2018年01月27日

わたしはここにいる、と呟く。

 新津きよみさんの短編集です。収録作品は『わたしを探して』『時のひずみ』『あなたの居場所』『忘れはしない』『思い出を盗んだ女』『あの日あの時』『その日まで』です。
 ザ・新津作品と言った感じの日常系ミステリ集です。一応ミステリに分類されるのか、ノンジャンルと言うべきか。作品に登場する人物の立場は様々ですが、総じて30代後半くらいの女性が多く、子供や認知症に向かっていく老人のモチーフも頻繁に登場しています。新津さんが執筆当時この年代だったのか、この年代の体験が大きな記憶に残っているのでしょうか。
 他の短編集であったような、ゾッとする、と言うほど怖い作品はありません。少し後味が悪かったり、あるいはホッとするような作品もあります。
 『時のひずみ』は、探し物が得意な奥さんの話。そんな奥さんがどうしても見つけられないものがあって、、、と言うあらすじです。子供の健気な行為が、温かな気持ちになれます。
 作品展開的にドラマチックで好きなのが、『思い出を盗んだ女』『あの日あの時』の二作品。過去と現在の偶然の符合が見事な形で現れます。

 この作品は、と言うほどものすごく大好きな作品があったわけではありませんが、どの短編もコンパクトな佳作揃いで、試験期間中の良い息抜きになりました。
posted by みさと at 18:06| 奈良 ☀| Comment(0) | 読書(新津きよみ) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年08月23日

フルコースな女たち

 新津きよみさんの短編集です。収録作品は『転落――食前酒』『ゼンサイのような女――前菜』『散骨――スープ』『水難の相――魚料理』『薬――お口直し』『男狩り――肉料理』『スイーツ・バイキング――デザート』『マタニティ・メニュー』です。

あらすじ
 陶芸家、ハンター、料理人である三人の女は、富永英作という男をそれぞれ憎んでいた。三人はふとしたことで知り合い、男を殺す計画を立てるが…。(男狩り――肉料理)




 久々に市立図書館で本を借り、久々に読んだ新津作品。料理にまつわった後味悪い系のお話が満載です。この感じ、懐かしい。
 一番印象に残ったのは「散骨――スープ」です。粉骨された「骨を飲む」という人間の倫理観を絶妙に利用した描写。しばしばミステリに出てくる人肉食というのは、見た目にもグロテスクですが、粉になった骨を飲むというのは見た目のおぞましさを伴わないがゆえの気味悪さを感じます。スープとの結びつき方、落としどころも秀逸です。
 他のお話も総じて佳作揃い。後味悪いお話を「食」と結びつけているところに作者の皮肉を感じます。コース料理のように、ぜひゆっくり味わって読んでください。

評価:B
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2015年07月28日

情動

 新津きよみさんの短編集です。収録作品は『女友達』『愛甥』『別居』『義理の兄』『ステップファミリー』『実家』『ひとり』です。

あらすじ
 美登利は敏子と歌舞伎を見に来ていていた。敏子は別れた旦那・圭一の母親で、嫁姑時代から着物の着付けを教えてもらっていた。別れた後それで縁が切れたかと思ったが、着物で歌舞伎を見にいこうという誘いが来て、それからしばしば一緒に行っている。二人の奇妙な関係を、美登利の妹などは「キモい」などと表現するが…。(女友達)




 久々の新津さんの作品。そして、久しぶりにたった二日で読了した一冊です。中学生の頃などそれが普通でしたが、受験生としては中々そのようなことも残念ながらできずにいました。
 全て家族にまつわるストーリーです。いずれも非常に短いながら、嫉妬、妄信、憧憬、絆、愛着などなど様々な人間感情が、少しねじくれたというか。狂気を帯びて感じられます。しかし、現実の人間に思考を至らしめてみると、実際この小説に描かれているように、人間感情はねじ曲がって、複雑に絡み合って、狂気じみている気がします。
 新津さんを読むといつでも思うのですが、人間の感情の暗がりを描かせると本当に新津さんは当世随一ですよね。短い一編一編の小説群は、それぞれ現実世界を濃縮した傑作ばかりです。この「家族」というテーマはこの新津さんの作風によく合っていて、新津さんの魅力がよく現れた一冊だと思います。
 おすすめはねじれた愛情、愛着が強く感じられる『愛甥』『義理の兄』、少し毛色は違いますが『ステップファミリー』です。ぜひ、みなさん読んでみてくださいね。

評価:AA
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2013年08月16日

ルーム

 新津きよみさんの長編サスペンス小説です。

あらすじ
 仕事一筋の奈央子は母親との同居問題で悩んでいた。確実に老いていく母親。遠く離れた名古屋の姉は頼れない。福島の郷里に戻って暮らすか、母を東京に呼び寄せるか……。
 同じ頃、友美は、姉理美がくも膜下出血で危篤だとの連絡に接した。長らく連絡をとってなかった賢かった姉。間もなく理美は息を引き取る。友美は理美のマンションの荷物を整理することに成ったが、そこで幼児の白骨を発見してしまう……。




 ショッキングなはじまりですが、新津さんお得意の日常の謎から大きく逸脱していないところが、残念なような、よかったような……。それにしても、遺品整理で骨が出て来たらパニックになるだろうな……。
 兄弟姉妹も離れてしまうと情が薄れてしまうのでしょうか。私も妹がいますが、将来疎遠になるのかな、と思うと不思議な感じです。
 死人に口なし、というように死んでしまった人には、永遠に話されることのない秘密があるのかもしれないのですね。秘密なんて、気になるけど、知らない方が良い様なことも多いかもね。

評価:B
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2013年08月12日

トライアングル(再)

 新津きよみさんの長編サスペンス小説です。

あらすじ
 小学校四年生の児童、葛城佐知恵が誘拐され、殺された。主人公、郷田亮二の初恋の人だった。
 郷田亮二は医師になったが、葛城佐知恵殺人事件の時効が過ぎると刑事になり、事件を自分でも追いかけることにした。そんな亮二の前に、葛城サチと名乗る女性が現れる。葛城サチの正体とは……? 事件の真相とは……?




 これも二年か三年前に読んだものの再読です。古い記事を読むと、めっちゃエラそうに書いてるな、と恥ずかしいです。基本文章がえらそうなんですよね、私。ほんとに、恥ずかしい……。
 さて、この小説がなかったら、今の自分はなかったのではないか、と言うほど私に強い影響を与えてくれた小説です。小説とドラマで、結末が違うと言うのがショッキングでしたし、これをきっかけに興味を持った人物たちも数多くいます。新津きよみを筆頭に、江口洋介、広末涼子、北大路欣也、小田和正……。
 この本の一番大きなテーマは、「誰かの身代わりではなく、自分の人生を生きているか?」ということですね。自分だってひょんなことで誰かの代わりを生きることになるかもしれません。誰かの分まで生きる、というのは良いことだと思いますが、自分を押し殺さないといけないというのは、とてもつらいです。
 また、人が一人死ぬということは、大勢の人生を変えてしまうということ。特に殺人や、不慮の事故、自殺などは特にそうだと思います。ひとの死が辛くない人なんてどこにもいないです。本当に。ですから、殺人や自殺などは絶対にいけない。後、大勢の人が亡くなる戦争なんて、特に。本当にそう思いました。
 ドラマも小説も、再読なのに涙が出てしまいました。ほんとに、皆に一番読んでもらいたい小説ですね。

評価:AA
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2012年06月24日

ひとり

 新津きよみさんのホラーサスペンスです。

あらすじ
 14歳の桃子とすみれは二人でバスを利用した小旅行に出かけた。ところが、そのバスは谷底に転落し、二人は大けがを負う。救助を待ったが、すみれは「わたしの分まで生きてね」と言葉を遺して息絶えてしまった。
 その後、桃子は自分の中にすみれが生きているような感覚を得た。
 桃子が32歳の年、都内で連続女性殺人事件が起こるが……。




 『左手の記憶』収録の『奇跡の少女』を土台に踏んだような作品でした。
 ホラーと言いつつもサスペンス色の濃い作品。幽霊も出てきますが、恐ろしいのは犯人の狂った心情でした。あんなことをされたからと言って……と思うのは、やはり私が強烈なその手の経験をしていないからなのでしょうね。
 ネタバレ・反転→桃子は「頭に怪我をして、顔に血を流して、服を泥だらけにした」すみれと十八年間一緒だったのですね。少し恐ろしい気もしますが、それを恐れないのはやはり友情なのでしょうか。

評価:B
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2012年06月21日

指名手配 特別捜査官 七倉愛子

 新津きよみさんのサスペンス小説です。

あらすじ
 海外で離婚し、日本に帰ってきた靴好きな女・七倉愛子。彼女は帰国後、警視庁の雑踏捜査班に就職した。彼女は生まれつき備わっている絶対音感と海外で習得した数々の言語を活用して、指名手配犯を雑踏の中で探す……。




 『トライアングル』の関連作です。それなりに重要な役割として郷田亮二が出てきます。
 純粋なサスペンスですが、やはり人物の心情描写に重きを置いているのが感じられました。特別気に入ったという点はありませんでしたが、誰にも好き嫌いされないと思える小説でした。

評価:B
posted by みさと at 12:32| 大阪 ☔| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書(新津きよみ) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年06月14日

トライアングル (再)

 新津きよみさんの長編小説です。

あらすじ
 小学校四年生の児童、葛城佐知恵が誘拐され、殺された。主人公、郷田亮二の初恋の人だった。
 郷田亮二は医師になったが、葛城佐知恵殺人事件の時効が過ぎると刑事になり、事件を自分でも追いかけることにした。そんな亮二の前に、葛城サチと名乗る女性が現れる。サチの正体とは…? 事件の真相とは…?




 図書館でこの作品の関連作を見つけ、それを借りるついでにこの『トライアングル』も借りました。この小説はサスペンス性が強いですが、他の作者のサスペンスと比べて心理描写に重きをおいているような感じがしました。 以前読んだとき(平成23年4月)は大いに感銘を受けたのですが、最近、他の新津作品をよく読んでいるので、それらに比べると見劣りするように感じました。他の新津作品の感動にはやや劣る作品と感じました。
 この小説は郷田亮二と事件時の小学校担任・藤崎俊子の二人が視点となって物語が進むのですが、ここに作者の特徴がよく表れているように思えました。俊子視点のときは他の作品と遜色ない、人物の感情がよく伝わってくるのですが、亮二の視点になった途端、それが消えてほかの作者の作品と同じような並の小説になるのです。新津きよみ氏は女性心理のベストストーリーテラーだとは思うのですが、男性心理に関してはそこまでの書き方はできないようです。やはり異性の心を理解することはできないですからね……。

評価:B
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2012年06月02日

彼女の命日

 新津きよみさんの長編小説です。

あらすじ
 楠木葉子は通り魔の強盗により殺された。頼りにならない妹と病弱の母を残して。
 しかし、殺された日から丁度一年目に、彼女は山手線に揺られまどろんでいた妊婦・渕上早苗の体を借りてこの世に帰ってきた。最初は戸惑っていた葉子だが……。




 新津さんらしい、心情がよく描かれた物語でした。段々と厚かましくなっていく葉子や、一日を奪われ人生を変えられる"家主"の危うさを見てハラハラした気分になりながら読みました。
 設定はファンタジックですのに、やけに現実的に感じるところがこの作者の特徴ですが、この作品はそれを体現しているように思えました。結構好きな作風なので、また彼女の作品を続けて読もうと思います。

評価:B
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2012年05月26日

スパイラル・エイジ

 新津きよみさんの長編小説です。

あらすじ
 前島美樹の家に岩井雪乃が突然訪問してきた。雪乃の弟・達也が24年前に金魚すくいで取った金魚を見に来たと言った。彼女は長寿の鯉のような金魚の前で、とんでもない告白をする。男を殺したと言うのだ。美樹は温情を持って一日だけ雪乃を泊めるが……。




 心情を上手く描いた小説だという印象を受けました。女性の心の動きが物語の中心にきており、女の恐ろしさがよく伝わってきました。全く人殺しを悔いない雪乃、彼女を結局庇うことになる美樹、そして詳しいことは書きませんが暁子達。少し気分が悪くなるほどの恐ろしさがありました。
 お化けが恐い、動物が恐い、などと言いますが世の中で一番恐ろしいのは人間かもしれませんね。冷静さを失うと悪魔のようになってしまいますし……。

評価:A
posted by みさと at 00:00| 大阪 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書(新津きよみ) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする