2018年07月05日

日本の美術5 民家と町並み 近畿

 宮本長二郎さんによる本です。近畿地方の民家について、建築史の側面から詳述されています。これまでなんとなく畿内でもどこどこの地域で形が違うな、とか、大和棟の立派なお家があるな、とかを街や村を歩いていて感じることはありましたが、実際に地域差はどのようになっているのか、とか間取りや構造がどうなっているのかをこの本を通じて知ることができて面白かったです。
 特に、広間型や整形四間型、前座敷三間型といった農家住宅の間取りの類型やその変遷、分布を学ぶことができたのが勉強になりました。
 小屋組などの構造の話をはじめ、知らない専門用語がたくさん出てきて、難しかったところもありますが、ちょくちょく調べながら読んで行くうちに、その辺りのことも多少わかるようになってきた気がします。
posted by みさと at 17:54| 奈良 ☔| Comment(0) | 読書(建築学/都市論) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年08月18日

都市をたたむ

 饗庭伸さんの本です。人口が減少していくこれからの都市をどうデザインしていくかを考察しています。この本で根幹となる考え方は縮小都市の「スポンジ化」であります。都市が拡大する時、都市核から農地を虫食いにするように外へ拡大していくことが多く見られます(スプロールと言います)が、一方で都市が縮小する時。都市は外側から縮んでいくのではなく、中心部も縁辺部も含めて、モザイク状に空洞(空き地、空家)ができていくスポンジ化現象が見られます。ここに置いて、そうした空洞をイベントスペースや緑地など多様化するニーズに答える多様な使い方をすることが重要だというのが筆者の述べるところ。
 筆者は街を豊かな生活を送るための「道具」であることを徹底して考えているため、歴史・伝統や街の文化は軽く見る傾向があります。そういったところには同意しかねますが、スポンジ化する街をただ住宅で埋めるのではなく、多様に埋めていくべきという考えにはかなり共感を覚えます。(ニーズがどれくらいどのように多様化しているのかは議論する必要はありますが。)これの前に読んだ勝原文夫氏の『農の美学』において風景の観点から生産緑地の重要性が述べられていましたが、スポンジ化する街を再農地化していくことも一つの良い施策として考えられると思います。
 大都市郊外にある衛生都市の中心部では、商業施設が閉店したり町屋群を取り壊してできたスポンジの穴を分譲マンションで埋めることが見られますが、これは中心性喪失を助け、都市がただの住宅地になることを推し進めます。しばしばこういったところでは人口が減少しています。このような街での分譲マンションは将来のゴーストタウンの種を蒔くことにもなります。現時点でのニーズもそうですが、スポンジの穴を埋めるのに街の将来を考えて埋めることも必要だと思います。この辺りのことも暇があれば詳しく考察してみようかな(といいつついつも放置していますが(^_^;)。)
posted by みさと at 11:48| 奈良 ☁| Comment(0) | 読書(建築学/都市論) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年06月30日

風景学 風景と景観をめぐる歴史と現在

 中川理さんの本で、風景・景観についての認識・論考の歴史を概観した一冊であります。最近大学の授業で、風景や景観に関する話題がたくさん出るので、レポートを書くためというのもありますが、興味が出てきて風景についての本をよく読んでいます。これはその第一弾。
 風景という言葉自体なかなか定義しづらいものではありますが、人間によって何らかの共有されうる意味が見出される眺めといった風景に考えることができます。ここでの「意味」とは、嶮山に対する「ピクチュアレスク」のような純粋美観であったり、眺めに現れる人々の生活であったり、都市や集落の長く重なった歴史であったり…。(この例には中川さんの定義とは少し異なるものもありますが)。
 「風景」というものは地理学、建築学、造園学、美学、倫理学など、極めてさまざまな学問が絡んでいます。さまざまなアプローチからさまざまに考えられるものでありますが、同時にいずれの素養も得ておかないと深い理解につなげるのが難しいような気もします。そうした意味で、多様な学問の考えを取り入れながら概説したこの本は、「風景学」の入門にぴったりだと思います。

評価:A
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2017年06月01日

奈良の寺――世界遺産を歩く――

 奈良文化財研究所の本です。古代史、建築史、考古学、保存科学、造園学など様々な分野の所員さんたちが、奈良市内の寺社を解説しています。特に建築史的なトピックが多く、字引片手に専門用語を調べながら読みました。。何度も訪れたことのある奈良といえども、全然知らないことばかり。この本を通して歴史を知れる、というより、歴史を紐解く、また歴史を繋いでゆく専門家たちの姿を知ることができます。
文化遺産って本当に様々なアプローチがあるのだな、と実感しました。

評価:B
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2017年04月20日

都市・集まって住む形

 鳴海邦碩さんの本です。世界中のさまざまな都市をとりあげてそ形成の過程や集住における知恵を紹介しています。
風土が違えば住まいのあり方も全然違うのかと思いきや、意外と同様の形式の住まいがあることに驚きました(台湾の亭仔客と日本の雁木など…)。
 以前読んだ本にもありましたが、各戸を繋ぐ空間(アパートの共用スペースや、路地空間など)の重要性を強く思います。植木鉢などの表出があれば見た目にうるおいが生じるだけでなく、近所同士でのつながりも増え、人の目も増えるため防犯効果も上がります。そして、ブラジリアがよい逆例となっているように、ある程度雑然としているほうが人間的な、にぎわいのある空間となっているというのも確かだと思います。
近年では画一的、没地方性な、そして隣家とかかわりを持たない家がたくさん生まれていますが、古い家の、そしてそれが構成する町や村のあり方を見つめなおすことが必要なのではないでしょうか。

評価:B
posted by みさと at 10:36| 奈良 | Comment(0) | TrackBack(0) | 読書(建築学/都市論) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年01月22日

住まいを読む――現代日本住居論

 鈴木成史さんの本です。現代日本の住宅の歴史を追うとともに、それぞれの住宅についての意義を考察しています。取り上げられているのは、農村住宅、漁村住宅、町家、下町の住まい、中廊下型住宅、都市LDK型住宅、地方続き間型住宅、建築家の設計した住宅、集合住宅、コーポラティブ住宅などです。
 戦前から現代(といっても20世紀終わりまでですが)にいたるまでの住宅史が概観できるのもよかったですが、特に心に残ったのが、下町や漁村の住まいにおける家と路地との関係です。このような密集して暮らす地域では、路地が各戸により宅の延長として、日常生活(炊事、洗濯、etc…)の場所として使われているのです。これは住宅の狭さを補うと同時に同じ路地を使う人々の生活空間が重なり合って、町内での連帯心や防犯効果も生み出しているのです。路地で植木鉢をおいて自分の家の特徴を表す「表出」行為や開放的な家屋構造などもこれを支えているのです。
 また現代によくある閉鎖的、固定的な間取り構造についても批判をされています。鈴木氏の言うとおり、家族というものは不変的なものではなく、家族形態の変化に合わせて住宅の使い方も変えていくべだと思います。現代ではけ結婚するまでは実家、結婚したら夫婦でマンション、子供が育ってきたら一戸建ての新住宅、という風に、家族形態の変化を「引っ越し」という形で対応する傾向がありますが、これは人口に対する住宅の過剰供給を招いて将来の空き家問題につながります。また文化の継承という面を考えても、核家族ではなく、どちらかの親元の家に同居して、その昔からの家を住みこなし、住み変えていくべきだと思います。(もちろん、地域や建てられた時代によって住宅の特徴や広さは千差万別でありますから、一概にそうしろ、ということはできませんが…)
 個人的には中廊下型住宅が良い住宅だな、と思いました。部屋がふすまなどでつながっていて間取りの柔軟性が確保できている一方で個室というものができ、さらに各部屋への動線が分離することで一定のプライバシー性も生まれている。そして各部屋が完全に遮断されず音などがある程度通るからこそいざというとき駆けつけやすく、介護や育児などもしやすいのです。

 私は地域づくりを将来の仕事としたいと考えていますが、これまで考えてきたのは都市や村全体のことばかりだったような気がします。この本を読んで、改めてそれらは、個人の生活・個人の住まいの集合体だということに気付かされた思いです。当然のことで理解していたはずなのですが、まちのことを考えようとするときどうしても巨視的な方に思考が行ってしまっていた気がします。自分のものごとを考えるアプローチを増やしてくれた一冊でした。
 同時に、住宅や間取り、生活空間に俄然興味が……。建築関係の本ももっと読んでみたいと思いました。

評価:AA
posted by みさと at 12:03| 奈良 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書(建築学/都市論) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年05月13日

さがしてみよう日本の形D 民家

 立松和平さんら文、日々貞夫さん写真の本です。北海道から東北まで、日本の古民家を紹介しています。私は古い集落を通るとき、いつも家の造りを見ています。同じ関西の中でも色々な造りの家が見られて面白いです。他の地方に行くときなんてもう。全く家の造りが違ってワクワクします。一冊の本の中でこのように日本国中の家を見られてやはり楽しかったです。初め三つは見取り図も書いてあって興味深かったですね。
 中家の住宅が特に気に入りました。以前から大好きな大和棟。しかも環濠付き。こういう家に住みたいものです笑。大和棟は日本の民家の中でも一番好きな建築です(地元だから、ということでのひいき目かもしれませんが)。あの屋根の形を見ると本当に心が躍りますね。
 面白い本でした。しかし、ただ、特に後半、写真と文章の対応があまり良くなかった気もします。あとできたらそれぞれの家の全体像も載せて欲しかったです。

評価:B
posted by みさと at 23:58| 奈良 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書(建築学/都市論) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする