2019年09月29日

注文の多い料理店(宮沢賢治)

 収録作品は『どんぐりと山猫』『狼森と笊森、盗森』『注文の多い料理店』『烏の北斗七星』『水仙月の四日』『山男の四月』『かしわばやしの夜』『月夜のでんしんばしら』『鹿踊りのはじまり』(以上、『注文の多い料理店』)、『雪渡り』『ざしき童子のはなし』『さるのこしかけ』『気のいい火山弾』『ひかりの素足』『茨海小学校』『おきなぐさ』『土神ときつね』『楢ノ木大学士の野宿』『なめとこ山の熊』です。

 ご無沙汰しております。大学院受験のため更新が滞っておりました。8月までは関係する本を色々読んでいましたが、9月に入ってからは復習や問題演習に時間をとっていたということもあり、9月末の今まで全然本を読めていなかったのが少し残念であります。
 大学院は京都大学大学院人間・環境学研究科を受験し、無事合格いたしました。今度は修士課程に向けて、卒論をしながら基礎固めを頑張りたいと思っています。

 院試終わりに一週間ほど平泉・花巻・遠野へ旅行に行ってきたのですが、宮沢賢治のこの短編集はこの旅行に合わせて読みました。花巻は賢治の旧跡が多く残り、賢治童話村や記念館では賢治の世界観を存分に感じられます。
 この短編集は『なめとこ山の熊』を始め、賢治の中でも風土性の強いものが多く、岩手県のあの地方の空気を感じながら読むことで、一層楽しめた気がします。

 『かしわばやしの夜』『月夜のでんしんばしら』『鹿踊りのはじまり』『雪渡り』あたりはたくさんの詩(歌)が挿入されており、口に出して読みたくなる童話です。
 旅行中、花巻で賢治の命日に行われた賢治祭を訪ねたのですが、『月夜のでんしんばしら』の歌が地元高校の合唱部透き通った声で歌われるのを聞き、いたく心に響きました。同作は電気が導入された時代性をも反映し、人間の文明のなせるものをも幻想的に描き出しています。
 鹿踊りも「遠野祭り」と賢治祭で見てきたのですが、『鹿踊りのはじまり』ではその始原が(賢治の創作かもしれませんが)可愛らしく描かれており、素敵です。

『水仙月の四日』『ひかりの素足』は吹雪に遭難する少年を描いているという点で共通項のある作品。いずれの作品にも通じることではありますが、賢治は色の描写が鉱物や化学の言葉を援用してとても美しく、とりわけ青色や寒色系のそれが豊かになされている感じがします(鉱物の名前を知らなくても、その語感の美しさ!)。この両作で描かれる雪山は賢治のこうした豊かな色彩感覚がよく現れており、とても美しいです。特に『ひかりの素足』は物語の展開、リズム感も含めて完成度が高い作品です。

『ざしき童子のはなし』も風土間の強い話であります。「こんなのが、座敷ぼっこです」で括られる短いお話の連続するのですが、その語り口が、座敷童子のうまく掴むことのできない魅力をよく表していて、印象に残る作品であります。賢治のいた花巻と遠野は比較的近いところにあり、『遠野物語』の世界観も漂います。遠野の民話を柳田國男に伝えた佐々木喜善と賢治は交流があったということも踏まえて読むと、また味わい深いです。
『なめとこ山の熊』は本短編集の中でも物語的な物語で、熊や風景の美しい描写が作品の哀感を誘います。熊の親子の「どうしても雪だよ、おっかさん」の会話は、透き通って美しく、本当に大好きです。岩手滞在中、この作品に出てくる「大空滝」沢を沢登りしようと計画もしたのですが、アプローチの足がつかず断念。またいつの日にか、訪れてみたいと思っております。
posted by みさと at 22:48| 奈良 ☁| Comment(0) | 読書(児童文学作品) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする