2020年06月22日

発情装置(上野千鶴子)

 大学生協の古本フェアで扇情的なタイトルに驚いて手にとった本です。人が発情するのは自然現象ではなく、文化的装置である、という構築主義的なところに基づくタイトル。援助交際などの社会現象やニキやダイアナ・ブロック、山岸涼子などの芸術作品、フロイトやフーコーの思想も時には参照しながら様々に論じたエッセイ集であります。
 最近KuToo運動など、フェミニズム的な言説が盛んでありますが、運動に参加する側もそれを批判する側も、政治運動的な、先鋭的なところが目立って、思想的なところがあまり顧みられていないように感じます。色々な言説を見聞きする中でも、フェミニストが社会批判において「今の時代に合わない」なんて半ば思考停止的な言説を発したり、逆にアンチ・フェミニストがフェミニズムとミサンドリーを混同して同じく思考停止的に批判したり、なんだか、感情的な議論になりがちなのが個人的にはもやもやしています。
とは言え、フェミニズム自体が学問であると同時に当事者による社会運動である、という側面も強いため、そんなもんなのかなぁ、とも思ったり。

 面白かったのは、ゲイ・スタディーズとの応酬。フェミニズム的な言説は女性性/男性性を注目するあまり、LGBTQに対して優しくないイメージがあったのですが、フェミニズムのスタンスを理解すると、なるほど、というところ。フェミニズムにとって、ゲイもレズビアンも男性性と女性性の社会的規範に拘束されているものであるのです(だからこそ、ゲイがミソジニーに結びつく)。上野さんはゲイやレズビアンから「同性愛差別者」ととみなされ、上野さん自身も、「批判に値するだけの偏見や無理解に満ちた発言」をしてきたと認めています。
 上野さんの言説は少し過激な形を取りますが、読んでいると、かなり冷静で、実際他者からの批判を丁寧に受け止めて、考えを常に更新し続けているのが見て取れます。

 フェミニズムやセクシュアリティ/ジェンダー研究の全体像を知りたくなりました。色々考えさせる読み物で面白かったです。
posted by みさと at 10:24| 奈良 ☁| Comment(0) | 読書(社会学) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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