2019年08月22日

勝手にふるえてろ(綿矢りさ)

 試験勉強の合間に。あんまり普段読まないタイプの小説ですが、ふと部室の本棚にあるのを見かけて、手に取りました。元々叙情よりも叙事的な話が好きな上に、大学生に入ってから古い小説ばかり読むようになっていたため、現代の恋愛小説は滅多に読まなかったのですが、時代も主人公の年齢も近く、物語が等身大な感じがして良かったです。

 主人公は26歳のOL。オタク時代が長く、恋愛経験もなかったのですが、熱烈にアプローチしてくる同僚が現れます。一方で、中学時代片思いしていた、ほとんど話したこともなかった同級生と接触する機会も発生して……。愛することが幸せか、愛されることが幸せか。豊かな表現力と妄想力で、そんな彼女の葛藤を描きます。

 正直共感ができるかというと、(私がそうした情の薄いところもあって)そんなにできないのですが、極端なまでの感情の動きが表現豊かにテンポよく描かれていく様はなんとも痛快です。
「処女とは私にとって、新品だった傘についたまま、手垢がついてぼろぼろに破れかけてきたのにまだついてる持ち手のビニールの覆いみたいなもので、引っ剥がしたくてしょうがないけど、なんか必要な気がしてまだつけたままにしてある。自然にはがされたらしょうがないけど、無理やり取っぱらうのは忍びない。イチがやさしくぺりぺりはがしてくれるなら、もう本当に文句なしなのだけど」(p80)
 等身大で、表現力豊かで、勢いの良い言葉の言い回しのリズム感がこの小説の魅力であります。


 表題作が著名で人気も高いですが、一緒に収録されている「仲良くしようか」が掴みにくいながらもとても心を惹く作品であります。夢の中にいるような、断片的な話が、空想的なモティーフを交えつつ続いていく。『勝手に震えてろ』の緩急、高低あるリズム感も良いのですが、この作品の、どこか陰鬱な空気感のもと水のように流れていく旋律にいたく心引かれます。清冽でおぞましい美しさの中に、筆者の痛烈な社会や自己へのニヒリズムというか、暗く鋭い刃がきらめいてる感じ。
 久しぶりに、心が震える感じがしました。院試勉強しないといけませんし、あまり余韻に浸っていてはいけませんが、いつか、読み返して、じっくり、味わいたい。心からそう思います。
posted by みさと at 21:05| 奈良 ☁| Comment(0) | 読書(他国内文学作品) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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