2017年01月22日

住まいを読む――現代日本住居論

 鈴木成史さんの本です。現代日本の住宅の歴史を追うとともに、それぞれの住宅についての意義を考察しています。取り上げられているのは、農村住宅、漁村住宅、町家、下町の住まい、中廊下型住宅、都市LDK型住宅、地方続き間型住宅、建築家の設計した住宅、集合住宅、コーポラティブ住宅などです。
 戦前から現代(といっても20世紀終わりまでですが)にいたるまでの住宅史が概観できるのもよかったですが、特に心に残ったのが、下町や漁村の住まいにおける家と路地との関係です。このような密集して暮らす地域では、路地が各戸により宅の延長として、日常生活(炊事、洗濯、etc…)の場所として使われているのです。これは住宅の狭さを補うと同時に同じ路地を使う人々の生活空間が重なり合って、町内での連帯心や防犯効果も生み出しているのです。路地で植木鉢をおいて自分の家の特徴を表す「表出」行為や開放的な家屋構造などもこれを支えているのです。
 また現代によくある閉鎖的、固定的な間取り構造についても批判をされています。鈴木氏の言うとおり、家族というものは不変的なものではなく、家族形態の変化に合わせて住宅の使い方も変えていくべだと思います。現代ではけ結婚するまでは実家、結婚したら夫婦でマンション、子供が育ってきたら一戸建ての新住宅、という風に、家族形態の変化を「引っ越し」という形で対応する傾向がありますが、これは人口に対する住宅の過剰供給を招いて将来の空き家問題につながります。また文化の継承という面を考えても、核家族ではなく、どちらかの親元の家に同居して、その昔からの家を住みこなし、住み変えていくべきだと思います。(もちろん、地域や建てられた時代によって住宅の特徴や広さは千差万別でありますから、一概にそうしろ、ということはできませんが…)
 個人的には中廊下型住宅が良い住宅だな、と思いました。部屋がふすまなどでつながっていて間取りの柔軟性が確保できている一方で個室というものができ、さらに各部屋への動線が分離することで一定のプライバシー性も生まれている。そして各部屋が完全に遮断されず音などがある程度通るからこそいざというとき駆けつけやすく、介護や育児などもしやすいのです。

 私は地域づくりを将来の仕事としたいと考えていますが、これまで考えてきたのは都市や村全体のことばかりだったような気がします。この本を読んで、改めてそれらは、個人の生活・個人の住まいの集合体だということに気付かされた思いです。当然のことで理解していたはずなのですが、まちのことを考えようとするときどうしても巨視的な方に思考が行ってしまっていた気がします。自分のものごとを考えるアプローチを増やしてくれた一冊でした。
 同時に、住宅や間取り、生活空間に俄然興味が……。建築関係の本ももっと読んでみたいと思いました。

評価:AA
posted by みさと at 12:03| 奈良 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書(小説以外) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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