2016年12月12日

山怪 山人が語る不思議な話

 田中康弘さんの本です。山における不思議な話、怖い話をたくさん蒐集しています。何となく遠野物語を髣髴とさせるのですが、筆者の本職がらマタギにまつわるお話がかなりの割合で、内容も狐関係の話がやけに多い印象を受けました。あとがきで書かれていた蒐集方法を読むと、ああなるほど。作者はインタビューをするとき、呼び水としてここまでに蒐集した話を語ってみせているらしいです。
 内容に偏りがあるとはいったものの、やっぱり個々の内容は面白いです。そう遠くない昔の、名前の見える人の話だと思うと、かなりドキドキします。自分もどこかで不思議な体験に遭ってみたい気もしてきます(怖いから遭いたくないという思いもありますが…笑)。
なんだかんだ不思議な民話や怪談が好きな人にとっては十二分に楽しめる一冊だと思います。

評価:B
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2016年11月09日

コミュニティデザインーー人がつながるしくみをつくる

 山崎亮さんの本です。コミュニティを形成することで、長く人気の続く公園を作ったり、地域を活性化させてきた筆者の取り組みがつづられてきています。
 人がいなくなってコミュニティが消えるのではなく、コミュニティがなくなることで人がいなくなる。そのようなことが書かれており、考えてみれば当然のことではありますが、なるほど、と思いました。
 地域を守るためにコミュニティが必要だ、ということは地域活性化を考える人ならば誰もが思うことでしょうが、なかなかコミュニティを作る、ということは積極的に行われていないように思います。観光客誘致、地域でのお祭りや交流会などがあっても、その実践は極めて安直なことが多く、それで地域を活気づけるほどのコミュニティを形成できるかというとかなり疑問です。
 主体的な事業/地域の担い手を育てること。それが筆者の取り組みの根幹です。単発的なイベントや箱モノの建設などは、一時的に地域は賑やかになり、潤うかもしれませんが、その先に続くことは稀であります。そのイベントや箱モノを通して人々がつながり、コミュニティを形成していくことが必要なのです。そして、そのコミュニティが主体的に続くイベントや箱モノなどを運営し、地域を未来へ繋げようと動いてゆく。あくまで行政や事業者が行うべきものは、きっかけづくりなのです。

 私は高校時代から地域の活性化に取り組みたいといろいろ考えてきましたが、その内容は都市計画、教育制度、文化財保全などハード面のことが多くを占めてきました。この本を読んで新たな視点を得ることができたと思います。
地域の活性化を考える人にはぜひ読んでほしい一冊であります。

評価:AA
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2016年11月07日

女子と愛国

佐波優子さんのドキュメンタリーです。自虐史観的な教育に反し、「愛国」に目覚めた女性たちを描いています。
 図書館でなんとなく手に取った一冊。いわゆる「ネット右翼」の行う思考をそのまま表したような本でした。あまりにもステレオタイプにすぎ、逆側の立場を持つ人が皮肉的に描いたといっても不思議には思わないほどです。
 論理的に戦後教育などを批判するわけではなく、それらが批判されるべきものという前提で、女性たちが「愛国」に目覚める様子が描かれており、その時点で、同じような思想を持つ人に読者層を絞っていることがわかります。その目覚める理屈も同じ立場からきわめて主観的に眺めているため、いまいちよく理解できませんでした。
 外を説得させるのではなく、内輪で共感を持ちながら読むような本なのだろうなー、と思いながら読了しました。

 このような思想を見ていると、「国」というものが何なのかよく考えないまま「愛国」を叫んでいる人が多いような気がします。また機会があれば国家や「愛国」についての私見を改めて載せるかもしれません。

評価:D
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2016年10月11日

改訂新版 文化人類学

 内堀基光さん、奥野克己さんらによる教科書です。私は将来日本の過疎集落や衰退都市の地域活性化を行いたいと思っているのですが、そこに文化の保全というものが深くかかわってくることに気づき、文化人類学についても少し学んでみようと思ってこの本を読みました。
 ある程度文化の消失を覚悟して新規開発を行うにしても、今ある集落・都市の文化を活かして町おこしをするにしても、その文化を持っている人たちがどうしたいかを考えねばなりません。「文化」というものそれ自体移り変わっていくものなので、それを保全するとはいかなることかということも大きな問題です。文化相対主義は一見わかりやすい思想ですが、そのありかたについてもかなり奥が深いと思います。(また機会があればこのあたりの自分の考えをまとめて改めてブログに載せるかもしれません。)
 文化人類学をかなり広い観点から概論した一冊です。教科書というものはどうも読みにくいもので読了に時間はかかりましたが、学ぶことも多く、時間をかけて読んだ価値はありました。

評価:B
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2016年08月16日

遠野物語

 柳田國男さんの作品です。言わずと知れた遠野物語。民俗学のバイブル的存在です。小話が無数に連ねられている形式で、7月以来隙間時間に少しずつ読んでいって、先週やっと読了しました。
 淡々と遠野の伝承や文化、民俗を綴っているだけなのに、遥か遠い遠野が不思議と近しい存在に感じてきます。全くの異国のはずなのにどこか郷愁めいたものを感じるのです。
 大学生中に遠野へ旅行してみたいなぁ、とふと思ったり。大学で専門にするわけではありませんが、地元含め、いろんな土地の民俗を調べるのもやってみたいですね。

評価:B
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2016年08月14日

死者は還らず 山岳遭難の現実

 丸山直樹さんのルポルタージュです。山岳遭難の状況からさらに踏み込んでその背景となる心理状況にまで踏み込んで、事故の原因を考えています。私自身、大学のワンゲルで沢登りをしているため、かなり身につまされる内容でした。自分は死ぬほどの危機一髪、といった経験はまだありませんが、少し滑落しかけたことや一歩間違えば20メートル下へ真っ逆さまというところを木の根をつかんでトラバースしたことはあります。ああいう時、やけに冷静なんです。死ぬ時は「ああ、死ぬんやな」ってあっさりと死ぬんだろうな、と思いました。
 一番ゾッとしたのが、遺族の章。自分が死ぬことは諦められたとしても、自分が死んだ後家族・親族や友人に迷惑をかけると思うと絶対に死にたくないと思います。

 このルポを読んでいて、筆者が事故の死者や同行者を散々にこき下ろしているのがやけに目につきました。読んでいる最中筆者の文章にかなり苛立ちながら読んでいました。後書きによると、筆者はできるだけ真の原因を追求したいとしています。その上で、自分の意見を率直に、あるいは読者にインパクトを与えるため計算して強く書いたとしています。このような態度を通して、読者に遭難について真剣に考えてもらいたいというのが筆者の意図だそうです。私は腹が立ちながらも、それならばその作戦は私に関しては成功しているな、と思いました。
 作者の(文章から伝わってくる)人格は到底好きにはなれませんが、登山者や登山者の家族はぜひ読むべきルポだと思います。

 読了後一月近く経っての感想なので、ただでさえ下手な文章が一層ひどくなってしまった気がします。感想がうまく伝わっていないかもしれませんが、何卒ご勘弁を。

評価: A
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2016年06月01日

地名の社会学

今尾恵介さんの本です。地名の成り立ち、階層、現状について分かりやすく述べられています。市町村の下の、大字・小字・町丁などの地名がどのような仕組みになっているのかは意外と知らない方が多いのではないでしょうか(高校のとき「大字」って何て読むのと友達に聞かれて衝撃を受けた記憶があります(^_^;))。地名に関するイロハが極めて明快に書かれているので、地名についての入門書にちょうど良いのではないでしょうか。
 また市町村の統廃合や住居表示の実施で古来より脈々と受け継がれてきた地名が消滅しつつある現状についても強く問題提起がなされています。最後に引用されたマーガレット・ジェリング氏の言葉にあるよう実際地名は「過去への道標」であり、測りきれない文化的価値があると私も思います。
 少々感情的な面もありますがかなりわかりやすい本です。これまであまり地名について意識してこなかった人も、この本を読んで少し考えてみてはいかがでしょうか。

評価:B
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2016年05月13日

さがしてみよう日本の形D 民家

 立松和平さんら文、日々貞夫さん写真の本です。北海道から東北まで、日本の古民家を紹介しています。私は古い集落を通るとき、いつも家の造りを見ています。同じ関西の中でも色々な造りの家が見られて面白いです。他の地方に行くときなんてもう。全く家の造りが違ってワクワクします。一冊の本の中でこのように日本国中の家を見られてやはり楽しかったです。初め三つは見取り図も書いてあって興味深かったですね。
 中家の住宅が特に気に入りました。以前から大好きな大和棟。しかも環濠付き。こういう家に住みたいものです笑。大和棟は日本の民家の中でも一番好きな建築です(地元だから、ということでのひいき目かもしれませんが)。あの屋根の形を見ると本当に心が躍りますね。
 面白い本でした。しかし、ただ、特に後半、写真と文章の対応があまり良くなかった気もします。あとできたらそれぞれの家の全体像も載せて欲しかったです。

評価:B
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2015年05月24日

プロ弁護士の思考術

 矢部正明さんの本です。弁護士の体験談を通して、人生における物事の見方を教えてくださっています。物事を広視野を以って見る。具体的に考える。思いつく限りのオプションを考える。偶然を必ず考慮に入れる。自体がどう進んでも対応できるように案を考えておく。主体性を持つ。肩書きなどにとらわれず直視する。言われてみれば中々当たり前のことばかりのような気がしますが、実際この手のことを確信をもって言うことができるのは中々できないことかもしれません。いろいろなことを再確認することができました。

 特に「具体的に考える」というのは本当に重要だと思います。何事につけても、一般化した思考結果を具体的事象に敷衍するには限界があります。ある程度一般化というものが必要なことは否定できませんが、一般化を過度に行うことで個々の出来事への対応が粗雑になってしまい、誰かが涙を流すことになるかもしれません。そのことを、昨年度末のハンセン病フィールドワークで気づかされ、この本を読んでその思いを強くしました。

評価:B
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2015年03月19日

ウェブ進化論ーー本当の大変化はこれから始まる

 梅田望夫さんの本です。この日進月歩のジャンルで2005年の本を読むというのもなかなか面白いです。この本では、「インターネット」「チープ革命」「オープンソース」が「次の10年への三大潮流」とされています。今年は2015年ですから、ちょうど10年目です。果たしてこれが本当に的を射ていたのかは、この10年間小学生、中学生、高校生として過ごしたまだ未熟な自分にはわかりません。しかし、なんとなくですが、上手く言い当てているようには思います。 LINEなどのSNSが普及して、コミュニケーションの結構な割合がインターネット上の「あちらの世界」に移行し、またインターネットで無料ダウンロードできるものは本当に多く(増えてきたのかどうか昔を知らない自分にはわかりませんが)、オープンソースも相変わらず続いています。
 特に、「あちらの世界」への移行は本当に著しいことは自分にもはっきりとわかります。2012年ごろ、スマートフォンが普及してから一気に進行したように思えます。インターネットという機能は昔からある程度は使っていましたが、バリバリに使いまくるというのは、「デキる」エリートか、さもなくばオタクというイメージがありました(もちろん中学生の認識なので、大人の実社会とは異なるとは思います)。しかし、スマホ、そしてTwitter、LINE、Skype…そういった SNSが普及してからは、インターネットが極めて身近になりました。
 「オープンソース」という言葉を、恥ずかしながら自分は知らなかったのですが、すべての情報を公開し誰もが機能を編集可能にすることで、世界中の英知によって手が入れられ、機能が劇的に向上するというものです。これを聴いた時、本当に考え方の革命だな〜と思いました。10年前、すでに思いつかれ広く広がっていることなのに、自分にとってほんまに斬新に響きました(自分のようにそれを知らない、あるいは意識しない人が多くいるという点ではまだまだ発展途上のものなのかもしれませんが)。知恵から機能が生まれるというこれまでの常識を打ち壊し、機能から知恵が生まれるという
 はてさて、これから情報社会がどうなっていくのかはわかりませんが、梅田さんの言う通り、既存の仕組みの崩壊を厭っていてはこれからの発展はないというのも一理です。
 尤も、自分も電子社会はあまり好きではなく、変化を嫌う性質なので、全面的にそれを肯定したいとは思いませんが……。というのを電子社会のブログという場で発信すること自体自己矛盾かもしれませんが笑。

評価:B
posted by みさと at 22:51| 奈良 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書(小説以外) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする