2020年06月10日

風景の生産・風景の解放(佐藤健二)

 東京大学の歴史社会学の先生による風景論。内容は絵葉書、考現学、ペスト、柳田の風景論、言語/交通/複製技術から見た風景論です。
 絵葉書と考現学に関しては総論的にまとめられていて、勉強になりました。絵葉書というと、観光地で売られている名所絵葉書のイメージが強かったのですが、記念絵葉書、からくり絵葉書や美人絵葉書など、結構多様なものがあることを知りました。そう言えば、最近でもCDのおまけにアーティストの写真絵葉書が入っていることがありますが、これは美人絵葉書の延長なのでしょうか。
 絵葉書は当然のことながら、郵便制度の発達とともに発展しました。日本でしたら、1900年頃がその黎明期であります。記念絵葉書ではそのコレクション的性質を持ってナショナリズムに組み込まれ、美人絵葉書が戦争の慰問に使われ、名所絵葉書がカメラの普及で陳腐化したというように、歴史と深く結びいて移り変わって行きます。
 ほか面白かったのは鉄道の持つ風景への影響力。鉄道は人々の移動を、観光を支えただけではなく、その車窓は近景を捨象し、遠景をパノラマ化し、抽象し、自然の客体化を支えました。
 内容が多様な本書ですが、読み物としても、勉強としても楽しかったです。特に柳田の風景論のあたりは自分の指導教員の先生の授業で取り上げられていたことなので、先生もこの本読んだのかなぁ、なんて思ったり。
posted by みさと at 00:00| 奈良 ☁| Comment(0) | 読書(社会学) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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