2018年07月03日

金閣寺

 三島由紀夫さんの小説です。1950年の金閣寺焼亡事件をモチーフにしたお話で、吃音症をもつ青年が鹿苑寺の小僧となり、美への想念や生や社会に拒まれた恨みを募らせながら金閣寺を焼くに至るまでを描いています。
 主人公がイメージとして思い浮かべる金閣と実際の金閣へ感じる美のズレは、人の普遍的な美の認識をよく表していると思います。自分の中で理想化しすぎて、実際目にしたときあれ、こんなものかと思うことって、よくある気がします。美に限らず、人間や他のものについても。構築主義の話にも通ずるところがありますね。

 永遠に続くであろう建築の美が、空襲で焼けるかと思われるときに、いつになく親しいものに感じられるようになったというくだりも強く印象に残っています。炎に脅かされてはじめて儚い人間と同じ次元に至るのです。戦争が終わったとき、金閣は「音楽の恐ろしい休止のように、鳴り響く沈黙のように、そこに存在し、屹立していたのである。」と描写されています。堅固な永劫の冷たい美をよく表していると思います。
 僧という聖職にありながら、主人公はやけに俗で、しかし、自分を拒否してきた俗を拒否しているのが、強烈な筆致で描かれています。生々しいような、硬いような、美しくも強烈な作風がとても印象的です。

 ものすごく濃い一冊で、考えることも多くありましたし、自分の思考が追いつかないところも多くありました。またそのうち読み返し、作品や三島の美学観をもっと深く考察してみたいと思います。
posted by みさと at 19:30| 奈良 ☁| Comment(0) | 読書(近代文学) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする