2019年10月11日

若草物語(ルイザ・メイ・オルコット)

 ポプラ社、小林みきの訳で読みました。南北戦争期、父が出兵し、銃後に残されたメグ・ジョー・ベス・エイミーのマーチ家の四姉妹が隣人ローレンス一家との交流を通して流れてゆく一年を描いた物語です。少女向けに書かれた児童文学らしく、読みやすい成長譚となっております。

 この小説はルイザ自らの少女時代をモデルに書いた小説で、少し勝気で少年らしい文学少女・ジョーがルイザの分身で、他の姉妹も作者の実姉妹と重なるところがあるようです。
 マーチ一家は没落してはいるものの、元々富裕な一族で、他の家とのパーティや花壇作り、ピクニック、スケートなど当時の上層階級少年少女の社交世界があらわているのが興味深いです。一方で、少女たちは家を支えるために家庭教師や介添えの仕事や家事などを担って働きます。もっと貧しい人たちには施しを与え、裕福でなくとも清く幸せに生きている様子が描かれています。そうした中で富裕層から貧困層までの幅広い人たちと交流しており、その当時の社会階層の認識が見えてくるのも面白いです。
 ジョーが髪の毛を切る描写が有名ですが、これは彼女の成長、脱皮を象徴するものと読み取れますが、(父親の言葉を借りると)元々美しい髪を持ちながらも男っぽい性格だった彼女が心優しい女性に成長する様子をさっぱりと美しく表現していて好きです。
 原題は『Little Women』ですが、『若草物語』という邦題も素敵です。少女たちを若草になぞらえたのでしょうか、音の響きがとても綺麗で、華麗さはなくとも、質素で若々しさ、活力のある素朴な美しさが感じられます。

 友人と話していて気づいたのですが、谷崎潤一郎の『細雪』との類似性。それぞれ個性をもった没落貴族の四姉妹の一年を四季折々の風物や文化生活を通じて描くという内容。谷崎が『若草物語』の影響を受けたという話は聞いたことがありませんし、谷崎も自身の大阪での結婚生活をモデルに『細雪』を描いたと聞きますが、もし多少なりとも影響を受けていたかも、なんて空想して楽しんだり。
posted by みさと at 15:37| 奈良 ☁| Comment(0) | 読書(児童文学作品) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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