2014年03月10日

小暮写真館

 宮部みゆきさんの長編小説です。

あらすじ
 花菱英一の家族は変わり者である。友人がそう呼ぶからと、英一のことを「花ちゃん」と呼んだり、古家付きの土地の「古家」を改修して引っ越したりする。しかも、その古家はもと写真館なのである。花菱一家はことあるごとに写真屋の後を継いだと勘違いされる。苦労を続ける英一に、写真屋と勘違いした女子高生が奇妙な一枚の写真を彼に押し付ける。それには奇妙な位置に女性の顔が写った心霊写真であった。英一は友人のテンコこと店子力や不動産屋事務員の垣本順子と協力し心霊写真の原因解明に取り組むが……。




 以前読んだ、有栖川有栖さんの『幻坂』を思い出しました。幻想的なそちらと比べて遥かに現実的ですし、長編短編の違いもありますが、幽霊が出てくるけど怖くなくて、かつ少し切なかった心温まったりという話という点で似ているな、と思いました。
 久しぶりの宮部さん作品でしたが、やっぱり宮部節炸裂!ですね。宮部さんは少年目線の話が本当に上手いと思います。丁度同世代でかなり感情移入して読みました。この気取らない文体が本当に好きです。宮部さんの小説こそ、「青春小説」にふさわしいと思います。
 同じ幽霊系だと『チヨ子』の方がパンチはありますが、温かみではこちらに軍配が上がりますね。

評価:B
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2012年12月22日

スナーク狩り

 宮部みゆきさんの長編サスペンス小説です。

あらすじ
 釣具店フィッシャーマンズ・クラブに釣りと無縁そうな関沼慶子が鉛版を買いに来た。スポーツ射撃に使う為だと後に判明したがーーその後、彼女は元カレであった国分慎介の結婚式に散弾銃を持って現れた。
 同店に勤める織口邦男は、店員達に「お父さん」と慕われている。そんな彼はある計画を思いつき、慶子を……。
 事件は織口の同僚・佐倉修治や国分の妹・範子も巻き込んで思わぬ展開を見せる……。




 ドラマになりそうな、王道を走った作品ですが、修治や範子によく感情移入しながら読みました。
 サスペンスの名の通り、ハラハラ、ドキドキ。各人物の憎しみや恋心などの感情をかみしめ、一気に読み切りました。善悪がはっきりしていて読みやすかったとお思います。信頼していた人の思わぬ行動に驚かされることは現実の生活でもありますね。そんなときの憤りや焦り。宮部さんはうまくそれを描いていたと思います。

評価:B
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2012年10月20日

蒲生邸事件

 宮部みゆきさんの長編SF小説です。

あらすじ
 予備校受験の為に平河一番町ホテルに泊まった尾崎孝史。彼はホテルで暗い雰囲気の男を見かける。男を気にして何日目かの夜、孝史はホテル火事に遭う。そんな彼を助けたのは、あの暗い男だった。男は孝史を連れて過去の、二・二六事件の起こった時代にタイムスリップをしたと言うが……。




 あらすじを見ずにミステリだと思って読み始めたらSFだった……と思ったらやっぱりミステリ要素の強い小説でした。
 色々と詰め込まれた小説だな、というのが第一感。途中まで孝史のエゴイズムを疎ましく感じていましたが、最後現代に帰ろうとするあたりから一気に読みました。わがままなのも人間の特徴。そう思ってもやっぱり嫌な感じはしましたが、本当にリアルに描いていると思います。
 私は貴之、葛城医師の二人が気になりました。特に貴之は、何か自分と性格が近い気がしたので親近感が涌き、感情移入して読みました。貴之が次どうするのか、ひょっとして貴之が……というのが何故かやけに気になりました。
 孝史だけでなく、他の全ての登場人物の心情がリアルに描かれていたと思います。
 ラストはやっぱりちょっと哀しいですが、孝史と蓉子のこれからが楽しみで、宮部さんには続編を書いてもらいたいと思います。
 最後にやっぱり思ったのは太平洋戦争というのは多くの人に哀しい影響を与えているということですね。こんな悲惨なことは繰り返しては成らないと心から思います。

評価:B
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2012年08月05日

英雄の書

 宮部みゆきさんの長編ファンタジー小説です。

あらすじ
 小学五年生の森崎友理子の兄・大樹が自分の中学校で級友を殺傷し、失踪、行方不明となった。家族達が途方に暮れている中、彼女に話しかけてくるものがあった。彼女は本に話しかけられたのである。はじめは怪訝な顔をしていた友理子も次第に打ち解けてくる。彼女は本に導かれて兄を救う旅に出るが……。




 ファンタジーで読むのにえらく時間がかかりました。やっぱりこういう奴は水の合う合わないが結構ありますねぇ。私はどうもファンタジーは苦手です。戦闘シーンとかを詠んでいるとこっ恥ずかしくなってしまって……。ときどきロールプレイングゲームはやるんですけどね。
 しかしこれは殆ど戦争シーンはなく、友理子の心情を中心に描いているのでまだ読みやすかったです。物語を紡ぐこと、についてや失踪した兄貴への思いなど、結構重い内容の作品となっていました。ファンタジーだからといって食わず嫌いするのは止めた方が良いですね。

評価:B
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2012年03月25日

今夜は眠れない

 宮部みゆきさんの長編推理小説です。

あらすじ
 ある日、僕達の家に五億円が転がり込んできた。母・聡子に世話になったと言う人の遺産だ。彼・澤村直晃は株の相場師で、一時世話をした母に財産を遺贈したと言う。棚から牡丹餅の大金に、僕達一家は混乱し、互いの絆までもが怪しくなってくる…。




 約一年半ぶりの再読です。展開は覚えていましたが、それでも中々に楽しめました。
 人間の絆と言うのは何なのでしょうね。一見重厚に見えても、少し付き合いが長く続くと簡単に崩れそうに見えてくる。でも、微妙なバランスを保って付き合いが絶えることは少ない。


 ーー学校という共同体は、いろいろの欲求不満をギュウッと抑えて蓋をしてねじをまわしてあるようなところだから、どこかに空気抜きの穴があくと、爆発的な勢いで、封じこめられた憤怒や不満や怨念が飛び出してくるんだ。それはみんな"おふざけ"の仮面をつけて、笑いながら襲いかかってくる。

 この言葉が印象に残りました。"おふざけ"の仮面。これが一番恐ろしいのではないでしょうか。いじめ問題の加害者で、"いじめ"と自覚していじめている人は少なく、"おふざけ"でやっている人が多いように見えます。"おふざけ"で人を莫迦にする。"おふざけ"で相手を叩く。私もやっているかもしれない。誰がやっても不思議じゃあないことです。
 「冗談やったのに……」「嘘を嘘と見抜く力がないと……」お決まりの良い訳ですね。悪気はないと分かっているのですがね…。
 無意識のうちに人を傷つけないように注意しないといけませんね。

評価:B
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2012年03月17日

堪忍箱

 宮部みゆきさんの短編集です。収録作品は『堪忍箱』『かどわかし』『敵持ち』『十六夜髑髏』『お墓の下まで』『謀りごと』『てんびんばかり』『砂村新田』です。

あらすじ
『堪忍箱』 お駒の生家・近江屋が火事にあった。火事は家の他、祖父の命と母の魂を奪った。祖父が最後まで心残りにしていた「堪忍箱」とは一体何なのか?

『かどわかし』 畳屋の箕吉の前に、得意先の子供の小一郎が現れた。彼は自分をかどわかしてほしいと言うが…。

『敵持ち』 加助は事情あって男に因縁をつけられていた。身の危険を感じた加助は同じ長屋に住む浪人・小坂井又四郎に用心棒を頼むが…。

『十六夜髑髏』 家族を失ったふきは小原屋に奉公することになった。小原屋の旦那を十六夜月の夜が祟ると言われているが…。

『お墓の下まで』 親に捨てられた藤太郎とゆき。二人は良き義理の両親に救われて生活していたが、最近になって実の母親が接触してきた…。

『謀りごと』 火事一つ起こしたことのない丸源長屋の差配人・黒兵衛が死んだ。それも、店子の部屋で。彼の不審な死に住人達はたじろぐが…。

『てんびんばかり』 お互い両親を亡くしたお吉とお美代。永遠の友情を誓った両人だが、お美代が一人嫁いで行った。残されたお吉だが…。

『砂村新田』 家計を助ける為、砂村新田で働くことになった。働くようになったある日、道で柄の悪い男に会うが…。




 『堪忍箱』は段々心が侵されていく様子が恐ろしかったです。
 『かどわかし』は現代にもありそうな話ですね。
 『敵持ち』はミステリらしい作品です。短編ならではの魅力があります。
 『十六夜髑髏』は悲しい話。旦那様の心を考えると…。
 『お墓の下まで』も切ない話。皆誰にも言えない秘密を持って…。
 『謀りごと』これもミステリらしいミステリ。黒兵衛が可哀想です。
 『てんびんばかり』現代小説にしても面白いやもしれん。
 『砂村新田』これも切ない。胸の中が涙の洪水に襲われたようです。

評価:B
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2012年03月07日

かまいたち

 宮部みゆきさんの短編集です。収録作品は『かまいたち』『師走の客』『迷い鳩』『騒ぐ刀』です。

あらすじ
『かまいたち』 近頃、江戸市中で辻斬りが出没しており、それは恐怖の念を込めて「かまいたち」とよばれている。町医者玄庵のむすめおようはある日夜中に辻斬りを目撃してしまう。驚いたおようは手近の番屋に駆け込み、同心にそのことを知らせるが…。

『師走の客』 梅屋には毎年師走の一日にやって来て黄金造りの干支の細工ものを置いて行く客がいる。だが、巳の年その客・常二郎は…。

『迷い鳩』 姉妹屋のお初はある日、市中で商家のお内儀さんらしい女性とトラブルを起こす。お初の目には彼女の袖に血が付いているように見えたのだが…。

『騒ぐ刀』 お初の兄・六蔵は南町奉行所の同心・内藤新之助からうめき声を上げる刀を預けられた。その刀を色々と見分して分かったことだが、身を守る時にだけものが切れるようになる。その刀が訴えていることとは…?




 ひょっとしたら初めてかもしれない時代小説。歴史小説と違って、単に舞台が昔というだけですね。
 『かまいたち』はサスペンス。推理小説のような興奮が感じられます。
 『師走の客』はこの短編集の中で一番気に入りました。こういうタイプの物語は結構好きです。
 『迷い鳩』最後の方に主人公が「霊験お初」だと言うことに気がつきました。超能力ものはたまに読むと良いですね。
 『騒ぐ刀』上とおなじ「霊験お初シリーズ」です。胸の高鳴りが押さえられませんでした。

評価:B
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2012年03月02日

東京下町殺人暮色

 宮部みゆきさんの長編小説です。

あらすじ
 中学一年生の八木沢順と刑事の父親・道雄は東京の下町で家政婦の幸田ハナとともに新生活を始めた。そう日の経たない内、町内である噂が広がっていることに気がつく。その噂は、町内のある家で女性が殺されたというものであった。丁度その頃、荒川でバラバラ死体が発見された。噂と事件とは何か関係あるのか…?




 中々メッセージ性の強い物語でした。想像力の欠如した若者が軽い気持ちで人を殺す。現実にもこんな事件があったと聞きます。聞いただけでも反吐の出る事件。二度とこのような事件が繰り返されないことを祈ります。
 「若者」の私には昔と比べてどうこう、などと言えませんが、酷い言葉を平気で口にしたり、会ったこともない人の名前を馬鹿にしたりする若者は私の周りにも数名います。彼らも人が不愉快になるのではないか、という「想像力」が欠けているのでしょうか。
 さて、この小説の道雄の台詞に
「しかし、そういう少年達を育ててきたのは、才賀さん、我々の世代ですよ。自分の子供に比べたらあんな連中の命などものの数ではない、という考え方をしている、我々の世代です」(291頁)
とあります。この言葉に成る程、と一瞬納得してしまったのですが、この本の初版が出されたのは1994年。今から18年前、インターネットなどが普及する以前です。今の若者達の問題はヨコの繋がりが強すぎることだと思います。まだ未熟な者同士で影響を及ぼしあう機会が多くなったことでこの物語の少年達が犯した罪のような「幼い」犯罪が増加しているのではないでしょうか。インターネットの弊害も見直さなければならないでしょうね(と、書いた私もインターネットを使ってこの文章を発信しているのですが)。
 「こんな俺達を作ったのはお前ら親の世代やからな」とか「昔から〜は差別されていた、と(学校・親が)教えるから俺らの世代も差別するようになるんや」などと責任転嫁をして悪いことをし続ける。それが今の若者世代です。
 未来の若者ーー私達の子供の世代はどのようなことを言われて育ち、どのような人間になるのでしょうか。怖いようでもあり、楽しみなようでもあります。

評価:A
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2012年02月22日

龍は眠る

 宮部みゆきさんの長編推理小説です。

あらすじ
 嵐の夜、雑誌記者の私・高坂昭吾は東京へ向かう道すがら、ツーリング中に自転車がパンクして往生していた少年・稲村慎司を助けた。その直後、開いたマンホールとその側に落ちている子供用の傘を見つけた。悪い予想をしつつ、私は通報をする…。
 悪い予想は当たった。マンホールに子供が落ちて死んだのだ。たちの悪いことに、マンホールは故意に開けられていたのだ。慎司は自身の特殊な能力で開けた犯人が分かると言うが…。




 非常に面白かったのです。物語にこれほど引き込まれるものか、と思いました。宮部氏はこれより面白い話をたくさん書いているので、時間が空くとと記憶の中に埋もれ込んでしまいますが、改めて振り返ると名作に思えます。
 慎司ら超能力者も本当に苦悩しているのですね。私なら…耐えられませんね。ネタバレ・反転→直也なんてその能力のせいで俗なことに巻き込まれて死んでしまいますからね。現実にはそういう能力がある人がいないと信じたいものです。

評価:A
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2012年02月03日

魔術はささやく

 宮部みゆきさんの長編推理小説です。

あらすじ
 日下守は高校生。父が市の金を横領して失踪、母は病死した為伯父一家の浅野家に預けられていた。ある日、タクシーの運転手を生業とする伯父の大造が菅野洋子と言う女性を轢き殺してしまった。伯父は拘留され、厳しい取り調べを受けることになった。警察は伯父の不注意だと言い、調査を進めるが守は伯父の潔白を信じていた。守は独自に調査を進める…。




 なかなか面白い小説でした。宮部氏は作品によって、本当に雰囲気が違います。
 これは先日読んだ『心とろかすような』とは別の作者が書いたようにさえ思えます。強いて言えば『理由』に近い雰囲気です。ふわふわしていいて温かい『心とろかすような』に比べて淡々と物語が進みますが、『心〜』には無かった興奮がありますね。

評価:B
posted by みさと at 20:55| 大阪 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書(宮部みゆき) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする