2020年01月07日

江戸の紀行文ー泰平の世の旅人たち(板坂耀子)

卒論で紀行文の分析をしたのを機に借りて読みました。板坂さんは国文学畑の近世紀行研究の大家の方。
 本書では一章ごとに基本的に一つの紀行・作家を取り上げながら江戸時代の紀行の展開を追っていくという内容。中世までは旅というものは赴任などで止むを得ず行われるもので暗い影がかかり、紀行文は他の文学のように主人公(著者)の心情を追体験するものとして詠まれていました。江戸時代になると、世情は安定し旅は娯楽となり、紀行文もただ作者の心情を追体験するものというだけではなく、旅の疑似体験、旅行の資料など求められるものが多様化していきます。特に貝原益軒は実際の旅に役立つ実用性を重視し、叙情ではなく地誌的記述を重視した新しい紀行文の基礎を築き、以降の紀行文に強い影響を与えます。こうした紀行は小津久足によって大成され、近代にも引き継がれていきます。
 私は地誌的な研究から紀行文の分析をしましたが、やはり歴史的・国文学的な知識の不足が気になります。本書も紀行文というものの性格を知る上の基礎知識となりました。卒論は時間がないので現時点での知識で書きますが、もっと勉強しなければいけないことばかりだと強く感じます。
posted by みさと at 09:56| 奈良 ☁| Comment(0) | 読書(言語学/文学) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする