2020年09月10日

風景の発見(内田芳明)

 ヴェーバー研究で知られる社会思想研究者・内田さんの風景論。
 日本の前近代は、例えば見たこともない中国の洞庭湖になぞらえて八景を定めるなど、社会通念に従った風景観を持っていました。明治に入って写実主義の洋画や自然主義文学、山岳登山、地理学が西洋から移入される中で、そのままの自然を見つめようとする風景観が生まれていきます。これは高橋由一の『鮭図』に、国木田独歩の『武蔵野』に、志賀重昂の『日本風景論』に表れているものであります。
 この議論は国粋主義者の志賀からキリスト者の内村鑑三、進化論のダーウィン、相貌学的地理学のフンボルトへと、時代を、影響をさかのぼるように西洋に移っていきます。
近代西洋はデカルト的な、主客分離・機械論的自然観だけではなく、「自然の側に中心があって、自然が物象の姿・形として現れるその現象を通じて私たちに語りかけてくるものを、人間がみて観得する」(p40)相貌学的なまなざしをも生み出した、というのがこの著作の胆であります。
 美術史から地理、経済、文学、科学史、本当に様々な思想を見事に編み上げた作品です。やや複雑で十分に理解できていない感じもありますが、内田さんの視野の広さに恐れ入るばかりです。
posted by みさと at 19:33| 奈良 ☁| Comment(0) | 読書(社会学) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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