文書があるのですが、これも読めるようになったら楽しそう。手法の勉強って、割と退屈なことが多いのですが、崩し字は色々と夢が広がって楽しいです。
posted by みさと at 20:14| 奈良 ☀| Comment(0) | 読書(他人文科学) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年04月26日

学術論文の技法【新訂版】(斉藤孝・西岡達裕)

 論文の書き方というものって、意外と大学で習わないものです。いざ卒論を始めるという段階になって、一応ちゃんと書き方を学んで置こうと思って手に取ったのがこの本です。1977年に初版が出版され、時代を重ねるごとに度々改訂、重版されているロングセラーで、私が読んだのは2005年に新訂されたもの。
 斉藤さんは東大の西洋史を出て国際政治史を専門にされた学習院大の名誉教授。西岡さんはパソコンに対応するため新訂版から著者に加わった政治学を先行とされる桜美林大の教授です。この本自体は、政治学などに偏らず、人文・社会科学に広く対応しています。
 内容としては、三年間の学部生活でレポートを書いたり、論文を読んだりしているうちに何となく身についている部分が多かったのですが、脚注や参考文献の書き方はこれまでのレポートで適当だったり、文献目録を作ったことがなかったり、結構学ぶべきところが多くありました。
 この本の一番の良いところは、最後に「文献を探すための文献一覧」「文献を探すためのオンライン情報」が掲載されているところ。ただし内容は2005年のもので、変化はしているだろうな、とは思いますが、卒論を書くのに役立ちそうです。
 大変読みやすいので、当然知っている内容も多いかもしれませんが、卒論を書かんとする四回生は隙間時間に読むのに良いと思います。
posted by みさと at 14:40| 奈良 ☀| Comment(0) | 読書(他人文科学) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年09月30日

歴史のなかの家族と結婚 ジェンダーの視点から(服藤早苗監修)

 服藤早苗監修、伊集院葉子/栗山圭子/長島敦子/石崎昇子/浅野富美枝執筆。女性研究者五人によって、家族・結婚・女性史をざっと概観しています。
 『家と村の社会学』を読んで以来、「家」や「家族」についての興味が強くなって来ました。結婚も遥か彼方ではなくなっているという年齢に加え、旧庄屋家で自営業という自らの出自も「家」について意識が高まることに資している気がします。
 平易で読みやすく、このジャンルの入門書にはぴったりでした。夫婦別姓論争を始め、「家」「家庭」やジェンダーの問題は、しばしば歴史的事実に反するかなり無責任な議論が繰り広げられています。私も断片的に知識があるため、そうした議論を聞くと首を傾げながらも、自分自身無責任な反論しかできないのをもどかしく思っていました。
 私たちは、普段「昔は〜」というとき、その「昔」の指すものは精々戦後や近代、どんなに戻っても近世にすぎません。「伝統」と呼ばれるものにも、明治維新やGHQの戦後体制で生まれたものも多く含まれます。いくつもパラダイムをまたいだものは、歴史的知識がないと見えないのです。
 肌感覚で「昔」や「伝統」、あるいはそれと比較した「今」「現代」を語るのは、軽率で誤りを招きます。過去対現代の二項対立で社会問題を考察しては、視野狭窄を免れ得ません。「昔」は歴史であり、単一のものとしてみることは誤りです。通史的な把握をしてこそ、社会問題の本質をつかめるのだと思います。

 とは言いながらも、私も「近代」「モダニズム」を考えるとき、前近代との比較で近視眼的に見がちであります。分析の内容によってはそれでも的を得ることもあると思いますが、歴史がグラヂュアルに変化するものであるということ、(さらには地理的な偏差もあること)を常に頭において思考していきたい、と自戒を込めて記しておきたいと思います。
posted by みさと at 23:58| 奈良 ☔| Comment(0) | 読書(他人文科学) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年09月11日

思考の整理学(外山滋比古)

 外山滋比古さんの一冊です。「東大生・京大生に一番読まれている本」と謳われており、周囲にも読んでいる人が多くて気になったので手に取りました。
 「ただ知識をつけるだけではなく、思考することが大切だ」「思考を熟成させるにはそれ自体から目を離し時間を置くことが大切だ」など、論じていることは多岐に渡ります。 現代では世間での通説となっているほど普遍的な真実と思えるようなことから、俄かには同意できないことまで色々ありました。表現も抽象論から、筆者の具体的な実践に至るまで様々です。
 知識を重視し、枠にはまった思考を助長するような教育は現代もいろいろな人によってしばしば批判されていますが、書かれたのが1983年ということを踏まえると、とても先進的であったのかもしれません。今尚残る問題ではありますが…。

 軽妙な文体で極めて読みやすく、議論も様々でありながらも整理されており、読み物としてとても秀逸だったと思います。

 もっとも印象に残ったのは「情報の”メタ”化」の項。情報には事件や事実をそのまま伝える第一次的情報と、それらを抽象・統合・整理した高次の情報があるというものです。前者にはニュース、後者には社説や評論などが当たります。前者を後者へと昇華させる方法論がこの本における大きなテーマであります。
 ふと、「今はネットがあるのだから、本などそんなに読まなくても良い」と中高時代の友人が言っていたことを思い出しました。先の二分では本もネットも高次の情報に入りますが、きちんとした本とネットの情報では大きな懸隔があると思います。ネットの情報は二次的と言っても、極めて質の悪い抽象のされ方をされたものも多く含まれておりますし、多くがその筆者の素性についても出典についても不明確であります。それに対し、本はそれらが明らかにされており、あまり質の悪いものは排除されております(胡散臭い本もありますが、、、)。名著と呼ばれるものは極めて質の高い抽象がされているのです。同じ高次の情報といっても、その質において、ネットと出版された本とでは違うのだと思います。
 高次の情報に触れるにしても、その質がよければ大いに学びになりますが、その質が悪く批判的思考が不十分であれば、ただバイアスを受けるというだけになってしまう気がします。本ーー特に、良い本を読むことは、とても重要だと思います。
 かなり脱線して個人的な意見を書いてしまいましたが、今日の読書録はこの辺りで。『思考の整理学』なのに、全然整理していない内容でごめんなさい、、、。
posted by みさと at 21:41| 奈良 ☁| Comment(0) | 読書(他人文科学) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年06月18日

愛するということ(エーリッヒ・フロム)

 エーリッヒ・フロムの本です。フロムは『自由からの逃走』で有名な精神分析の学者さんです。この本では、タイトル通り、「愛」について社会心理学・精神分析学の立場から考察しています。
 全く畑違いの専門書なのですが、ワンゲルの後輩に勧められて読み始めました。基盤となる知識がないため、浅い理解に止まっているのではないか、という気がしてもどかしい思いもありますが、それでもかなり深く考えさせられるところもたくさんありました。

 まず、「愛」を対象の問題ではなく、愛するということは行為であり、能力であるという主張に引き込まれました。私たちは日常の会話で愛について語るとき、「良い人おれへん?」みたいな風に、対象に重きをおき、「モテるためにはどうしたら良いか」という風に愛するのではなく愛されようとする努力をしています。
 人は孤立意識から生じる不安を解消するために他者と合一化しようとし、そこにはお祭りや集団同調など様々な手段を用いますが、その最適な手段として愛が存在すると述べています。
 成熟した愛とは、自らの全体性や個性を維持したまま、能動的に他者と中心同士でつながろうとするもの。誰かに庇護を求めるこころや、支配欲のようなものが全く自分にないとは言えません。実際に人に甘えたりすることは苦手ですが、前者が自分の心の奥に存在しているのは度々感じております。
 また、愛とは能動的に人に与えることであるということも述べています。与えるものとは、自らの生命、力、ぬくもりなどあらゆるものになります。教師と生徒の関係を考えれば、結果的に互いに与え合うということになりますが、見返りを求めるのではなく。これもかなり難しいことだと思います。わたしはどうも吝嗇な気があるのか、全くためらいもなく、もてるものを与えることができるかというと、全くできている気がしません。

 逆説論理学についても、あまり理解が及んでいない気はしますが、深く心に残りました。逆説論理学は矛盾しているように見える論理のことで、「無知の知」や「忠ならんと欲すれば孝ならず、孝ならんと欲すれば忠ならず」のような表現のことです。
 人の心は矛盾においてしか知覚できず、物事は思考ではなく行為あってこそ知ることができる。このことは私のいつも考えていることによく当て合致していて、ああ、と思いました。私は誰かについて「あなた(あいつ)はこういう人だ」ということができませんし、人がそう言っているのを聞くと違和感や苛立ちを覚えたりします。誰かの行為に対して評価をするーー例えば、人の行動を見て「優しいね」などということはできますが、その人自身について「優しいね」と評価をすることはできません。

