2019年06月07日

日本人の景観認識と景観政策(土岐寛)

 早くも6月。こないだ春分を迎えたばかりだと思ったのに、もう夏至が間近に近づいています。9月に大学院の入試を受験予定なのですが、そろそろそれを見据えて関連する本を読んで行こうと思い、先輩に勧められた本を手にとってみました。

 土岐さん自身は法学畑で地域自治や都市政策を専攻されている方ですが、「景観」問題は都市計画学、建築学、都市社会学、景観工学、地理学など文理問わず幅広い分野の関わる問題であります。
 この本の構成は、日本の貧困な都市景観を背景に、日本における景観研究/都市美運動の軌跡を分野横断的に辿り、日本人の風景観や都市史/景観史を確認した上で、「景観に関する意識調査」を参照したり、各地の景観条例や景観訴訟をたずねながら良い都市のあり方を追求するというものになっております。
 かなり多様なトピックに渡りますが、この本に通底する筆者の問題意識としては、日本は欧米諸国と比べ、私的所有権が強いことや伝統的な建築・都市空間のあり方の歴史などの経緯から、私的空間の造形意識は高いが、公共空間への意識が低く、街並みが乱雑醜悪なものになってしまっているということがあげられます。こうした言説は都市論の世界ではかなり一般的で、そろそろ慣れてきたし納得はしていますが、私自身初めて聞いたときは、日本人は集団意識、同調圧力が強いというイメージがあったため、少し驚いた記憶があります。

 都市史/景観史については知りたい内容が網羅されていたわけではなかったのが残念でしたが、日本の都市景観論の研究史がざっとまとめてあったのが参考になりました。また今後もっと各論に触れた本を読んで勉強していきたいと思います。

 ぼうっとしていたら院試三ヶ月前。まだ対して何も勉強していないので、いい加減積極的に勉強していかないとなぁと感じます。頑張らないと。
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2019年05月17日

人口減少時代の土地問題(吉原祥子)

 「土地」と言って、何をイメージするでしょうか。私なんかは、人の記憶が蓄積する記憶の場といった風に、ある種のロマンティシズムを持って見てしまいます。
 しかし、同時に土地というものは複雑な法システムや資本主義経済システムが埋め込まれ、人々の怨念の絡みついたもでもあります。本書は、主に土地に関する法システムについて、人口減少を迎える現代どのような問題に直面しているかについて統計データを用いて考察した本であります。
 登記というシステムは、所有権の対抗要件となっていると同時に、旧土地台帳を統合しており、公共的な性質を少なからず持つ国土を管理するという役割も持っています。しかし、相続の際、資産価値の低い土地や慣例的に受け継がれている土地は、登記がなされず、相続が繰り返されるたびに法定相続人が増え続け、自治体が所有権を持つ者を把握できなくなってしまいます。実態として利用されていれば良いですが、放棄されてしまえば再利用が難しくなりますし、震災の復興住宅建設など公共用地として行政が取得したいとなっても権利調整が極めて困難となります。

 土地というものは、何気なく暮らしている舞台でありますが、学生の生活では、その背景に法的システムが存在しているということに中々気づきません。
 先日、由あって相続によって生じた複雑な権利関係、利害対立が土地に絡みついている様を見て、ゾッとしました。土地というものは、住まうにしろ耕すにしろ、人の営みに実際的にも法的にも深く結びついており、容易に逃れることのできない場であります。正当に放棄することも難く、放棄しては気づかぬうちに誰かに迷惑をかける。土地には、人文主義的のみならず法経済的にも、「地霊」が宿るのだと恐ろしく感じます。
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2019年02月08日

村落からみた市街地形成 人と土地・水の関係史 尼崎1925ー73年(沼尻晃伸)

 沼尻晃伸さんの尼崎関連の一連の研究論文をまとめ、加筆の入った本です。沼尻さんは立教大の社会経済史の先生です。
 図書館でふらふらしてたら見かけて、自分の関心にかなり近いものであったため、テストを控えていましたが、迷わず借りました。
 旧農村の郊外住宅地を論ずる、珍しい論文。旧農村の郊外住宅地はその数の多いにも関わらず、都市研究や農村研究の時代的・空間的末端として扱われ、あまり主題に据えられることが少ない印象があります。

 舞台となるのは尼崎市の橘と浜田。それぞれ土地区画整理がなされた年代が異なり、時期や諸条件の差異を通じた比較研究が行われています。
 土地台帳や農地委員会議事録などの行政資料を用いる一方で、地主の手記や自作農の日記も取り入れています。住民がどのような意図・意識を持って土地とかかわり、市街地形成に影響を与えてきたのか。行政や大都市を中心に据えて行う研究は多くありますが、このようなミクロな視点からの研究は珍しく、価値あるものだと思います。
 私も、この論文のような、農村から見た郊外住宅地開発が自分の中のテーマの一つとして存在しています。名所の認識史もやりたいので、卒論のテーマにするかは微妙ですが、地元・柏原でこれに近い研究をしてみたい気もします。柏原は尼崎と違って、土地区画整理がなされておらず(それゆえ史料も少なそうですが)、また立地条件もかなり異なるところもあり、また違ったことが見えてくる気がします。実家の日記や小作・借地関係史料も使えたら、史料的な独自性もありますし、いつかは挑戦してみたいです。

 私は都市史・建築史の研究室に分属になり、卒業論文にのぞむことになるのですが、ここまで歴史学的な勉強をあまりしていないことが、少し悔やまれます。地理学や建築関係の勉強に時間を費やしてきたのは決して無駄ではないでしょうし、研究に役立つとは思うのですが。。。
 経済史・農史・都市史など、他分野から歴史的研究をする学者の方々は、どのように学部生時代勉強をしていたのか、気になるところであります。
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2018年03月16日

日本の愛国心(佐伯啓思)

 佐伯啓思さんの本です。私の所属する学部の退官された教授さんの書いた本ということで読みました。
 「愛国」は近年力を増している論調であるように思えます。同時に、その反動のようなものも蠢いております。
 しかし、この「愛国」を唱える保守も、「愛国」を警戒する革新も、図式化された中、それ自体の理念というよりも対するものへのアンチテーゼとして存在しているような傾向があります。
 「保守」や「革新」がもともとの意味を考えると混乱した形で図式化されている(GHQ体制や安保体制の関係を考えればわかりやすいでしょう)ことは、それなりに理解し、考えていたつもりでありましたが、佐伯さんは第二次世界大戦の敗北を考究することでこの問題を深めています。「負い目を持つ日本の愛国心」という言葉にこのことは象徴されています。

 「愛国」の対象となる「国」とは何なのか?
 というのは、高校時代からずっと疑問に思っていたこと。ネイション=国民、市民社会なのか? 国家の統治機構なのか? 民族なのか? 「故郷」なのか?
 私が昔から浅はかな知識なりに考えていたことを、深く深く掘り下げてくれたような感じがします。私は愛郷心・「故郷」と愛国心・国家を厳格に区別し、想像の共同体としての国家というものへの信奉を批判していましたが、ある程度のところで結びついているということも気づかされました。
 国民国家における「ナショナリズム」の位置付けを整理できたのもよかったです。

 終盤の日本思想のところには、知識が浅く、なんとなくの理解しかできていない気がするのが心残り…。

 ナショナリズム、愛国心は安直な感情論に行き着きがちですが、この本のようなきちんとした論考を一冊読むことは、この問題を考えていく上で必要なことだと思います。
posted by みさと at 15:11| 奈良 ☔| Comment(0) | 読書(政治学/経済/法学) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年08月18日

グローバリゼーション・パラドクス(ダニ・ロドリック)

 ダニ・ロドリックさん著、大川良文さんと柴山桂太さん訳の本です。国民国家と民主主義とハイパーグローバリゼーションは鼎立しないという「国際経済のトリレンマ」を骨子に盲目的なグローバリゼーションを批判しています。
 詳述はしませんが、わかりやすいようにこれまでの例を挙げてみると
国民国家+民主主義:ブレトンウッズ体制
民主主義+ハイパーグローバリゼーション:ユーロ体制 (世界政府)
国民国家+ハイパーグローバリゼーション:金本位制
であります。ロドリックさんは、歴史・経済・政治の観点からグローバリゼーションを適度に抑える一つ目の選択肢を提唱しています。
 実はこの本は授業の教科書として読んだもので、その授業を担当したはったのが訳者の大川さん(非常勤講師としてですが)。また別のコマでは柴山さんの授業も受けていました(柴山さんは私の学部の先生!) ということで親しみのある人たちの訳したもので、興味深く読むことができました。
 とはいえ、全くの畑違いの分野で、読んでも「なるほど」とか「確かにそうか」くらいで、自分なりの考察は中々出来ません。そもそも根本となるところは理解できますが、細部の理論まで理解できたかというとかなり怪しいところ。
 しかし、私は普段グローバリゼーションを考える時に文化の面やナショナリズムとの関係の面ばかり考えがちでありましたが、貿易・金融面についても考えることができたというのはかなり勉強になったところだと思います。

 知識がなく、他にしっかりした経済書を読んだことがないがゆえに、グローバル経済について語ろうとすると、ロドリックさんや大川さん、柴山さんのおっしゃることの受け売りばかりになってしまっている気がします。もう少しちゃんと語れるようにしたいなぁ。

評価:B
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2017年05月27日

里山資本主義(藻谷浩介)

 藻谷浩介さんの本です。木質バイオマスをはじめ、地域内のエネルギー、食糧、建材などのものを利用することで、お金が無くなったり輸入が唐突に途絶えたりしても生活していけるサブシステムを構築する「里山資本主義」を説いています。
 林業や地域にかかわっている身として前から気になっていた本です。かなりわかりやすく書かれている反面少し断定的な文体だったので、「検証した方がいいのでは」とか「本当にそういえるのか」と思ってしまう面もありました。
 経済成長をひたすらに目指すのではなく、停滞や多少下向きでも長く続く経済、ある程度外に頼らなくても自立できる経済を考えるべきというのは、中高時代からの私の思いとかなり近いところ。自分と意見が近いだけに、文体が気になってしまったという感はあります。
 里山資本主義は一つの重要な考え方であるのは確かだと思います。地域を生きる人はもちろん、グローバルな世界を目指す人にもぜひとも読んでもらいたい一冊であります。

評価:B
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2017年02月14日

地方創生大全(木下斉)

 木下斉さんの本です。主に「経営」の立場から様々な地域事業の問題点などを考察しています。

 採算の取れないビジネスに延々とつぎ込まれる補助金、結果より手続きが重視される行政政策づくり、耳障りの良い真新しいだけのアイデア、合意ありきの議論…現在なされている地域事業によくある問題点を暴いています。
 実際読んでいて確かにな〜と思う指摘も多いです。当然なようで意外と意識しない観点が含まれていて面白かったと思います。特に「視察にお金を取る」というのははじめ見た時は目を疑いましたが、かなり良い案です。人に自分の事業を解説するのってかなり手間も時間もかかることです。成功したところに集中して視察が押し寄せて無料の解説を要求してはその団体が疲弊することは避けられません。
 ただ気になったのは、地域の活性化をお金の面だけからのみ見ていること。行政がすべきことは、住民の効用を上げることです。それはお金で測ることができるとは限りません。採算面で見ると赤字の事業でも、それによって住民が大きな効用を得られていればそれはやる価値があると思います。金銭利益以外の効用をどうやって評価するというのは難しいところではありますが…(費用便益分析というのがありますがこれも難しいところ。。)
 地域活性事業に関わる人には中々考えさせられる一冊だと思います。

評価:B
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2016年11月07日

女子と愛国(佐波優子)

佐波優子さんのドキュメンタリーです。自虐史観的な教育に反し、「愛国」に目覚めた女性たちを描いています。
 図書館でなんとなく手に取った一冊。いわゆる「ネット右翼」の行う思考をそのまま表したような本でした。あまりにもステレオタイプにすぎ、逆側の立場を持つ人が皮肉的に描いたといっても不思議には思わないほどです。
 論理的に戦後教育などを批判するわけではなく、それらが批判されるべきものという前提で、女性たちが「愛国」に目覚める様子が描かれており、その時点で、同じような思想を持つ人に読者層を絞っていることがわかります。その目覚める理屈も同じ立場からきわめて主観的に眺めているため、いまいちよく理解できませんでした。
 外を説得させるのではなく、内輪で共感を持ちながら読むような本なのだろうなー、と思いながら読了しました。

 このような思想を見ていると、「国」というものが何なのかよく考えないまま「愛国」を叫んでいる人が多いような気がします。また機会があれば国家や「愛国」についての私見を改めて載せるかもしれません。

評価:D
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2015年02月16日

ナショナリズムの克服(姜尚中/森巣博)

 姜尚中さんと森巣博さんの対談です。最近ナショナリズムというものに興味をもっていろいろ考えたりしています。結構、固定観念で自分自身を縛って、右なら右、左なら左のステレオタイプな思考に陥ってしまう人が多いイメージがあるのですが、この本では流されない自分の意見を述べているのだな、と思いました。当たり前のことのはずなのですが、少し衝撃を受けました。
 結構いろいろ参考になる意見もありましたが……森巣さんの下ネタはどうにかならなかったものか(~_~;)

評価:B
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2014年11月03日

TPP亡国論(中野剛志)

 中野剛志さんの本です。タイトルのまんま、TPP参加への疑念を強く提示した本なのですが、「亡国」とまで書かれていたので驚きました。ただでさえ農業が衰退している今、TPPで打撃を食らったら、元の状態に回復させるのは難しいだろうという単純な理由でなんとなくTPPを嫌だなと思っていましたが、これを読んでその思いを強めました。賛成論者にも理はあるのでしょうが、やっぱりデメリットが大きすぎるのではないかと思います。自民党や民主党の中でも賛否両論のある問題のようですが、果たしてどうなることでしょう……。参加にしろ不参加にしろ、これをきっかけに日本の大切なものが失われていくことは絶対にあってはいけないと思います。

評価:B
posted by みさと at 17:55| 奈良 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書(政治学/経済/法学) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする