2013年02月14日

貴族探偵

 麻耶雄嵩さんの短編集です。収録作品は『ウィーンの森の物語』『トリッチ・トラッチ・ポルカ』『こうもり』『加速度円舞曲』『春の声』です。

あらすじ
『ウィーンの森の物語』 商談も兼ねた別荘行き。営業部長の正津幸彦は今回の商談に期待していた。しかし、社長であり、別荘の主でもある都倉政一の恋愛のトラブルで上手くいきそうにない。そんな夜、都倉が何者かに殺される。その後、警察とは別に身なりの良い男とその使用人が現れた。彼は貴族探偵と名乗る……。
『トリッチ・トラッチ・ポルカ』 猪飼市郊外の廃倉庫で頭と腕のない死体が発見された。死体の主は宇和島逸子という強請をやっていた人物と分かった。容疑者はすぐに上がって、刑事の古川は彼の容疑を確固たるものにしようとするが……。
『こうもり』 北陸の山間にある高級旅館・風媒荘。女大生の二人ーー寺崎紀子と安永絵美は訳あってそこに来ることができた。彼女らはそこで憧れの作家・大杉道雄と堂島尚樹と出会うが……。
『加速度円舞曲』 日岡美咲は吉美ヶ原の別荘地で二股をかけた彼氏と喧嘩別れし、腹を立てて帰ろうとした。しかし、その帰りの山道、崖から大石が落ちてきて、彼女の車に当たった。彼女が往生しているとき、一台のリムジンが通りかかった。リムジンからは屈強な運転手と身なりの良い青年が降りて来たが……。
『春の声』 奈良県の吉野地方、葛尾市に桜川家がある。この家はかつて伯爵を与えられた家で、今も吉野杉で栄えている。桜川家の亭主・鷹亮は孫娘弥生の婿選びを言い出した。弥生の従姉妹の豊郷皐月は彼女に見守ってほしいと頼まれ、桜川家に滞在することとなる。
 また、皐月は滞在中、同じく呼ばれてやってきた「貴族探偵」と名乗る男と知り合うが……。

 麻耶さんは今回も中々奇作を作ってくれました。自分で推理をしない探偵なんて、この「貴族探偵」くらいではないでしょうか。名前もなし、推理もせず、ただ悠然と現場に現れる。そんなぶっ飛び方が面白くて気に入りました。こんなん好きやわ〜と一話目で思いました。が、設定が変わっているだけであとは普通のミステリ。『メルカトルと美袋のための殺人』や『夏と冬の奏鳴曲』の方が凄いですね。
 とは言え、二話目以降も普通に良策ぞろいだと思います。突出するものはありませんが、『春の声』なんかは計算が尽くされた技巧作で、うまいと思います。春の声に出てくる「奈良県葛尾市」は、ネーミングは葛城市が元ですかね。地理的には大淀町あたり? 架空都市は好きなので、気になってしまいます。
 はじめはびっくりしますが、普通のミステリ。好き嫌いなく、ミステリ好きなら誰でも読めると思います。

評価:B
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2012年03月22日

メルカトルかく語りき

 麻耶雄嵩さんの短編集です。収録作品は『死人を起こす』『九州旅行』『収束』『答えのない絵本』『密室荘』です。

あらすじ
『死人を起こす』 僕・竹田、長谷、生野、新居、あげは、桃子の六人は山中にある屋敷・カレー荘に泊まることになった。その夜、皆は酒宴を楽しむが…。

『九州旅行』 「血の匂いがする」自称銘探偵・メルカトル鮎は言った。ここは作家の私・美袋三条の住むマンションの、三〇一号室の前。部屋の戸を開けると、中には男の死体が…。

『収束』 メルと私は新興宗教の宗主・小針満英に頼まれ、聖典の警護の為小さな島に赴いた。小針は聖典が何者かに狙われていると言うが…。

『答えのない絵本』 地震の少し後、メフィスト学園物理教師の那須野山彦が死んでいるのが発見された。来客を知らせる放送が繰り返し流されたのにいつまで経ってもやってこないのに不審を覚えた人々が見つけたのだ。メルと私は二人の人物の依頼を受け、調査を始めるが…。

『密室荘』 ここは密室四の四にある"密室荘"と言う名のメルの別荘。私達は療養の為にここにやって来た。ある日目覚めると地下室に死体があることをメルに知らされた…。




 メルの黒さに磨きが掛かっております。読んでいてこれはやり過ぎじゃあないかと思うくらい。
 また、いずれも意外な犯人ーーこれは反則ではないかーーで、アンチミステリと言うのが相応しい作品群です。
 『死人を起こす』の結末でまず唖然となりました。まさかタイトルがこんな意味を持つとはねぇ。
 『九州旅行』これはミステリと言えるのか? 推理はしていますがね…。ラストシーン、美袋が不憫でなりません。
 『収束』 ーー今日ほど自分の無力を痛切に感じたことはない(美袋三条 141頁) 悩める彼の心が胸に響きました。
 『答えのない絵本』これも結末に唖然。こんな小説は読んだことがありません。
 『密室荘』メルの黒さが爆発。これは確実にミステリからは外れるでしょうね。
 以前読んだ二つの短編集と比べると際立って異様な短編集ですが、これはこれで楽しめました。「面白い」や「面白くない」などの感想は全く頭を掠めず、ただ驚いてばかりでした。

評価:B
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2011年10月21日

 麻耶雄嵩さんの長編推理小説です。

あらすじ
 オカルトスポット探検サークルの六人は山裾にある、ファイアフライ館と呼ばれる屋敷に合宿に来た。ファイアフライ館は十年前、作曲家・加賀蛍司が演奏家達を殺した惨劇の館。そこをOBが買い取ってサークルの合宿所にしたのだ。去年は合宿の後、部員の一人が連続殺人鬼・ジョージに殺された。このことは館に関係があるのか? 今年も何かが起こるのか?




 ミステリなのにホラーのような雰囲気でした。上手に恐怖を煽っていて、怯えながらも、続きが気になりました。
 トリックも中々上手く、すっかり騙されました。長崎と諫早の影が薄いと思ったら…。
 ミステリとして良作でありながら、ホラーとしても楽しめるという非常に贅沢な傑作でした。麻耶作品としてはインパクトに欠けるかもしれませんが。

評価:A
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2011年10月02日

 麻耶雄嵩さんの長編推理小説です。

あらすじ
 何者かに弟・襾鈴(あべる)を殺された珂允(かいん)。彼は襾鈴の死とその直前の失踪の原因を探る為に、地図にない村に潜入しようとする。だが、珂允を待ち受けていたのは鴉の大群であった。珂允は辛くも一命を取り留め、助けてくれた頭義(かしらぎ)の家に世話になる。その後、大鏡という神が支配するこの村で、珂允が遭遇するのは連続殺人であった…。




 久々の麻耶作品です。麻耶さんの小説でこれほど読みやすいのも珍しいです。『夏と冬の奏鳴曲』で私を苦しめたうんちくもあるにはありますが、短い上に内容もそれなりに簡単でしたし。
 読み始めてまず気になったのが名前です。珂允と襾鈴ーーカインとアベルーーって旧約聖書に出てくる(ネタバレ・反転→)人類初の殺人事件ではないですか。まさかと思って叙述トリックに注意しつつ読んでいたら犯人に関してはやっぱりかと思いました。しかし、他の面では完全に騙されましたね。特に橘花と櫻花のトリックは秀逸。最後のどんでん返し、「騙された」と言う感覚が何とも言えません。
 麻耶さんらしい盛りだくさんのトリックでした。これは『翼ある闇 メルカトル鮎最後の事件』に劣らぬ銘作ですね。

評価:AA
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2011年08月18日

木製の王子

 麻耶雄嵩さんの長編推理小説です。

あらすじ
 画家・白樫宗尚の家で殺人事件が起きた。殺されたのは宗尚の姪にして息子の嫁の晃佳。彼女の生首はピアノの鍵盤の上に置かれ、彼女の指にはめられていた奇抜なデザインの指輪は奪われていた。如月烏有の同僚・安城則定はその指輪と同じデザインの指輪を持っていた。晃佳と安城の関係は…?
 容疑者全員にアリバイが成り立つ中、探偵・木更津悠也は犯人を暴く事ができるのか?




 中々興味深いアリバイなのですが、私にはさっぱり分かりませんでした。麻耶雄嵩さんはインタビューで、「解かなくてもいい」と明言しています。自力で解ける人はいるのか…という程、複雑不可解なトリックです。私など説明を読んでも理解出来ませんでした。「どうやってアリバイを作ったか」より、「なぜアリバイ工作が成りたったか」「なぜ全員にアリバイを作ったか」を考えて読んでいったら良いのですね。その理由は、非常に麻耶さんらしく、見事なものでした。

評価:B
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2011年08月04日

あいにくの雨で

 麻耶雄嵩さんの長編推理小説です。

あらすじ
 如月烏兎・熊谷獅子丸・香取祐今は、雪に囲まれ密室となった廃墟"塔"で他殺体を発見する。その"塔"は過去にも同じ状況で殺人が起こったこともあった。そして、その後も同じような殺人事件が何度も"塔"で起こる…。驚愕の犯人とは?




 麻耶さんには珍しくノンシリーズかと思いきや…烏兎は『夏と冬の奏鳴曲』『痾』の烏有の弟なんですね。まあだからどうという訳でもありませんが。
 凄い生徒会でしたね。クリークか。我が中学にあんなものは有ったら嫌やな、と思いながら読みました。あんな権謀術数を張り巡らす生徒会なんてどこを探してもある訳ない…。現実に有ったら嫌ですけど、フィクションとしては楽しめました。
 今作は他の麻耶作品に比べて「普通」の推理小説です。とはいえ登場人物をひたすら不幸にする麻耶さんの作風はよく出ています。

評価:B
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2011年08月02日

 麻耶雄嵩さんの長編推理小説です。

あらすじ
 波都島ー通称和音島ーの事件の後遺症により、記憶喪失となってしまった如月烏有。彼は記憶を取り戻す為に、神社仏閣に連続放火をする。そして焼け跡からは殺していないはずの死体が発見された。世間には放火犯と殺人犯が同じと見られている。その上烏有の元に、「今度は何処に火をつけるつもりかい?」という脅迫状も送られてきた。烏有は木更津悠也やメルカトル鮎の協力を得て殺人犯を見つけ出そうとする…。




 昨日紹介した『夏と冬の奏鳴曲』の続編です。先に『翼ある闇』や『夏と冬の奏鳴曲』を読んだ方がこの小説を理解しやすいと思います。
 メルだけでは無く、木更津や香月も出てきました。名前だけなら美袋や辻村警部も…。
 さて、いつも名前だけ出てくるので気になっている人物がいます。河原町祇園という京都の私立探偵です。彼がきちんと出てくる小説はあるのでしょうか…?
 麻耶さんの作品は他作品を意識したものが多いですね。この作品は『翼ある闇』や『夏と冬の奏鳴曲』を意識していますし。発行順に読んでいくのが好ましいかな。
 個性的と言われる麻耶さんの作風にも慣れてきました。今作は前作に比べてアクが少ないので結構楽に読み終えました。でも麻耶さんの初期の三作の中では『翼ある闇』が一番好きですが。

評価:B
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2011年08月01日

夏と冬の奏鳴曲

 麻耶雄嵩さんの長編推理小説です。

あらすじ
 和音という謎の女性の信奉者達が集まって共同生活を営んだ波都島ー通称和音島ー。そこで生活した者達が20年ぶりに和音島に集まる。出版社に勤める如月烏有は編集長の命を受け、アシスタントの舞奈桐璃を連れて和音島へ取材に赴くが…。




 夏休みの日課に従い、一日で読みました。半年ぶりの再読とはいえ、717頁(文庫本 解説含む)もありますので結構疲れました。普通の小説の1.5倍〜2倍ほどの長さです。
 麻耶さんらしい独特な作品です。兎に角、ややこしい作品でした。作品で明かしていない所が多いので読解力(推察力?)が養えそうです。
 普通のミステリになる所をあえて奇をてらい、個性的な作品としています。基本的に読んでいて面白いのですが、パトリク神父の「神」についての話や、キュビスム講義は難解で、半分も理解できたかどうか…。
 烏有は可哀想な人物ですね。小学生の頃に自分の為に命を投げ出した青年の為に努力し、己の才能の無さに煩悶し、そして今回の事件…。どんなに精神の丈夫な人でも耐えられないでしょう。

 続いてこの小説の考察・解釈です。他のサイト・ブログの方が細かい上に説得力もあると思いますが、当ブログでも軽く。ネタバレなので反転させてお読み下さい。
 さて、エピローグでのメルと烏有の会話から、編集長が「和音」という名前なのはほぼ間違いないと思います。
 続いて「和音」の正体について。テラスで踊り、歌っていたのは尚美。名前、姿は和音編集長。絵画はその他の皆。
 桐璃が和音と似ているのは親子だから?という疑問について。和音が編集長なら、桐璃が絵画の和音と似ているという疑問も解けます。 「桐璃と編集長が懇意にしている」との記述もその伏線となっているのでしょう。
 二人目の白いワンピースの桐璃(以下 白桐璃)は桐璃の双子か、もしくは姉妹だと思います。瓜二つという点を鑑みれば一卵性双生児という可能性は高いですね。
 『黙示録』の内容。『春と秋の奏鳴曲』の内容に沿って烏有が「選び出された」と思われるので、『春と秋の奏鳴曲』の続編の『黙示録』は本作『夏と冬の奏鳴曲』と同じような内容かと。確か『ヨハネの黙示録』は世界の終末を書いたものだったと思います。『夏と冬の奏鳴曲』でも和音島は沈んでいます。そういう所から考えても、やはり『黙示録』は彼らの、和音信奉者達の世界ー和音島ーの終焉を書いた小説なのでしょうね。
 烏有を守った青年は桐璃の兄か?という疑問について。「名字は舞奈ではなかった気がする」との記述がありますが、あくまで「気がする」ですからね。でも青年の妹の顔がたまたま桐璃に似ていたという可能性もあります。前述の謎から考えると、やはり青年は桐璃の兄だと思います。
 烏有と河原で会っていたのは桐璃か、白桐璃か?という謎について。「桐璃は白桐璃の存在を知らない」という記述や白桐璃が「桂川で話し合った」という台詞、そして烏有と桐璃が知り合いということも考えると、初めての出会いは桐璃で、時々桐璃が白桐璃と入れ替わっているようですね。
 最後に真鍋夫妻の存在意義について。幼児売買をしていたことが意味ありげなのですが…。そして料理の件は何…?これらはいくら考えても解釈できない…。解釈できる方はぜひこの記事にコメント下さい。


評価:A
posted by みさと at 19:13| 大阪 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書(麻耶雄嵩) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年07月27日

翼ある闇 メルカトル鮎最後の事件

 麻耶雄嵩さんの長編推理小説です。ネタバレや犯人を暗示している箇所は、白字にしておりますので、読まれる方は反転させて下さい。

あらすじ
 謎の依頼により、今鏡家の邸宅・蒼鴉城に招かれた探偵・木更津悠也と私・香月実朝。そこで待ち受けていたのは依頼人の死体をはじめとする、連続殺人事件であった。その上、木更津に続いてもう一人探偵が…。名探偵VS銘探偵。衝撃の結末とは…?




 極めて個性的な作品で、個人に寄る評価の違いが非常に大きい作品です(麻耶さんはこれより更に個性的な『夏と冬の奏鳴曲』という小説も書かれています)。評価の違いはあっても、印象に残る事は間違いないでしょう。
 小学六年生の頃に読み、何段もの推理及び真相に非常に驚いた記憶があります。二年経っても内容も殆ど覚えているほど、インパクトのある小説でした。とはいえ、小六と中二では語彙力をはじめとする知識に大きな差があり、前回読んで理解できなかった箇所の大半は、今回で理解できました。
 今回は初読時の感想と今日読んだ感想をまとめて書きます。
 ちなみに、『名探偵木更津悠也』に名前だけ出てくる、今鏡夕顔と香月実朝の出会いはこの小説のようですね。先にこちらを読んだ方が『名探偵木更津悠也』は楽しめると思います。
 緊迫感・登場人物達の感情・奇抜なトリック…この小説は様々な面で優れた小説であるといえるでしょう。
 どうでもいいことが気になったのですが、何故作男の山部民生が登場人物一覧に載っているのでしょうか?彼が載れるのなら、刑事の堀井やメイドの宮古も載れるのでは、と思いました。本当にどうでもいいことですね。作品の評価になんの関係もない。

 以下解決編について。ネタバレ多し。

 木更津の推理。これには唖然としました。一つ目は死者が蘇生、二つ目は斬られた首が他人の体につながる、というのは…。これが真相だったらさすがに怒りますよ。
 メルの推理。なんで木更津の行動を知っているのだ? 香月に聞いた、ということなのだろうけれども。私の読み落としでなければ、教えているシーンはありませんでした。推察しろということか。
 香月の推理。急にロシア革命が出てくるとは…。歴史ミステリの一面もあるのですね。ついでに、『日本樫鳥の謎』が海外では国名シリーズでないということは、エラリイ・クイーンを『エジプト十字架の秘密』しか読んでいない私でも知っていました。そのことを木更津が気づかない、というのは少し不自然に感じました。90歳の人が70代に化けるというのも無理がある気がします。とはいえ、伏線をこうも上手く張るというのも難しいでしょう。作者の文章の癖が伏線を目立ちにくくさせています。
ラストシーンを読み終わった後は、胸の中を様々な感情が行き交い、初読時の「驚愕」が今回は「驚嘆」に変わっていました。

 少しケチをつけてしまいましたが、私はこの小説は本当によい作品だと思います。皆さんもぜひ読んでみて下さい。

評価:AA
posted by みさと at 20:50| 奈良 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書(麻耶雄嵩) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年07月10日

メルカトルと美袋のための殺人

 麻耶雄嵩さんの短編集です。収録作品は『遠くで瑠璃鳥の啼く声が聞こえる』『化粧した男の冒険』『小人闍処ラ不善』『水難』『ノスタルジア』『彷徨える美袋』『シベリア急行西へ』です。

あらすじ
『遠くで瑠璃鳥の啼く声が聞こえる』 推理作家・美袋三条は、大垣守の別荘に招待される。そして、会ったばかりの佑美子という女性に恋をする。ところが、翌朝佑美子と大垣の死体が発見された。美袋はもう一度寝た後、銘探偵・メルカトル鮎を呼び寄せる。

『化粧した男の冒険』 友達の増岡のペンションに泊まりにきた美袋とメル。そこで宿泊客の高松が殺された。奇妙な事に、高松は化粧をしていたのだ。メルはそこで自慢の推理を披露する…。

『小人闍処ラ不善』 暇を持て余している銘探偵・メルカトル鮎。そこで、依頼を求めるダイレクトメールを町の老人達に送る。早速依頼主が来たが、その老人は…。

『水難』 ある旅館に泊まりにきた美袋とメル。そこは、幽霊が出ると言われている所だった。美袋は幽霊に遭遇し、メルに相談を持ちかけるが…。

『ノスタルジア』正月に、急にメルに呼ばれた美袋。メルは、自分の書いた推理小説を読んで犯人を推理しろと言う…。

『彷徨える美袋』 美袋は何者かに頭を殴られ、意識を失っている間に富山の山中に連れてこられる。そこから下山しようとして、やっとの思いでたどり着いたペンション。だがそこで恐るべき事件が起こる…。

『シベリア急行西へ』 ある旅行会社の企画で、十二日間列車の中で過ごす事となった美袋とメル。旅を楽しんでいる間に乗客が殺される…。




 この小説も、『名探偵木更津悠也』と同じく、探偵役とワトスン役の関係が面白いです。ここまで仲の悪い探偵と助手もいないでしょう。美袋はメルを「いつか殺してやる」とまで言っています。メルの卑劣さがなんとも言えません。
 トリックは独創的というか…奇妙な物が多いです。麻耶雄嵩さんの特徴がよく分かる短編集でした。
 推理小説好きなら是非読んで欲しいですね。

評価:A
posted by みさと at 10:08| 奈良 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書(麻耶雄嵩) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする