2013年09月02日

霧越邸殺人事件

 綾辻行人さんの長編推理小説です。

あらすじ
 作家の私・鈴藤稜一は劇団「暗色天幕」の一団とともに下山中吹雪に襲われ、遭難寸前の状態になってしまった。そんなとき、丁度湖畔の大きな屋敷にたどり着く。屋内にあげてもらった一行だが、雪は続き外界との連絡も絶たれる。数日滞在することになったが、一行の一人が童謡に見立てられ殺される……。




 閉ざされた雪の山荘、見立て殺人、アリバイ、怪しげな館の住人……と、本格ミステリの「いかにも」な道具立てがそろった作品です。学校の国語で、丁度庭の「見立て」について習っているのですが、日本人の本能として見立てには魅かれるみたいです。見立てがあるだけで、価値が増して感じられますね。
 完全な本格派ですが、綾辻さんお得意の、ホラーの気配が感じられます。陰鬱とした館の中は、まるで別世界みたいだとふと思いました。

評価:B
posted by みさと at 19:29| 奈良 ☔| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書(綾辻行人) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年05月02日

黄昏の囁き

 綾辻行人さんの長編ミステリです。

あらすじ
 一人の青年がいた。彼はマンションで暮らしていたが、夜中に突然の訪問を受ける。客を迎え入れた彼は、突如襲われ、窓から転落する。
 ーー津久見翔二は兄の訃報を効き、故郷の栗須市に帰って来た。彼は兄の死に不審を抱き、兄の元予備校講師の占部と協力し、調査を始める。
 その最中にも、第二・第三の死者が現れるが……。




 やっぱり囁きシリーズは良いです。ほんとによくできたホラーとミステリの折衷作品です。
 どこにも幽霊とか、そういうたぐいのものは出てこないのですが、どこか怪奇小説のような狂気を感じさせます。素晴らしいのは、ミステリとして弱いのをホラーで補っているのではなく、どちらとしても傑作の、二倍増しのような密度の物語。
 綾辻さんの作品全体に言えることですが、自分が主人公に同化することに、なんと言いますか、気味悪さを感じるのです。普通の感情移入とは違って……。この感覚、一回読んでみたら分かると思います。囁きシリーズで顕著ですが、『フリークス』『Another』などでも中々ですよ。
 綾辻さん、『十角館の殺人』のような純ミステリも良いですが、このようなホラーまじりの作品の方が素晴らしいと思います。

評価:A
posted by みさと at 21:01| 奈良 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書(綾辻行人) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年01月14日

最後の記憶

 綾辻行人さんの長編ホラー小説です。

あらすじ
 僕・波多野森吾の母・千鶴は白髪痴呆と呼ばれる病気にかかった。だんだん薄れていく記憶。最後まで残るのは、幼い頃に経験した強烈な記憶。母の場合、それは恐るべきものーーショウリョウバッタの羽音、白い閃光、子供達の悲鳴。しかし、僕にはその記憶の正体が分からない。
 白髪痴呆は、遺伝の可能性が高い病気だと言う。そのことを知った僕はたまたま再会した大学の同期・藍川唯とともに、最後の記憶の正体を探る……。




 なんとも不安をあおる小説です。『フリークス』『Another』と言い、綾辻行人氏はホラーの方が上手かな、という気がしてきました。ミステリでも『緋色の囁き』などホラー要素が入っているものの方が秀逸ですし。まあ、『眼球綺譚』みたいなのは勘弁ですが……。
 母の病気が自分にも……と恐れる描写が秀逸で、思わず全て黒いはずの自分の髪の毛に手をやってしまうほど……。主人公の精神が不安定になっていくとともに、熱中具合も強くなっていきました。後に読んだ解説から察すると、「白髪痴呆」という病気はないようですね。一安心。そんな病気がほんとにあったら、一本でも白髪があったら怯えてしまいます……。
 ラストシーンは、心の動きこそ沈静化しますが、最後まで不安感が消えることはありませんでした。

評価:A
posted by みさと at 14:15| 奈良 ☔| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書(綾辻行人) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年08月14日

フリークス

 綾辻行人さんの中編集です。収録作品は『夢魔の手ーー三一三号室の患者ーー』『四〇九号室の患者』『フリークスーー五六四号室の患者ーー』です。

あらすじ
『夢魔の手ーー三一三号室の患者ーー』 大学受験三浪目の僕は精神科病棟の三一三号室に入院している母の見舞いに来た。母は一年前、突然発狂し、父を刺殺し、僕まで殺そうとして捕まり、ここに入院させられている……。
『四〇九号室の患者』四〇九号室の患者の入院原因は自動車事故である。打撲・骨折以外にも炎上した車でやけどをした。顔に包帯を巻かれた患者は自分が誰かということに疑問を持つが……。
『フリークスーー五六四号室の患者ーー』 作家の私は知り合いの精神科医・桑田智香子女史に一つ原稿を渡された。それは五人のすおう年少女に奇形化手術を施したある醜いマッドサイエンティストJ・Mの話。原稿J・Mを殺したのは誰かという推理小説の問題編のような締めくくり方をしていた。犯人が分からなかった私は友人の探偵に相談するが……。




 読んでいて混乱してくるような小説でした。特にそういう描写がなくても、どこかグロテスクな感じがしました。
『夢魔の手』は一話目ということもあり、読み終わった後酷くショックを受けました。ここが表か裏か、よく分からないものになってきました。ひょっとしたら今本を読んでこういう感想を持っているのさえも幻想かもしれない、と。
『四〇九号室の患者』の結末は何となく分かっていました。この一冊の中で一番アクが少ないように思えました。
『フリークス』 前二話はなんとか分かりましたが、この話の締めくくり方に釈然としないものを感じました。私の読解力を超越していて、どのような感想を書いたら良いのか……。

評価:B
posted by みさと at 16:29| 奈良 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書(綾辻行人) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年08月03日

Another(上・下)

 綾辻行人さんの長編ホラー小説です。

あらすじ
 東京から夜見山市の夜見山北中学校に転校することになったぼく・榊原恒一。しかし、新生活のはじめとなるはずの日にぼくは持病の気胸を発症してしまい、再入院してしまう。そんな中、エレベーターで左目に眼帯をした少女と出会う。見崎鳴と名乗った彼女は同じ三年三組の同級生だった……。
 学校に復帰したぼくはクラスの雰囲気に違和感を覚える。皆、鳴がいないものであるかのように振る舞うのだ。見崎鳴は実在するのか? そんな疑問を抱いているさなか、クラス委員長の桜木が衝撃的な死を遂げた。皆は自分に何を隠しているのか? このクラスでは何が起こっているのか……?




 雰囲気としては『囁き』シリーズに通ずるところがありますね。結構好きな雰囲気です。映画化、アニメ化、漫画化もされているそうです。
 物語に引き込まれ、半日で上下とも読み切ってしまいました。比較的若い人がターゲットであったらしいだけのことはあり、読みやすかったです。
 ホラーとしてはそこまで魅力的とは言えませんでしたね。スプラッタ・ホラーの面も結構強い。結末を読めば分かるのですが、ミステリの面もあります。とは言え、ミステリ部分だけでも消化不良の感は否めないでしょう。二つの要素のミックスがこの作品を良作にしていると思いますね。
 前半は鳴はいるかいないか、後半は「現象」にどう立ち向かうかということが中心に話が進んで行きます。前半の、榊原の微妙な心理も中々良かったですが、後半のミステリらしい展開に心が奪われました。トリックは何となく想像がついてはいましたけれども、それでも心が躍りました。まあ、綾辻さんらしいトリックですね。
 咲谷記念館って……。『眼球綺譚』の咲谷由伊を思い出しました。

 読み終わった後、他のメディアの『Another』がどんなものかインターネットで調べてみました。
 アニメはキャラクターに重点を置いているのがよく分かりました。クラス30人全員に名前って凄いですよね。その名前、全部作中に出せるのかなぁ……。ちょっと気になったので全ての名前をチェックしてみると気になる名前が出てきました。「辻井雪人」です。どっかで見覚えのある名前、と思って記憶のひだを探ってみたら、『人形館の殺人』の登場人物です。確か作者の名前をもじってつけたというやつですね。彼が物語にどんな絡み方をするのか気になります。
 映画版のサイトは、一部原作のネタバレをしているので注意! 映画は実写なので致し方がないですが……。また、原作を読んでイメージした人物像と実写のキャストのギャップが結構ありました。望月ってもっと優しい顔だと思っていましたし、風見ももっと典型的な優等生を想像していました。一番驚いたのは和久井。女やったんやぁ……と。考えたら性別を表す描写なんてなかったかもしれませんね。男だというのはただの思い込みにすぎないんでしょうけど、頭の中で思い浮かべていた映像とあまりにも違ったので……。一転、勅使河原や赤沢、桜木の配役はうまいと思いました。ちなみに、人物相関図で「山田優」だけ全く記憶に残っていませんでした。すぐに死んだ端役か何かの扱いを大きくしたのでしょうか……? 映画は近く見に行くつもりです。

 以下ネタバレです。反転させて下さい。
 怜子と三神先生が同一人物。文章媒体の小説だから巧くいきましたが、映像ではどうするんでしょう……と思って色々インターネットで検索してみました。
 アニメはキャラクター紹介のところに怜子も三神も載っていましたが、うーんと首をひねりたくなりました。どう見ても別人です。巧くいくのかなぁ……。
 映画ははじめからばらしているみたいですね。登場人物に「三神怜子」とありました。小説を読む前に映画のホームページを見た人は可哀想としか言う他ありません……。
 それにしても、職員室から机が消えているんだったら誰が死者か分かりそうなもんですが……。


評価:B
posted by みさと at 19:59| 大阪 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書(綾辻行人) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年02月11日

殺人方程式 切断された死体の問題

 綾辻行人さんの長編推理小説です。

あらすじ
 新興宗教「御玉神照明会」の教主・貴伝名剛三が殺された。彼は最近不審死した前教主からの引き継ぎの為、「お籠もり」をしている最中であった。しかし、彼の死体は付近のマンションで発見される。間もなく彼の義理の息子・光彦が警察に捕まるが…。




 良くも悪くも普通のミステリです。物語は平凡ですが、トリックが上手いです。
 法月綸太郎さんの『誰彼』によく似た物語だと思いながら読んでいたら、解説に同年に発表されたとありました。新興宗教とミステリというのは切っても切れない縁なのでしょうか…? 『誰彼』ももう一度読んでみようかな。

評価:B
posted by みさと at 13:37| 大阪 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書(綾辻行人) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年01月31日

黒猫館の殺人

 綾辻行人さんの長編推理小説です。

あらすじ
 鮎田冬馬と言う老人から推理作家・鹿谷門実に連絡があった。自分は記憶喪失になっていて、過去の手がかりとなるのは手記のみ。だが、手記には恐るべき事件が書かれていると老人は言う。鹿谷は手記を元に事件を考え、老人の記憶を取り戻そうとする…。




 非常にダイナミックなトリックでした。所々違和感は感じていましたが、伏線だと見抜くことはできませんでした。真相を明かされて初めて仕掛けられた伏線が膨大な数だと言うことが分かりました。私が鈍感に過ぎるということか…。
 貴方もこの地球規模のトリックをお試しあれ。

評価:B
posted by みさと at 22:33| 大阪 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書(綾辻行人) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年01月07日

眼球綺譚

 綾辻行人さんの短編集です。収録作品は『再生』『呼子池の怪魚』『特別料理』『バースデープレゼント』『鉄橋』『人形』『眼球綺譚』です。

あらすじ
『再生』 私・宇城の妻・由伊は結婚前、咲谷由伊と名乗っていた頃に自分の秘密を打ち明けた。それは、恐ろしい特異体質のことであった…。結婚して暫くした後、由伊の脳が病に侵されていることを知った。そして、ある事件をきっかけに私は…。

『呼子池の怪魚』 大学非常勤講師の私は、ふとした思いつきで呼子池で釣りをすることにした。餌を忘れていた為、針に何もつけずに糸を垂れていたが、驚くべきことに魚が釣れた。その魚は、見たことも無い、奇怪な魚であった。私は何となくそれを飼うことにした。最初は拒絶反応を示していた妻の由伊も、段々魚に愛着を持ってきているようだった。だが、そんな時魚に変化が起こる…。

『特別料理』 わたしはゲテモノ喰いを趣味としている。咲谷辰之介という紳士に勧められ、妻の可菜とともにYUIと言う店に入った。その店では、特別料理と称してゲテモノを喰わす店である。私達はそこを気に入り、度々来店するようになった。ある日、店長が我々と話したいと対談したいと言ってくるが…。

『バースデープレゼント』 私・由伊の誕生日は12月24日。今日、24日はプレゼントを持ち寄って友人達とクリスマス会をする予定。昨夜見た夢が気にかかるのだが…。

『鉄橋』 小泉秀武・咲谷由伊・柳瀬ひとみ・剛田喜一郎は列車の中で怪談を話していた。もうすぐ女神川鉄橋に差し掛かろうとする時、小泉がその鉄橋についての怪談を話し始めた…。

『人形』 小説家の私は、退院後の養生の為、親や妹の由伊がいる家に帰ってきた。ふとした思いつきで、飼い犬のエルを連れて散歩に出かけた。散歩の途中、エルが人形を拾う。その人形は、顔がつるんとした、のっぺらぼうの気味の悪い人形であった…。

『眼球綺譚』 大学の後輩から郵便が届いた。そこには、「読んでください。夜中に、一人で」と書いた手紙と、小説の原稿が入ってあった。その小説は、眼球をえぐりとる為に殺す、猟奇殺人事件を題材とした物語であった…。




 綾辻行人さんのホラーは初めて読みました。かなりグロテスクな描写が多く含まれており、読むのがしんどかったです。江戸川乱歩氏のホラーを思い出しました。
 表紙からグロテスク。よく買う気になったもんです。
 咲谷由伊と言う同名の人物が全ての短編に出てきますが、同一人物ではありません。この存在、何か意味ありげなのですが…。
 『再生』ただグロテスク。由伊の最後の姿は想像するだに恐ろしい…。
 『呼子池の怪魚』これは中々巧い作品だと思いました。露骨にグロテスクな描写はないのですが、読者の想像力を喚起させて、グロテスクな未来を予想させています。ラストにはほっとため息。
 『特別料理』ゲテモノ喰いの描写がグロテスク。ラストは予想できたけど…。
 『バースデープレゼント』これはミステリらしい怪奇小説です。主人公・由伊の恐怖は尋常ではないでしょうが。
 『鉄橋』オーソドックスなホラー。これまでの作品で「慣れ」てきたので、あまり怖くありませんでした。
 『人形』これも王道を行く展開。作者の腕が試されるタイプの話ですが、結構楽しめました。
 『眼球綺譚』一番怖かった。前に収録してある三作品が普通の小説だったので安心していたのですが、またグロテスクな作品が入っていました。ホラーとしても怖いのですが、描写の異様さに唖然。少し気分が悪くなりました。
 読んで思ったのですが、やっぱり綾辻さんの本はミステリが一番ですね。

評価:B
posted by みさと at 16:08| 大阪 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書(綾辻行人) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年12月26日

時計館の殺人

 綾辻行人さんの長編推理小説です。

あらすじ
 百八の時計がコレクションされている館ーー通称時計屋敷。そこには幽霊が出ると言う噂がある。且つて多くの関係者が様々な理由で死に至ったからであろうか…? 幽霊の調査の為訪れた江南孝明をはじめとする綺譚社社員三人と瓜生民佐男ら五人の学生、そして霊能者の光明寺美琴。彼らに災厄がふりかかる…。幽霊の噂に隠された恐るべき謀略とは…?




 館シリーズ第五作です。非現実的なのか現実的なのかよく分からない作品ですが…、そいうところも夢の中の出来事のようで良いです。
 これはミステリアスな雰囲気の中起こる事件を描いたミステリ(二つの意味があってややこしい!)と言う点で同氏の『緋色の囁き』『暗闇の囁き』と似ています。一つ前に読んだ『人形館の殺人』よりもそちらに近い雰囲気ですな。とは言え、やはり館シリーズ。館に眠る大きな秘密がメインです。
 伏線がしっかりしていて、とても良い作品です。綾辻さんの代表作として推しても問題ないでしょう。

評価:A
posted by みさと at 20:27| 大阪 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書(綾辻行人) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年11月21日

暗闇の囁き

 綾辻行人さんの長編推理小説です。

あらすじ
 悠木拓也は烏裂野にある伯父の別荘に、卒論を書くために滞在することになった。そこで出会ったのは同じく山奥の屋敷に住む人々。東京から時折帰ってくる亭主・円城寺隼雄、過去の事件で唖となってしまった彼の妻・香澄、お手伝いの佐竹夫婦、隼雄の妹・雅代、隼雄の母・ハツ子、家庭教師・滝川遙佳、そして二人の「奇麗な」少年・麻堵と実矢。彼らの他、もう一人、「あっちゃん」と呼ばれる少年がいるようだが…?
 謎めいた屋敷の住人達の周りで起こる数々の事件。その周囲に漂う謎の影。その正体とは…?




 これまで読んだ綾辻さんの作品の中では一番好きです。
 魅力的な謎があり、ミステリとして申し分なく、少年達をはじめとする人物の心情表現も怠っていません。更には社会の風潮への抵抗が物語の合間から見え隠れし、すばらしい作品に出来上がっています。物語の主題が影響してか、ホラーに近い作品です。読んでいて紙をめくる手が止まりませんでした。

評価:AA
posted by みさと at 22:59| 大阪 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書(綾辻行人) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする