2018年05月31日

新訂 社会地理学の基本問題

 水津一朗さんの地理学書です。村落地理学が専門で、「位相地理学」を提唱された方です。水津さんは、私が大学でお世話になっている先生の1人である小島泰雄先生(村落地理/中国研究)の師匠に当たる方で、研究室を決める参考にしようとして読むことにしました。
 人々の「生活空間」、また人々の最小の地域統一体である「基礎地域」がテーマです。人々の生活空間は重層的に展開されており、ある領域でその多くが重なっていきます。農村社会学の鈴木栄太郎さんによる「自然村」「第二社会圏」の理論に近いところもありますが、より地理的空間を重視した理論を展開しております。「基礎地域」「生活空間」の形成は、文化・社会構造による影響を受け、一元的に考えることはできませんが、多くのそれに当てはまるモデルを水津さんは構築していて、興味深く読みました。中でもp122に上がっている、歴史における生活空間の変遷を描いたモデル図が秀逸だと思います。
 なんとなく頭にあることがモデル化されており、また西欧や途上国など日本以外の土地の生活空間をも取り上げていたのも勉強になりました。

 地理学は、地理的な差異を重視し、他の何者でもない個別の事象を深く探求する傾向の強い学問であります。抽象化、モデル化を念頭におく社会学や経済学とはこの点で対立してきました。
 私はこれまで地理学中心に勉強してきましたが、最近は具体事例の調査よりも、類型化やモデル化をした理論の文献を読むのが楽しくなってきています。社会学によってきたなー、と自分で思いながらも、それでも地理的差異を等閑視するような意見を聞くと、腹をたててしまいます。水津さんのような社会地理学というのはかなり良い落とし所だな、と思ったりしています。
posted by みさと at 21:36| 奈良 ☁| Comment(0) | 読書(地理学) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年05月29日

日本の風景 西欧の景観

 オギュスタン・ベルクの書いた風景論の名著です。読んだのが三月なので、二カ月越しの感想です。めちゃくちゃ溜めてしまっています、、、。
 ベルク は文化地理学者ということですが、絵画や建築をもとに風景論にアプローチしています。風景画というものは、その時代の人々(芸術家)の見る視線を分析できて、とても面白いですね。この辺全然知識がないので、絵画についても勉強してみたいな、と思いました。
 これまでベルクを引用している本を読んできたこともあり、内容自体は比較的知っていることや他の方が別の言い方をして述べている内容が多くはありました。しかし、いくつか初めて得る考え方も。
 人間には共通する「元風景」というのがあり、それが人々の好む風景の根幹になっており、文化によって様々な表象のされ方をしている、という話が序盤に出てきたのが印象に残っています。ユングの原型論に近いものがあって面白いです。
 これからの風景への示唆も興味深いです。彼は「造景の時代」を提唱しており、西欧近代の主客二元論を乗り越えつつ、自らの視線を客体化して風景を管理すべきと述べております。ポストモダニズム建築が陳腐な「まがい物」になりがちというのは良くある議論ですが、これから先どうしていったたら良いかを、理論と具体例を取り混ぜながら解説していくのが良いです。
 結構同じテーマの本を読んでいるので、割とわかりやすいと思いましたが、結構予備知識が必要とされている気がします。最後の「造景の時代」への提案は少し難解な印象を受けました。またこれから知識をつけて、完全に理解できるようにしたいと思います。
 風景について興味があれば、ぜひご一読を。
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2018年01月18日

かしわらの史跡(上)(下)

 重田堅一さんの本です。短いコラムのような柏原の歴史に関する記事を集めた本です。二頁ほどで完結する記事ばかりですので、暇な時間、隙間時間にだらだらと読んで読み切りました。この本の好きなところは、柏原市域に関する和歌がたくさん載っているところ。古歌を集めて龍田の眺めの復元を考えようと思っていたところなので、中々興味深かったです。
 市史を読んでいるので、知っている知識が大部分だったのですが、こう改めて記事集を見てみると、柏原は地味だけどすごい歴史が多いのだなぁ、と。
 かなり読みやすいので、柏原の郷土史入門にはちょうど良いのではないでしょうか。確か、市立図書館にも入っていたと思います。
posted by みさと at 09:12| 奈良 ☀| Comment(0) | 読書(地理学) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年07月03日

〈景観〉を再考する

松原隆一郎さん、荒山正彦さん、佐藤健二さん、若林幹夫さん、安彦一恵さんによる講義録です。それぞれ順に「経済発展と荒廃する景観」、「近代日本における風景論の系譜」、「近代日本の風景意識」、「都市の景観/郊外の景観」、「『良い景観』とは何か」という題目です。
倫理学や経済学、社会学、地理学などそれぞれの論者がそれぞれの立場から景観・風景について書かれています。
この中で一番心に残ったのが若林さんの議論です。近代、土地の商品化による都市化や郊外化を機に、空間は本来的に意味や価値を持たない均質空間だと考えられるようになりました。このため、元来あった土地が人々にアイデンティティや共同性を与えることもなくなり、同じような住宅が広がったり、土地に根差さぬ自由なデザインの建物が建てられるようになったのです。

ここから、若林さんの議論をもう少し詳しく書くと同時に自分の意見も加えていきたいと思います。
空間が均質空間とみなされるようになったということは、土地が市場という単一のシステムの上に乗せられるようになっていることに象徴されます。ニュータウンの開発の際、山を切り崩し、谷を埋めて均質な土地に改造していることにもそれは表れていますし、なによりも、日本全国、場合によっては世界の、都心や郊外住宅地、ロードサイドにおいて、同じような建物が同じように延々と並んでいるという眺めを考えるのがわかりやすいでしょう。時に独創的な建物が建設されたりすることもありますが、それは多くの場合、その土地の風土と遊離したものであり、意味の持たない均質な土地であるからこそ、白いキャンバスのように何でも描けるのです。
 これは私たちが郷土によっていたアイデンティティ(同郷人意識もそうですし、過去の自分と故郷を離れた現在の自分との同一性もそうです)が存在しえなくなるということにつながります。また地域共同体の不成立が郷土へのアイデンティティを揺るがしたということはよく言われていますが、それが風景の崩壊、空間の均質化をもたらし、アイデンティティに二重の影響を与えた面もあります。
 風景の崩壊――景観の均質化がアイデンティティの脱場所化をもたらし、ひいては現在のナショナリズムの高揚につながっているのではないか、とふと思いました。(ナショナリズムにおける「日本」は場所ではなく概念である、とだけ言い捨てしておいて、また気が向けばこのあたりのことも改めて深く掘り下げて書いてみたいと思います。)

評価:B
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2017年04月27日

日本村落の社会地理

 浜谷正人さんによる地理学の書籍です。大学でお世話になっている教授に貸していただいた本です。
 日本はしばしば狭い島国だ、などと言われますが、実際は世界の国々と比べても広い上に、地形も多様。景観的(集村、散村、疎塊村…)にも、制度・生活空間的(標準型、須恵村型、煙山村型…)にも日本の村落は極めて多様であります。
 私は中学時代より柏原市、三郷町、王寺町を中心に河内・大和地域の村落の形態についていろいろ考えていたものでした。関西は集村卓越地域でありますが、三郷町立野、平群町信貴畑、千早赤阪村小吹など山間地域は結構小村的な様式の村々もあることを面白く思っていた記憶があります。柏原市雁多尾畑の枝村の横尾・生津をいかに評価するかも面白いところ。
 この本を読んで、これまでの私は景観的な要素ばかりに注目して、制度・生活空間的な村落の結びつきについて探求することはほとんどなかったことに気が付きました。水利・農業・自治・祭祀などにおいて村々がどの単位で如何に結びついているのか。大学で学んでいる地理学を踏まえ、これまで見てきた村々についてもう一度考察してみたいと思います(それを卒業研究にしてもよいかも、と考えていたり…)。
 手に入るハードルは高いかもしれませんが、民俗学や地理学に興味のある人はぜひ読んでほしい一冊でした。

評価:A
posted by みさと at 11:19| 奈良 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書(地理学) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年06月01日

地名の社会学

今尾恵介さんの本です。地名の成り立ち、階層、現状について分かりやすく述べられています。市町村の下の、大字・小字・町丁などの地名がどのような仕組みになっているのかは意外と知らない方が多いのではないでしょうか(高校のとき「大字」って何て読むのと友達に聞かれて衝撃を受けた記憶があります(^_^;))。地名に関するイロハが極めて明快に書かれているので、地名についての入門書にちょうど良いのではないでしょうか。
 また市町村の統廃合や住居表示の実施で古来より脈々と受け継がれてきた地名が消滅しつつある現状についても強く問題提起がなされています。最後に引用されたマーガレット・ジェリング氏の言葉にあるよう実際地名は「過去への道標」であり、測りきれない文化的価値があると私も思います。
 少々感情的な面もありますがかなりわかりやすい本です。これまであまり地名について意識してこなかった人も、この本を読んで少し考えてみてはいかがでしょうか。

評価:B
posted by みさと at 13:34| 奈良 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書(地理学) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年12月24日

かしわらの史跡(上・下)

 重田堅一さんの本です。柏原各地の歴史に関することをまとめられています。

 コラム集のように短い記事がたくさん集められていたので、大変気軽に読めました。ちょっとしたひまつぶしにはこういう本が便利です。内容も非常に充実していて、何より今調べたいことがすぐに分かるので、卒業研究を書くときに重宝しました。
 この本で初めて知ったこともそう少なくありません。以前記事にした「川畑」もこれで知りました。
 ご丁寧に散歩コースや遺跡地図まで書かれており、柏原の歴史を調べている人や柏原に興味を持たれている方なら一読の価値があると思います。

評価:B
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2012年12月14日

法隆寺の謎

 国光史郎さんの本です、法隆寺の七不思議に注目され、法隆寺の謎について調べられています。

 割と身近な印象を受ける法隆寺について全然知らないことに気づかされました。法隆寺の七不思議はかねてより聞いていましたが……。特に伏蔵ーーすなわち、隠し蔵の謎が気になります。
 法隆寺はとても古いお寺だけあって、伝説めいたことが多いですが、いずれも理由があってのことなのですね。そのことがよく分かり、とても興味深く読ませていただきました。

評価:B
posted by みさと at 19:24| 奈良 ☁| Comment(2) | TrackBack(0) | 読書(地理学) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年06月20日

知らなかった! 驚いた! 日本全国「県境」の謎

 浅井建爾さんの本です。現在の都道府県の成り立ちや県境の変化について書かれています。

 身近な行政単位としておなじみの県の成り立ちというものは意外と知らないものです。堺県があったことぐらいは知っていましたが、柏崎県や敦賀県、長浜県など初めて聞く県名がいくつもあって驚きました。
 県境の変化というのも読んでいて面白かったです。摂河泉の三国でできていると思っていた大阪府に旧丹波国の地域があったこととか、和歌山県の飛び地・北山村のこととか。
 ちょっとした知識としてこの本に書いてあることを覚えておくと、いつか役に立つことがあるかもしれません。

評価:B
posted by みさと at 18:44| 大阪 ☔| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書(地理学) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年04月30日

八尾・柏原の歴史

 棚橋利光さんの本です。『八尾市史』『柏原市史』などを元にした郷土史がソフトカバーにまとめられています。
 市史というのは長いので、要所々々を読み、あまり興味のないところを飛ばしがちですが、この本なら手軽で全編を読むことができました。おかげで、全く知らなかった「坂戸源氏」などについて知ることができました。
 これ一冊読めば八尾・柏原の郷土史があらかた理解できるという優れものです。他の市町でもこのような簡潔な本を出してほしいですね。

評価:B
posted by みさと at 15:52| 大阪 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書(地理学) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする