2019年10月19日

赤毛のアン(L・M・モンゴメリ)

 『若草物語』に続いて、少女文学の名作と名高い児童文学を読みました。幼い頃読んでいた小説というと、私の場合圧倒的に江戸川乱歩の少年探偵シリーズ、中学生の頃は有栖川有栖や法月綸太郎のような新本格派を読み耽っていたミステリ少年で、こうした海外の名作児童文学というものはあまり読まずにここまできました。大学生になって初めて、アリスを手はじめにこうした小説に手を出していますが、たくさん素敵な物語に出会えています。

 この小説は「アン」という孤児に育ち、赤毛やソバカスと(当時の価値観からすれば)容姿に恵まれないながらもおしゃべりで明るい性格、優れた行動力と才覚、そして豊かな想像力で人生を切り開いて行く一人の少女に焦点をあてた物語。現実世界にいたら少し我の強い感じさえする彼女ですが、周囲の人たちに愛されるのも頷ける魅力があります。当時のカナダの規範はあまりわかりませんが、日本の伝統的な価値観からすると活発なアンは「少女」性を大いにもちながらもその規範を逸脱するところの大きい感じがします。ハイジや『若草物語』のジョーにもそうしたところがありますし、児童文学に登場するヒロインはしばしば「女の子」の規範を超えるところに一つの魅力があるのかもしれません。

 アンが豊かな感性を持って感受する風景も美しく、魅力的に描かれています。とりわけリンゴやサクラ、ハッカ、カバなどの植物の描写は鮮やかです。原題も『グリーン・ゲイブルズのアン』。アンの暮らす緑の破風の家をタイトルに取り込んでいます。アンが暮らすアボンリーの村は、苦難の幼少期を暮らしてきたアンにとって幸せな土地であったことと思います。
 なお、このアボンリーは、作者・モンゴメリが祖父母に養育されたキャベンディッシュがモデルとなっているそうです。カナダでは「アボンリーへの道」というテレビドラマが作られ、人気を博しているそうですが、これは『赤毛のアン』含むモンゴメリの複数の作品をもとにプリンス・エドワード島を舞台に描かれたドラマだとのこと。面白そうです
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2019年10月18日

小さなトロールと大きな洪水(トーベ・ヤンソン)

 ムーミンシリーズの第一作品。ムーミンとムーミンママ、スニフがムーミン谷にたどり着くまでのお話です。第一作品とは言っても初めは本屋ではなくヘルシンキ駅の売店や新聞スタンドで売られたにすぎず、しかもすぐに絶版になり、シリーズが完結してからようやく再版がなされ、普及したのは最後だということです。
 ムーミンパパは「ニョロニョロに騙されて」旅に出たのですが、ムーミン達も冬が来る前にお日様の当たる暖かな場所を求めて、またムーミンパパを探して旅に出ます。

 冒険ものの児童文学でありますが、この作品が描かれたのが第二次世界大戦の最中ということを考えると、中々味わい深いです。あまり世界史は詳しくはないのですが、フィンランドは枢軸国として戦争に参加し、ソビエトと交戦を行なったと聞きます。
 「パパ」がいないという徴兵の連想や、蛇や嵐、洪水の苦難もそれぞれ戦争や国際情勢のメタファーにも思えますし、甘いお菓子で満たされた人造太陽に照らされたユートピア(反面、ディストピア)も印象的です。ヤンソン自身による挿絵も、どこか暗い影を帯びている気がします。ムーミントロールによく似ているけど、嵐を好む「海のトロール」の存在もなんだか示唆的。

 そういえば、文学部のスラブ文学で研究をしている友人に聞いたのですが、京大文学部(の海外文学研究系)の研究室は、テクストから分析を発することを徹底しているそうで、文化史・社会史的なところから発する分析はご法度だと聞きます。僕自身、文学への関心がテクストそのものやその審美的な鑑賞にあるというより、表象文化論的な読み取りにあるので、中々ショッキングなお話でした。私は趣味で読んでいますが、研究で文学をやるのも中々大変なんだろうな、と思うこの頃です(楽しそうだけど)。

 そういえば、最近また児童文学ばかり読んでいるのは、先週脳震盪を起こして療養中のためであります。一昨々日久しぶりに外出したところ、めまいがひどくて三条の路上で動けなくなり、救急車で運ばれてしまいました。脳神経外科で精密検査してもらったところ、先天的に脳震盪の影響を受けやすい体質ではあるものの、ただの脳震盪であることが明らかになり、後遺症の心配はないそうです。とはいえまだ目眩や体がだるい症状が続いており、まだしばらくは療養が必要そう。ゆっくり回復していこうと思います。(卒論が心配だぁ…
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2019年10月11日

若草物語(ルイザ・メイ・オルコット)

 ポプラ社、小林みきの訳で読みました。南北戦争期、父が出兵し、銃後に残されたメグ・ジョー・ベス・エイミーのマーチ家の四姉妹が隣人ローレンス一家との交流を通して流れてゆく一年を描いた物語です。少女向けに書かれた児童文学らしく、読みやすい成長譚となっております。

 この小説はルイザ自らの少女時代をモデルに書いた小説で、少し勝気で少年らしい文学少女・ジョーがルイザの分身で、他の姉妹も作者の実姉妹と重なるところがあるようです。
 マーチ一家は没落してはいるものの、元々富裕な一族で、他の家とのパーティや花壇作り、ピクニック、スケートなど当時の上層階級少年少女の社交世界があらわているのが興味深いです。一方で、少女たちは家を支えるために家庭教師や介添えの仕事や家事などを担って働きます。もっと貧しい人たちには施しを与え、裕福でなくとも清く幸せに生きている様子が描かれています。そうした中で富裕層から貧困層までの幅広い人たちと交流しており、その当時の社会階層の認識が見えてくるのも面白いです。
 ジョーが髪の毛を切る描写が有名ですが、これは彼女の成長、脱皮を象徴するものと読み取れますが、(父親の言葉を借りると)元々美しい髪を持ちながらも男っぽい性格だった彼女が心優しい女性に成長する様子をさっぱりと美しく表現していて好きです。
 原題は『Little Women』ですが、『若草物語』という邦題も素敵です。少女たちを若草になぞらえたのでしょうか、音の響きがとても綺麗で、華麗さはなくとも、質素で若々しさ、活力のある素朴な美しさが感じられます。

 友人と話していて気づいたのですが、谷崎潤一郎の『細雪』との類似性。それぞれ個性をもった没落貴族の四姉妹の一年を四季折々の風物や文化生活を通じて描くという内容。谷崎が『若草物語』の影響を受けたという話は聞いたことがありませんし、谷崎も自身の大阪での結婚生活をモデルに『細雪』を描いたと聞きますが、もし多少なりとも影響を受けていたかも、なんて空想して楽しんだり。
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2019年09月29日

注文の多い料理店(宮沢賢治)

 収録作品は『どんぐりと山猫』『狼森と笊森、盗森』『注文の多い料理店』『烏の北斗七星』『水仙月の四日』『山男の四月』『かしわばやしの夜』『月夜のでんしんばしら』『鹿踊りのはじまり』(以上、『注文の多い料理店』)、『雪渡り』『ざしき童子のはなし』『さるのこしかけ』『気のいい火山弾』『ひかりの素足』『茨海小学校』『おきなぐさ』『土神ときつね』『楢ノ木大学士の野宿』『なめとこ山の熊』です。

 ご無沙汰しております。大学院受験のため更新が滞っておりました。8月までは関係する本を色々読んでいましたが、9月に入ってからは復習や問題演習に時間をとっていたということもあり、9月末の今まで全然本を読めていなかったのが少し残念であります。
 大学院は京都大学大学院人間・環境学研究科を受験し、無事合格いたしました。今度は修士課程に向けて、卒論をしながら基礎固めを頑張りたいと思っています。

 院試終わりに一週間ほど平泉・花巻・遠野へ旅行に行ってきたのですが、宮沢賢治のこの短編集はこの旅行に合わせて読みました。花巻は賢治の旧跡が多く残り、賢治童話村や記念館では賢治の世界観を存分に感じられます。
 この短編集は『なめとこ山の熊』を始め、賢治の中でも風土性の強いものが多く、岩手県のあの地方の空気を感じながら読むことで、一層楽しめた気がします。

 『かしわばやしの夜』『月夜のでんしんばしら』『鹿踊りのはじまり』『雪渡り』あたりはたくさんの詩(歌)が挿入されており、口に出して読みたくなる童話です。
 旅行中、花巻で賢治の命日に行われた賢治祭を訪ねたのですが、『月夜のでんしんばしら』の歌が地元高校の合唱部透き通った声で歌われるのを聞き、いたく心に響きました。同作は電気が導入された時代性をも反映し、人間の文明のなせるものをも幻想的に描き出しています。
 鹿踊りも「遠野祭り」と賢治祭で見てきたのですが、『鹿踊りのはじまり』ではその始原が(賢治の創作かもしれませんが)可愛らしく描かれており、素敵です。

『水仙月の四日』『ひかりの素足』は吹雪に遭難する少年を描いているという点で共通項のある作品。いずれの作品にも通じることではありますが、賢治は色の描写が鉱物や化学の言葉を援用してとても美しく、とりわけ青色や寒色系のそれが豊かになされている感じがします(鉱物の名前を知らなくても、その語感の美しさ!)。この両作で描かれる雪山は賢治のこうした豊かな色彩感覚がよく現れており、とても美しいです。特に『ひかりの素足』は物語の展開、リズム感も含めて完成度が高い作品です。

『ざしき童子のはなし』も風土間の強い話であります。「こんなのが、座敷ぼっこです」で括られる短いお話の連続するのですが、その語り口が、座敷童子のうまく掴むことのできない魅力をよく表していて、印象に残る作品であります。賢治のいた花巻と遠野は比較的近いところにあり、『遠野物語』の世界観も漂います。遠野の民話を柳田國男に伝えた佐々木喜善と賢治は交流があったということも踏まえて読むと、また味わい深いです。
『なめとこ山の熊』は本短編集の中でも物語的な物語で、熊や風景の美しい描写が作品の哀感を誘います。熊の親子の「どうしても雪だよ、おっかさん」の会話は、透き通って美しく、本当に大好きです。岩手滞在中、この作品に出てくる「大空滝」沢を沢登りしようと計画もしたのですが、アプローチの足がつかず断念。またいつの日にか、訪れてみたいと思っております。
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2019年06月21日

ムーミン谷の彗星(トーベ・ヤンソン)

 フィンランドの児童文学作家・ヤンソンによるムーミン・シリーズの二番目の作品。第一作品『小さなトロールと大きな洪水』によって住処を追われ、ムーミン谷に住み着くことになったムーミン一家ですが、ある日ジャコウネズミがやってきて、「ムーミン谷」に彗星が近づいてきて、地球にぶつかることを予言し、宇宙と星を見に天文台を目指すムーミンの旅が始まります。
 この小説の魅力は、何よりその舞台と登場人物からなる世界観にあります。
 子どもっぽいわがままを言うけど憎めないスニフ、学者気質でどこかかたいところのあるスノーク、冷静なさすらいの旅人・スナフキン、切手や虫のコレクションに夢中になるへムル族、「どうしても思ったところへ行きつけなくて、いつもどこかを憧れている」謎めいたニョロニョロ、、、  それぞれの言動はかなりわがままだったりむちゃくちゃで、それに誘導される物語の展開もナンセンスなところ(そもそも彗星がくるから天文台に向かうというところから…)が多いですが、それがとても心踊り、楽しい感じがします。
 登場人物たちの種族は様々でありますが、皆仲良く?関係を築いています。それぞれの種族の設定が、「世界の動物図鑑」だとか「おばけ図鑑」だとかにハマった子供心をくすぐって、魅力的であります。トロールというと「三びきのやぎのガラガラドン」に出てくるような、おどろおどろしい怪物をイメージしますが、この作品のムーミントロールは、カバのような温厚な見た目。スノークはムーミントロールにそっくりですが、体の色が変わる別の種族。人間に見えるスナフキンも、実はムムリクという種族。ニョロニョロのつかめない、たくさんいるのにどこか孤独な感じも素敵です。

「ムーミン谷」という舞台もナンセンスで、けれど、子供心をくすぐります。筏で川を降って行ったらいつの間にか山に入っていく。滝から落ちて危機一髪のところで、地面の割れ目から救い出される。。地形を想像すると、一体どうなっているのか、と感じますが、作品の不思議な世界観を作るのに良い働きをしています。講談社の新装版で読んだのですが、海底を竹馬で歩いているシーンを描いた表紙も素敵な雰囲気。
 原作を読んだのは初めてでしたし、アニメを見た記憶も遥か彼方で、新鮮な気分で読み始めたのですが、こんなに魅力的な世界観なら、人気シリーズになるのもさもありなん、と感じます。良い作品でした。
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2019年03月30日

鏡の国のアリス(ルイス・キャロル)

 ルイス・キャロル作、中山知子訳の児童文学で、『不思議の国のアリス』と対になる作品ではあります。フォア文庫で読みました。『不思議の国〜』の方は即興で作られたものであり、破綻した世界観のイメージが強かったのですが、『鏡の国〜』は机上で書かれたものであるらしく、比較的整頓された印象。とはいえ、やっぱり『不思議の国〜』の香りは残して一つ一つのお話は、切り絵のように断片的で、夢を見ているような感じ。しっちゃかめっちゃかで面白いのですが、一つの物語として評価するには、少し難解な感じもします。
 チェスゲームの世界をモチーフにした物語で、アリスは白のポーンで、女王に「成る」ことを目指して世界を冒険して行きます。登場人物たちの行動も、それぞれチェスの動きに連動しています。こうした枠組みがあることが、『不思議の国〜』よりもとっつきやすさを与えている感じはしますが、やっぱり難しい。
 なんていうものの、とても魅力的なキャクター、世界感に彩られ、とても楽しく心躍る作品だと思います。子供心をとってもくすぐる。

 今では日常何気なく使っている鏡というものが、子供の頃は特別な存在であり、不思議で、怖くて、魅力的に感じていた記憶があります。覗くと現実世界と双子の空間が広がっているのに、決して入ることはできない。もし入ってしまったら、どうなるのだろうか。鏡ごしに向き合っている自分は一体何者なのか。どうやっても一部しか見ることのできない鏡の中の世界の先は、どんな風になっているのか。現実と同じように広がっているのだろうか。
 お話自体にも、鏡の要素がちらちら。トウィードルダム・トウィードルディーノ双子とか、白と赤の女王の性格の違いとか。あと、チェスのゲームの構造というのもそうですね。
 鏡って、素敵です。

 ジャバウォックの詩を始め、この作品にはしゃれや言葉遊びをたくさん散りばめられていますが、邦訳の際、どのように扱ったのかが気になるところ。友人が持っている新潮や角川の訳と比べてみると、その違いに驚きます。角川は韻踏みなどを忠実に守ろうとしているのですが、このフォア文庫の訳は子供向けでわかりやすくしているため、ある程度省略している。とはいえ、フォア文庫はフォア文庫で優しくて、角川や新潮にはない良差のある訳です。翻訳の難しさを感じます。。原文でも読んでみたいと感じる作品でありました。
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2018年12月30日

アルプスの少女ハイジ(ヨハンナ・スピリ)

 スイス人児童文学作家・ヨハンナ・スピリの作品です。訳は池田香代子、挿絵はいわさきちひろ。
 幼い頃、アニメで見たとは思うのですが、どうもぼんやりと記憶が薄く、話の筋は全く覚えていない。それでも懐かしさを感じるのは不思議な感じです。幼時に見た物語ってどれもそんな印象があります。

 この物語に現れる登場人物は皆、だれかを助けようとする優しさを持っています。だれかを支え、支えられることでおじいさんも、ハイジも、クララも、皆成長してゆく過程が、よく描かれています。
 この本は、先日京都駅のいわさきちひろ展に行ってきたのですが、その際に売店で購入しました。いわさきさんの絵は淡く柔らかな色彩が優しく可愛らしいのですが、モノクロの挿絵でもその優しさがよく現れており、物語とよく合っています。

 意外に思ったのは、キリスト教的世界観が色濃く現れていること。時代や地域を考えれば、当然なのかもしれません。おじいさんーーオンジがキリスト教世界の逸脱者として描かれ、物語が進むにつれ、その世界に復帰していく様が、とても印象的です。放蕩息子の喩えまで出てきます。
 非キリスト教世界ーーアルプス、キリスト教世界ーーフランクフルト、デルフリ村
という対比が考えられますが、アルプスを自然の営み、雄大さを感じさせるように肯定的に描き、フランクフルトを精神的にも空間的にも(デルフリ村も精神的には)閉ざされたように、否定的に描かれているのが、キリスト教への認識と対応せずに不思議な感じ。ーーこの作品は野生の精神とキリスト教主義的精神の止揚の様を描いているのではないか、とふと思いました。さらに、これが書かれたのは19世紀。近代主義の時代が訪れていることを考えると、近代合理主義へのアンチテーゼ・反発運動として、原始的・中世的精神の止揚を描いたとも考えられます。

 そのほかに印象に残ったのは、アルプスの自然を中心に、色彩の描写が鮮やかであったこと。
「しずみかけたお日さまが、もみの緑と雪渓の白にぬりわけられたアルプスの山々を照らしていました。とつぜん、足もとの草の上に赤い光が落ちました。ふりむくと、はるかな岩山のぎざぎざは、空にむかって炎のように燃えたち、広い雪渓は真っ赤にそまって、その手前には、ばら色の雲がぽっかりとうかんでいました。草は黄金色に輝いていました。」(青い鳥文庫、p166)
 普段から色彩に富んだ風景が夕焼けという片時の明かりに照らされ、また別の色に染まっていく。色彩のコントラストが素晴らしいです。

 どうでも良い話なのですが、実は私のワンゲルでのあだ名がペーター。この作品に出てくるペーターから取りました(ハイジ、クララもいます)。ペーターってこんな性格なんや、と思いながら、ちょっと恥ずかしい気分になりながら読みました。
 アニメもまた見てみたいな。
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2018年11月21日

兎の眼(灰谷健次郎)

 灰谷健次郎さんの小説です。ゴミ処理場のある街の小学校を舞台に繰り広げられる人間模様を描いた作品です。
 灰谷さんは、『笑いの影』という作品が被差別部落への差別意識が強いとして問題視されたということがありました。この『兎の眼』の「処理所」というものも、多少被差別性を帯びており、どう扱うかはともかく、灰谷さんにとって一つのテーマなのかもしれない、という風に思いました。(『笑いの影』がどのようにそれを扱っているのか読んでみたいのですが、残念ながら世間に出回っていないようです。。)
 この作品では処理所は「下町の温かみ」のような、好意的なイメージで描かれています。終盤の処理所移転関係の話では、公の一方的な通告に子供達の安全な通学する権利を訴えている様子が描かれています。この辺りの描かれ方に灰谷さんの思想、イデオロギーが透けて見えたり。
 社会的な側面ばかり書いてきましたが、物語の筋はわかりやすく明快で、とても生き生きとした児童文学らしい児童文学です。登場人物もそれぞれが個性的で魅力的であります。モヤモヤとした社会への批判意識を内在し、それを露わにしながらも、爽快でえぐみのない物語が作られているのがこの作品の魅力的なところだと思います。
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2018年09月04日

小公女(フランシス・ホジソン・バーネット)

 フランシス=ホジソン=バーネット作の有名な児童文学です。曾野綾子訳の講談社・青い鳥文庫のものを読みました。
 名高い作品ですが、恥ずかしながら読んだのは、おそらく初めてです。

 児童文学とみなされる作品には、主人公が積極的に行動を起こし、自ら活路を切り開いていくというお話が多い気がしますが、このお話の主人公・セーラは少し違います。お金持ちのクルー家に生まれ、父の死により小間使いに転落し、父の友人との接触によって再び裕福になると言う風に、物語は主人公ではない外在的な営力によって進行されていきます。セーラは、気高き気丈な心と豊かな想像力をもってそうした運命に耐え、それらを導いているのです。物語・主人公がまさしく「運命」によって動かされていると言えるでしょう。
 受動的な展開ではありますが、だからこそこの作品のテーマである主人公の気高さ・気丈さが引き立っている気がします。気高さ・気丈さは「運命」と相性の良いテーマだと思います。

 また、セーラは屋根裏の自室で、粗末な部屋をバスティーユの監獄や豪華な部屋にいる「つもり」になる空想遊びをし、辛い気持ちにならないようにしていました。これは、粗末な、殺風景な部屋であるからこそできることだと思います。装飾も何もない、「意味」の削がれた空間であるからこそ、想像によって「意味」を付与したくなるのでしょうし、そうできるのでしょう。屋根裏部屋はセーラの想像力を活かすには良い環境であったと言えるでしょう。


 そういえば、小学生の時分、「小公女・セーラに似ている」と同級生に言われたことがやけに記憶に残っています。それはどのような文脈で、どのようなニュアンスで言われたことだったのかは、全く思い出すことはできないのですが……。
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2018年08月23日

いわさきちひろの絵と心(松本猛)

 下鴨の古本市で購入した一冊。いわさきさんの絵と彼女のご子息・松本猛さんのエッセイから構成されています。
 いわさきさんが絵を描かれた絵本は、幼い頃そうと気づかず何度も読んだことがありましたが、最近ふとしたきっかけでいわさきさんのことを再認識しました。淡い色の水彩画で描かれた画風は今の感覚からしてもとても心惹かれます。彼女の描く子供達には、優しさの中にも、繊細で微妙な心の動きが現れている気がします。しばしば輪郭も曖昧で、色もパステルカラーを用いているからこそ、強すぎない、絶妙な心情の表出をなし得ているのでしょうか。

 松本さんのエッセイでは、いわさきさんの生涯や芸術理論が書かれており、これを読むことでより絵を深く感じられるようになった気がします。特に、彼女が共産党員
であり、議員の妻となっていたことには画風とのギャップに衝撃を受けましたが、水彩画の中に滲む意志の強さや社会的なテーマの絵(「戦火の中のこどもたち」など)があることを思い出だすと、それも納得です。
 また改めていわさきさんの描いた絵本を読んでみたいな、と思いました。
 この本に収録されている作品の中のお気に入りは、「かさと少女」、「たけくらべ」美登利、「枯れ草の中の少女」です。
posted by みさと at 18:01| 奈良 ☁| Comment(0) | 読書(児童文学作品) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする