2019年11月29日

法隆寺への精神史(井上章一)

 卒論の参考に、と先生にお勧めされて貸していただいた本。法隆寺のエンタシスのギリシャ伝来説や伽藍配置の日本起源説を巡った学説史を参照しながら、19-20世紀に至る時代精神を読み解いて行くといった内容です。
 法隆寺のエンタシスはシルクロードを通って、ギリシャ神殿の様式から影響を受けている、というのは学校で習ったのか、私も昔から信じていた話ですが、現在決して有力な学説ではありません。
 学説の変遷も、やはり時代思想の影響を強く受けます。鹿鳴館的な西洋追従/「脱亜論」的思想や、それに続く国粋主義の高揚、モダニズムの流入などに法隆寺を巡る議論も影響を受けてきたことが論じられています。
 法隆寺という建築そのものではなく、それを巡る人々の思想や社会の状況にスポットをあてたところが独創的な論。東洋美術史を専攻している友人と話していた時にも感じたのですが、私は物そのものを巡る建築史・美術史のメインストリームではなく、文化史的なところに興味があるのだなぁ、と思います。とても興味深かったし、参考になりました。

 井上章一さんのご専門は建築史・意匠論ですが、『京都ぎらい』がヒットしたように、文化史・風俗史的なところに関心の強い方です。一般向けの書籍を多く出されており、著作リストを見てもどこかで見た記憶のある本がずらりと並んでいますが、本書も軽妙な語り口で、読み物として面白い。他の著作も、また読んでみたいです。

 そういえば、少し前にボックスの本棚に『法隆寺の精神史』『日本空間の誕生 コスモロジー・風景・他界観(阿部一)』『伊勢神宮(井上章一)』と並べていた時期があって、どれもちゃんとした学者さんの書いたしっかりした本なのですが、ちょっとオカルティックな印象になってしまってたり。
posted by みさと at 21:18| 奈良 ☀| Comment(0) | 読書(建築/土木,工学系) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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