 現代資本主義への痛烈な批判も読みどころの一つだと思います。市場経済の世の中では需要が全ての価値であり、愛に自らの交換価値を考えているというのは、鋭く心に刺さりました。集団同調で合一願望を満たしていたり、神への愛は都合の良い時だけ心に抱き、信仰を世俗的成功の手段にしている。心当たりがたくさんあり、自分の心の持ち方をかなり問い直させられます。

 終盤に愛の修練に瞑想や呼吸法のようなことが出てきて、禅っぽいな、と思っていると、フロムは鈴木大拙と交流があるそうで。なるほど、と思いました。

 しかし、この本を読んでいて、男性性(侵入)、女性性(受容)、父性(規範)、母性(無償の愛)など、ジェンダー的に今の感覚と合わないところも多いな、と思いました。この本が書かれたのは1956年ですから、現代的な感覚が普及し始めるちょうどその時代だったのが読んでいてよくわかりました。
 フロムの話は論理としてなるほど、となりましたが、ジェンダーのあり方が変わればどうなるのだろう(フロムの立場に立つなら精神症?)とか、文化の差異を見ず(進歩史観的)、全ての社会でこのようなことが成り立つのか、と思ったりしました。割とジェンダーに縛られない私の志向もあってか、自分の体感的にも、しっくりきませんでした。
 これを読んで、自分が本当に現代っ子なんだなー、と実感したり…。しかし、ジェンダー論に詳しいわけでもないので、また見識を深めたいと思います。

 異性への愛がなぜ生じるのか、ということもあまり触れられてなくて気になりました。両性の合一欲求ということは書かれていましたが、なぜそれが存在するのかが述べられていませんでした。

 西洋思想の名著を読むことは多分初めて?で、かなり考えさせられるところの多い一冊でした。昨日友人たちと読書会を開き、議論したりもしました。
 フロイトに始まる精神分析学は、精神症という医学的なものを対象にしていながら、理論先行にすぎて変な学問だな、と思う一方で、かなり魅力を感じます。もう少しこの辺の分野を色々勉強してみたいです。
posted by みさと at 14:56| 奈良 ☁| Comment(0) | 読書(他人文科学) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年03月02日

やさしい教育心理学(鎌原雅彦他)

 鎌原雅彦さん、竹綱誠一郎さんらによる教育心理学の教科書です。教職免許をとるわけではありませんが、子供相手のボランティアをしている中、興味がわいて読みました。入門書であり、かなり平易な内容。経験則的に知っていることも多くありましたが、自分や周囲の人の行動に照らし合わせながら読んでいると、なるほど、と思わされることが何度もありました。何かにすぐ応用できるというわけではありませんが、教育や心理について考えていくうえでの基礎となりそうです。

評価:B
posted by みさと at 15:32| 奈良 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書(他人文科学) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年04月21日

日本の歴代総理大臣がわかる本(岩見隆夫)

 岩見隆夫さんの、戦後首相のことをまとめた本です。

 父に借りて読みました。よく知っている首相から、全然聞いたことのないような人まで色々ありました。
 面白いのは、首相たちの人となりが分かることですね。読んでいて、どれだけ批判にさらされている首相でも、やっぱり非凡だったんだと思いました。良いことでも悪いことでも、ほんとに大物って感じがします。
 戦後の政治史なんて殆ど知らなかったので、本当に勉強になった一冊です。まだ一五歳の私が知っているのはせいぜい郵政改革以後。一通り戦後を知ることができて、驚いたこともたくさんありました。自民党と社会党が連立していたとか、社会党に右派左派があったとか、皇族宰相がいたとか……。

評価:B
posted by みさと at 17:24| 奈良 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書(他人文科学) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年07月15日

天皇家はなぜ続いたか(梅沢恵美子)

 梅沢恵美子さんの本です。天皇家の誕生について邪馬台国の関係を重視しながら書かれています。
 読むのに時間はかかりましたが、古代史に興味を持つ身としては実に興味深い一冊でした。ついつい見過ごしがちな「トヨ」の存在に注目するとこんな仮説が立つとは……。感嘆しましたね。突っ込みどころがない訳ではないのですが、理路整然とした文章でした。これからもっと多くのこういう文章を読んで、自分も古代について深く考えていきたいと思います。

評価:B
posted by みさと at 19:02| 大阪 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書(他人文科学) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする