2014年09月28日

こころ(夏目漱石)

 夏目漱石さんの長編小説です。

あらすじ
 私は海水浴で「先生」と出逢い交流を始めた。先生は奥さんと二人で隠棲のような生活を送っていた。私は毎月雑司ヶ谷の友人の墓にお参りする先生の過去に興味を持ち、聞き出そうとするが、いつか話す約束をして断られる。
 あるとき、前から腎臓の病を煩っていた父の容態が悪しいと連絡を受け、実家に帰るが……。




 学校の課題で読めと言われたのですが、思いのほか面白くて二、三日で読み切ってしまいました。さすが名作と言われるだけあって、確かに古さは感じるのですが読みにくい古さは全く感じません。

 エゴイズムが主題。明治から今と同じようなことが言われていたことに驚きです。平凡な小説は教訓が押し付けがましいことが大井ですが、この小説はそんなことはなく嫌味を感じません。これを読んで、自分の自分勝手さを見つめ直す良い機会となりました。
 危篤のお父さんを放って既に死んでいると思われる先生の元に向かう「私」もかなり自分勝手ですよね……。利己を戒めるはずの手紙が利己的行動のきっかけとなってしまうというのは皮肉に感じます。
 先生のKに対する気持ちが本当にリアルです。自分より優れた人間に嫉妬するというのはよくありますが、僕自身一歩間違えば先生のようになってしまいかねないなと思いました。少しの利己心で人の人生を奪い、自分の人生も無駄にしてしまうことがあると思うと恐ろしいです。

 漱石は以前読んだ「三四郎」があまり面白く感じられなかったので敬遠していたのですが、またたくさん読んでみたいと思いました。「夢十夜」辺り図書館で借りようかな。

評価:AA
posted by みさと at 18:27| 奈良 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書(近代文学作品) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年07月06日

三四郎(夏目漱石)

 夏目漱石さんの恋愛小説です。

あらすじ
 熊本から上京してきた三四郎は、都会の街・学問・女性に驚かされ続ける。未知の匂いを放つ東京で出逢った友人たちの中に、ひときわ輝く女がいた……。




 久々に明治文学を読みました。古い小説の割には、割と読みやすい類に入ると思います。ほろ苦い青春悲恋の話ですが、この小説みたいに比喩とか使った恋愛表現なんてとてもできません。その点、ちょっと感情移入しにくかったのですが、恋愛でかっこいい比喩を使えたら気障やけどかっこいいな、と思います。まあ、現実の恋愛なんてそんなこと考える余裕もないかもしれないですが……。
 三四郎からにじみ出る青さが自分や友人に重ね合わされました。三四郎という若者像は、かなり普遍的なものだと思います。

評価:B
posted by みさと at 23:04| 奈良 ☔| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書(近代文学作品) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年03月12日

赤い繭(安部公房)

 本日、中学校の最後の国語の授業で、安部公房の『赤い繭』を読みました。この記事を日記に入れようか読書に入れようか悩んだけど、一応読書にします。

あらすじ
 おれは帰る家がない。帰る家を探している。夕暮れの街路をさまよううちに、自分の左足の先が絹糸となっていることにきづく。絹糸は勝手にほぐれていき、おれのからだは消滅しその絹糸は空っぽの繭となってしまった。繭となり踏切とレールの間に落ちていた俺は彼に拾われ、彼の息子のおもちゃ箱に入れられた。



 読み終えて頭の中は「何だこりゃ?」という思いでいっぱい。一体どういうこと? 先生は皆が読み終わったところで、問いを出してくれました。「最後に繭を拾った『彼』は誰か?」
 この回答は割とすぐに分かりました。「彼」は「おれ」。そう考えた理由を文章化しようとしている(というより、何故自分がそう考えたか考えている)最中に問いのヒントが出ました。「この文章の視点を考えよ」。最後の方の文章に、彼の考えが主観的に(「おれ」が考えているように)書かれているから、ということですね。正答が出たところで先生は、夕方だけが「おれ」で、他の時間はずっと「彼」である

 さて、この後。「彼」が「おれ」であるなら、「帰る家がない」とはどういうことか、という問いが出されました。相談OK、定まった答えはなし、で。
 初めの問いが分かった段階で、この答えって一つしかないんじゃないのかな……、と思いましたが、友人と相談するとそうでもないようでした。相談した友人は「ユダヤ人が〜」という、私がただの比喩としてスルーしたところを突っ込んできました。
 そして、先生が生徒を当てる時間。一人目、二人目はほぼ同じ答え。私はこれを聞いて驚きました。一人目は「主人公は恐妻家。家では妻におさえられる」と。二人目は「主人公は離婚している。家はあっても家庭はない」という意味のこと。そんな考え方もできるんや、と思いました。特に二人目はなるほど、と思いました。
 三人目、私が当てられました。私が考えたのは「『おれ』は普段、職場でも家庭でも"キャラ作り"をしていて、ありのままの自分は一人でいる夕方しかない」ということ。すべての人にそう思った経験があるのではないでしょうか。私もあります。私の場合は、家庭と学校であまり変わらないと思います。しかし、そのどちらも演技で、さらに一人でいるときも自分に演技しているのではないかと疑ってしまいます……。ひょっとしたら、誰も本当の自分なんていないのかもしれません。現代人を象徴した小説だと思います。
 ちなみに、先生の解釈は私と表現は大分違いますが、意味は殆ど同じだったそうです。私の考え方は割とスタンダードだったのかな?
 ネットで検索してみると、さらにいろいろな解釈がありました。こういう物語は人によって解釈が変わるのが面白いですね。

評価:A
posted by みさと at 21:28| 奈良 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書(近代文学作品) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年09月18日

山椒大夫・高瀬舟(森鴎外)

 森鴎外さんの短編集です。収録作品『杯』『普請中』『カズイスチカ』『妄想』『百物語』『興津弥五右衛門の遺書』『護持院原の敵討』『山椒大夫』『二人の友』『最後の一句』『高瀬舟』です。

あらすじ
『杯』 七人の娘が大きな銀の杯を用い、泉から水を飲んでいた。そこに外国人の娘がやって来て、水を飲もうとするが…。

『普請中』 渡辺参事官は知り合いの外人女性を普請中のホテルで歓待する…。

『カズイスチカ』 花房医学士は卒業する前から父の元で代診の真似事をしていた。腫瘍が出来たと言う女性を診療するが…。




 途中までしか読んでいません(H23.9.18時点で『カズイスチカ』迄)。物語自体は嫌ではないのですが、文章が好きになれません。文章中に頻繁に仏語を入れる、というのはちょっとね…。一々註釈を見なければなりません。 『カズイスチカ』など、普通の文章なら喜んで読むのでしょうが。
 読むのが苦痛と感じたのも久しぶりです。『妄想』を読書中、註釈を見ながら読むのに耐えられなくなって読むのを止めました。現在は口直しに綾辻行人さんの『水車館の殺人』を読んでいます。『山椒大夫・高瀬舟』の続きはまたその後で読むつもりです。
posted by みさと at 22:54| 大阪 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書(近代文学作品) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年07月04日

藪の中(芥川龍之介)

 芥川龍之介さんの短編集です。収録作品は『藪の中』『羅生門』『地獄変』『蜘蛛の糸』『杜子春』『鼻』です。

あらすじ
『藪の中』 藪の中で、胸を刺された男の死体が発見された。関係者達は自分の知っている事を供述するが…。

『羅生門』 世の中は荒れきっていた。職を失った正義感の強い下人は、羅生門にたたずむ。寝る場所を求めた彼は、羅生門の楼の上に登ったが…。

『地獄変』 良秀という絵師がいた。色々な噂を持つ彼は、大殿に地獄絵を書くように命じられたが…。

『蜘蛛の糸』 犍陀多という罪人が地獄にいた。御釈迦様は、彼が一生に一度だけ良い事をしたということを思い出し、極楽の蜘蛛に糸を垂らさせる…。

『杜子春』 昔裕福だった男、杜子春。彼は今、落ちぶれ貧乏になってしまった。途方に暮れている所である老人と出会うが…。

『鼻』 禅智内供の鼻は非常に長い。彼はその長い鼻を気にし、色々と直す努力をする。ついに鼻を短くする事に成功したが…。




 なんとなく純文学が読みたくなったので。
 『藪の中』は推理小説のような展開でした。誰が本当の犯人なのか分かりませんでした。ひょっとして、これは「ご自由に想像下さい」というパターンなのか…。宮部みゆきか誰かの小説にこういう形式のようなものがあった気がします。
 『羅生門』は本当に後味の悪い作品でした。たった11頁の中にここまでの内容を詰め込めるとは…。さすが芥川さんですな。
 『地獄変』はこれらの短編の中で一番読むのに時間がかかりました。結構恐ろしい話でした。
 『蜘蛛の糸』は、何回か読んだ事のある作品です。何度読んでもやはり良い作品です。
 『杜子春』は教訓めいた話ですな。教訓めいているのに、何度も読み返したい作品です。
 『鼻』も何度か読んだ事があります。人間の考えを的確に指摘しています。

評価:AA
posted by みさと at 19:35| 奈良 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書(近代文学作品) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする