2019年10月18日

小さなトロールと大きな洪水(トーベ・ヤンソン)

 ムーミンシリーズの第一作品。ムーミンとムーミンママ、スニフがムーミン谷にたどり着くまでのお話です。第一作品とは言っても初めは本屋ではなくヘルシンキ駅の売店や新聞スタンドで売られたにすぎず、しかもすぐに絶版になり、シリーズが完結してからようやく再版がなされ、普及したのは最後だということです。
 ムーミンパパは「ニョロニョロに騙されて」旅に出たのですが、ムーミン達も冬が来る前にお日様の当たる暖かな場所を求めて、またムーミンパパを探して旅に出ます。

 冒険ものの児童文学でありますが、この作品が描かれたのが第二次世界大戦の最中ということを考えると、中々味わい深いです。あまり世界史は詳しくはないのですが、フィンランドは枢軸国として戦争に参加し、ソビエトと交戦を行なったと聞きます。
 「パパ」がいないという徴兵の連想や、蛇や嵐、洪水の苦難もそれぞれ戦争や国際情勢のメタファーにも思えますし、甘いお菓子で満たされた人造太陽に照らされたユートピア(反面、ディストピア)も印象的です。ヤンソン自身による挿絵も、どこか暗い影を帯びている気がします。ムーミントロールによく似ているけど、嵐を好む「海のトロール」の存在もなんだか示唆的。

 そういえば、文学部のスラブ文学で研究をしている友人に聞いたのですが、京大文学部(の海外文学研究系)の研究室は、テクストから分析を発することを徹底しているそうで、文化史・社会史的なところから発する分析はご法度だと聞きます。僕自身、文学への関心がテクストそのものやその審美的な鑑賞にあるというより、表象文化論的な読み取りにあるので、中々ショッキングなお話でした。私は趣味で読んでいますが、研究で文学をやるのも中々大変なんだろうな、と思うこの頃です(楽しそうだけど)。

 そういえば、最近また児童文学ばかり読んでいるのは、先週脳震盪を起こして療養中のためであります。一昨々日久しぶりに外出したところ、めまいがひどくて三条の路上で動けなくなり、救急車で運ばれてしまいました。脳神経外科で精密検査してもらったところ、先天的に脳震盪の影響を受けやすい体質ではあるものの、ただの脳震盪であることが明らかになり、後遺症の心配はないそうです。とはいえまだ目眩や体がだるい症状が続いており、まだしばらくは療養が必要そう。ゆっくり回復していこうと思います。(卒論が心配だぁ…
posted by みさと at 19:06| 奈良 ☁| Comment(0) | 読書(児童文学作品) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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