2018年12月21日

草迷宮(泉鏡花)

 泉鏡花さんの中編小説です。幼き日、母に聞いた手毬唄を求めて旅をする青年がたどり着いたのは、曰く付きの荒れ屋敷。どういうわけか逗留する青年を数多の人が訪れるが、怪異が相次ぐ、というあらすじ。
 物語は、横須賀市秋谷が舞台となっています。『春昼』『春昼後刻』の舞台は逗子ですし、鏡花はあの辺りにゆかりがあるのかな、と調べれば、胃腸を悪くした際に逗子に静養していたとのこと。
 鏡花の美しく幻想的な、少し妖しい世界は、此の作品でもよく現れています。子産石や団子、西瓜など作品は鞠を連想させる円形のモティーフが散りばめられており、過去に今に行ったり来たりの物語は、表題通り迷宮のよう。読んでいて懐かしさを感じるのは手毬唄と母への慕情というテーマからでしょうか。
 また同時に、この作品は涼やかさをも感じさせます。作中に清流こそ出て来ませんが、海岸、白濁りした小川、真っ青な井戸など水にまつわるものがよく現れています。さっぱりとしたそれではありませんが、冷水を背中にたらたらと注がれたような涼やかさ。まるで怪談のような。そう、鏡花の作品は、近代小説でありながら、どこか古い怪談のような魅力を持っております。そういえば、鏡花はど『雨月物語』の影響を受けたと聞いたこともあるような。
 また関東に行った時には、逗子と合わせて鏡花の舞台を歩いてみたい、と思いました。鏡花の世界は美しく、妖しく、幻のような世界。現在はリゾート地に開発されて、幻滅するかもしれませんが、鏡花の詩情をかきたてた場所を訪ね、鏡花の見た百年ほど前の風景に思いをはせてみたいです。
posted by みさと at 19:26| 奈良 ☁| Comment(0) | 読書(近代文学作品) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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