2019年03月06日

近代とはいかなる時代か? モダニティの帰結(A.ギデンズ)

 アンソニー・ギデンズはモダニティーー近代性ーーについて、「脱埋め込み」という概念を立ち上げたことで有名な社会学者で、本書は彼のモダニティ論の中でも代表的なものであります。
 ギデンズの理論の最も基礎となるのが前回の記事で紹介した構造化理論です。これは、社会構造と人々の相互行為が再帰的に影響を及ぼし合っているというもの。モダニティ論も、この理論が根底にあります。
 ギデンズは、モダニティのダイナミズムを「時間・空間の分離」「象徴的通標」「再帰性」であると論じています。
 時空間の分離というのは、それまで個別の地域社会ごとにそれぞれ異なった時間軸を使っていたのが、グレゴリウス暦が世界を支配するようになることによって生じます。また、統一の尺度を持って時間を測ることができるようになったため、時間の空白化(モノ化とも言えるかもしれません)が進みます。
 さらに全世界が探検し尽くされ、地図に記載されるようになったことなどにより、空間も空白化、モノ化していきます。場所と空間が切り離されたとも言えます。グローバル化により、かつて対面においてのみ行われていた相互行為が、時間と空間を越えて行われるようになったのです。世界の裏側にいる人とも、電話をすることができるということにこの現象は象徴されるでしょう。

 また、「脱埋め込み」は行為を前後の脈絡、場所固有の価値からの切り離すという意味で、象徴的通票と専門家システムの二つの抽象的システムによって成立しています。
 象徴的通票はそれを手にする個人・集団にかかわらず流通できる相互交換の媒体で、貨幣に代表されます。従来物々交換で成り立っていた市場に登場した貨幣は、時間を括弧に入れ、市場をその場所その時間から脱埋め込みします。すなわち貨幣を媒介することによって、自らの商品を代償に欲しいものを手にいれる時間・場所を調整できるようにするのであります。
 専門家システムというのは、現代身の回りにあるありとあらゆるものが専門家によって、作られ、管理されているというものです。私たちは普段乗っている車の仕組みも知らなければ、道路がいかにして敷設されているのかも、その物理的・化学的特性も知りません。さらに、同じものーー例えば道路ーーを扱う専門家でも計画の専門家と構造の専門家とでは、互いに何をやっているか詳しくわかりません。このような状況は、原始社会の、身の回りのものは全て自分、ないしは家族で整え管理する世界とは全然違います。経験を隔離され、世界が断片化していると言ってもいいでしょう。

 「再帰性」というものがギデンズの唱える構造化理論にもっとも直接結びつくものであります。上に述べたような様々な事象により、人間の価値基準は、伝統的なものから脱却し、汎世界的なものとなりますが、「構造化理論」により、それは常に価値基準を問い直され続けることとなります。社会科学は社会を解釈し、理論や価値観を提示しますが、その理論や価値観は社会に影響を及ぼします。社会⇄社会科学の相互影響が常に発生し続けるということであります。

 言葉のキャッチーさから、「脱埋め込み」という言葉は様々な分野で頻繁に使われますが、実際ギデンズの理論を読んでみると、その理論の複雑さに驚きます。迂闊に社会理論の概念を使うと、頓珍漢なことを言ってしまいそうになるな、と感じ、教訓になりました。
 地理学や建築学の分野でも「近代」は一つのキーワードとなっています。しかし、その近代がいかなるものを指すのか、ここまで深く学ぶことはありません。。視覚的な空間現象を解析するのが地理や建築の役割ではありますが、その現象の奥底に流れるものを読み解く社会学の知見を学ぶことも、地理や建築の学生にとって必要なのではないかと思います。
 4月からは4回生で、卒業論文がそろそろ念頭に登ってきます。異分野のことを遠慮なく学べるのは今が最後のチャンスだと思い、勉強しております。遊びもするけど、できるだけ本を読もう…!
posted by みさと at 15:22| 奈良 ☁| Comment(0) | 読書(社会学) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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