2013年12月19日

ふちなしのかがみ

 辻村美月さんの短編集です。収録作品は『踊り場の花子』『ブランコをこぐ足』『おとうさん、したいがあるよ』『ふちなしのかがみ』『八月の天変地異』です。

あらすじ
『踊り場の花子』 相川英樹の勤める若草南小学校には花子さんの七不思議がある。一般的に、花子さんはトイレに出るが、ウチの学校の花子さんは、階段に現れる。ーーある夏休みの日、相川は日直で一人学校に出勤していた。ケータイが鳴ったので取ると、以前教育実習に来ていた後輩・小谷チサ子であった。彼女は忘れ物を取りに来たいと言う。了解して間もなく、チサ子は到着したが、相川はふと違和感を覚えた……。
『ブランコをこぐ足』 小学五年生の倉崎みのりは、ぶらんこを激しく漕いでいた。これ以上ないというところまで上がり、誰もが今から減速するかと思った。しかし、彼女の体は空高く投げ出され、ブランコの柵を越えた遥か遠くに墜落した。翌朝彼女は息を引き取る。同級生たちの話を聞くと、様々な事実が浮かび上がるが……。
『おとうさん、したいがあるよ』 祖母の認知症が始まった。祖父も足が悪くなっているため、私は両親たちと祖父母の家の掃除を始めた。飼い犬のペロの小屋を見たとき、私は死体を見つけた。「お父さーん、死体があるよー!」私は大声で父を呼んだ……。
『ふちなしのかがみ』 私、香奈子はジャズクラブで知り合った友人、マイコとサキに、学校で流行っているらしい鏡の占いの話を聞いた。条件を揃えて鏡を見ると、一瞬だけ未来の自分の姿が見えると言う。香奈子は自分が思いを寄せる相手・高幡冬也ーークラブでサックスを演奏しているーーとの未来を見たがった。ある日、実際に試してみるが……。
『八月の天変地異』 キョウスケと仲良くなってから、俺・小島シンジは友達のいないやつと見なされるようになった。それまでは皆と、普通にサッカーなどをして遊んでいたのに。班替えなどでもあまるようになった。ある日堪えられなくなった俺は、架空の完璧な親友「ゆうちゃん」をでっち上げて自慢した。しばらく定期的に「ゆうちゃん」の自慢話をしたが、ある日嘘だとばれてしまう。その後、サッカーに久しぶりに入れてもらえたかと思うと、プレー中にひどい仕打ちを受ける。そこに、白い肌をした「ゆうちゃん」が現れる……。




 本当に久しぶりの読書感想です。結構気に入っている作品で、読むのは二回目。辻村さんの作品は、若者像の心理描写が特に巧くて、いつも感情移入して読んでしまいます。
 『踊り場の花子』は、「世にも奇妙な物語」にもなっているお話。ホラーとミステリの素晴らしい折衷作品で、ドキドキしながら読みました。「実はこうなんじゃないか」というのは大分最初の方から気になるのですが、ずっとじらされるのが、主人公の気持ちがよく伝わって中々良いと思います。ラスト、ゾクッとしますよね。(ネタバレ・反転→)無限の時に閉じ込められるってねぇ……。その後相川は、脱出するのを諦めるのでしょうか、それともずっと階段を下り続けるのでしょうか……。来るはずのない解放を、無限の時間の中でずっと待ち続けることなんて、ほんとに恐ろしいです。いっそ殺された方がマシな気がします。
『ブランコをこぐ足』この作品は、スクールカーストものです。私も高校生、クラスの「上の方」とか「下の方」は結構体験しています。みりちゃんは、キューピッドさんを利用して、「上の方」に上がりました。彼女のしたたかさが見えてきますが、同時に幸運があったことも忘れてはいけません。「十円一枚、動かす度胸もないくせに」とみりちゃんは言いますが、彼女も本当に度胸があれば、キューピッドさんなんて関係なしに「上の方」に行けたはず。真相はちょっと謎。ごまかし続ける自分が嫌になったのかな……。
『おとうさん、したいがあるよ』は、本当に気味悪かったです。死体を見つけての困惑は見えてきますが、驚愕や恐怖といった感情が見えてきません。妙に落ち着き、とぼけた登場人物たち。本当にうす気味の悪い話です。これも「世にも奇妙な物語」とか「ウルトラQ」とか、あと「ミステリーゾーン」とかみたいです。
 結局何がどうなっているのか謎ですが、私なりにも少し考えてみました。(ネタバレ・反転→)初めは死体は皆ネズミなのではないかと思いました。しかし、エピローグで蠅を見なかったとありますし、やっぱりちがう気がします。私は、集落から人が段々いなくなったことの比喩なのではないでしょうか。おじいさんは足が悪いことから、外にはあまり出ることができない。だから、集落から去った人は死んだのと同じ、ということ。去った人はただ記憶にだけ残る(家がおじいさんの脳内だと考えれば、家に死体が残る)。そして、死体を始末するということは記憶からも抹消してしまう、ということでしょう。後々お母さんやお父さんがとぼけるのも完全に忘れてしまったことの比喩。はっきりとおじいさんが喋るシーンがないのも、物語自体彼の頭の中ということ。
 まあ、無理に解釈しなくても、このように物語の破綻した様の気味悪さを感じるだけでも十分かもしれません。
『ふちなしのかがみ』はミステリ性が強くてあっと言わされました。香奈子に身を据えて考えると、本当に悲しい話です。精神的に追いつめられていく(いた)様は本当によく描かれていると思います。それにしても、この救いのなさは悲しすぎます。
『八月の天変地異』も、スクールカーストを主に据えた作品です。『踊り場の花子』もメインテーマではないもののスクールカーストの描写がありました。メッセージ性が高くて、『ブランコをこぐ足』と合わせて読むと、よりそれが強く感じられます。結局、「ゆうちゃんーー見えない友達」とか「キューピッド様」とか、実体のないものに頼っているようではいけないのですよね。前向きな結末と言い、これが一番普段の辻村さんらしい作品。

評価:A
posted by みさと at 18:20| 奈良 ☔| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書(辻村深月) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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