2019年03月09日

潮騒(三島由紀夫)

 三島由紀夫さんの小説です。鳥羽沖に浮かぶ歌島(現実の神島)を舞台に展開される若い漁夫と海女の恋愛劇の物語。
 三島作品は『金閣寺』くらいしか読んだことがなかったので、全然違う作風に少し驚きました。『金閣寺』のような難解さはなく、極めて平易な内容です。
 明るい漁村風景の中繰り広げられる物語は、極めて健康的で、理性的、見ようによっては図式的でもあります。女性や男性の肉体を描いた描写も多いのですが、それも谷崎のような艶やかさはまるでなく、まるで彫刻の裸像を見ているよう。独特の、清々しい官能を感じます。
 佐伯彰一氏の解説によると、ギリシャの小説『ダフニスとクロエ』を現代日本に翻案したものだそうで、そう言われると確かにそんな感じもします。物語中に出てくる少年・少女たちはどこか神話の登場人物のように現実離れしていて感じられ、温かな伊勢鳥羽の海も地中海に似合います。
 離島漁村という世界設定は、日本の土俗性を感じさせながらも、現代(=都市の時代)からは隔絶した印象も受け、ギリシャ小説の日本への翻案にはぴったりな感じ。
 来週の月曜日から鳥羽旅行へ行くので、舞台となった神島を訪ねてみたいと考えております。小説の舞台を訪れ、登場人物の動きをなぞるというのが、最近お気に入りの物語の味わい方。この小説の場合だと現実の自分と、『潮騒』の世界と、古代ギリシャの世界の三重の入れ子で、また不思議な感じがしそうです。
 鳥羽では「文学旅行」をテーマに、伊良子清白の家や江戸川乱歩館も訪問する予定。今から楽しみです。
posted by みさと at 12:38| 奈良 | Comment(0) | 読書(近代文学作品) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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