2017年08月23日

フルコースな女たち

 新津きよみさんの短編集です。収録作品は『転落――食前酒』『ゼンサイのような女――前菜』『散骨――スープ』『水難の相――魚料理』『薬――お口直し』『男狩り――肉料理』『スイーツ・バイキング――デザート』『マタニティ・メニュー』です。

あらすじ
 陶芸家、ハンター、料理人である三人の女は、富永英作という男をそれぞれ憎んでいた。三人はふとしたことで知り合い、男を殺す計画を立てるが…。(男狩り――肉料理)




 久々に市立図書館で本を借り、久々に読んだ新津作品。料理にまつわった後味悪い系のお話が満載です。この感じ、懐かしい。
 一番印象に残ったのは「散骨――スープ」です。粉骨された「骨を飲む」という人間の倫理観を絶妙に利用した描写。しばしばミステリに出てくる人肉食というのは、見た目にもグロテスクですが、粉になった骨を飲むというのは見た目のおぞましさを伴わないがゆえの気味悪さを感じます。スープとの結びつき方、落としどころも秀逸です。
 他のお話も総じて佳作揃い。後味悪いお話を「食」と結びつけているところに作者の皮肉を感じます。コース料理のように、ぜひゆっくり味わって読んでください。

評価:B
posted by みさと at 15:07| 奈良 ☁| Comment(0) | 読書(新津きよみ) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

文化人類学入門

 祖父江孝雄さんの本です。人類学は以前から興味があったのですが、なんだかんだで結局一冊本を読み、授業を一つ受けだだけにとどまっていました。人文地理学、建築史と並んで私の所属する学系(文化環境学系)の専門で、私の興味のある分野と隣接した学問なのでしっかり学んでみたいな、と思って入門書を読んだ次第であります。
 内容自体は平易で、一般的な教科書類と比べると圧倒的に読みやすいです。ただ、書かれたのが昭和54年であり、かなり古い本であります。平成2年に増補改訂版が出されたようでありますが、こちらでも早27年前。とはいえ基礎の基礎を身に着けることはできたと思いますし、これからもっとたくさん文化人類学の関連書籍を読んでいきたいな、と思いました。祖父江さんは県民性の研究で有名ですし、そのあたりの本も読んでみたいです。

評価:B
posted by みさと at 12:46| 奈良 ☁| Comment(0) | 読書(小説以外) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

外道クライマー

 宮城公博さんの本です。私がワンダーフォーゲル部で行っている「沢登り」という行為。それを極限まで追求している宮城さんの体験談が書かれています。那智の滝登攀(失敗)、タイでの50日近いジャングル探検(連続遡下行)、台湾・チャーカンシー初遡行、称名滝冬季初登攀……。軽妙な文体で色々な意味ですごい記録が盛りだくさんです。
 宮城さんはワンゲルの先輩たちと考え方がどこか似ているなー、と思いましたが、ワンゲルの先輩たちがこれを読んで大いに影響をうけているのかもしれません。私自身は、宮城さんをすごいな、とは思いますが到底こうした思考になることはできないな、と感じました。

 解説で「山登りは反社会的な行為」だということが書かれているのですが、それを読んで色々と考えさせられました。命を危険にさらして、藪を漕ぎ、岩や滝を上り、泥つきにしがみつく。そこにはほとんど生産性なんてない。大人には「なんでそんな危ないことを」と後ろ指を指される。多くの山ヤ、沢ヤはそれを気にしないのかもしれませんが、私は、そう言われると胸が苦しくなります。社会の矩に従うこと、社会のためになることを旨として(青臭い上に、そうできているかは甚だ怪しいことですが)生きてきた私には、そうした非難に抗弁する術を持ちません。そういわれるたびに、それどころか、下界で日常生活を送り、さまざまな人と触れ合っているだけで常に「沢をやめようか」という思いが心に芽生えてきます。
 一方で、社会的通念へ反発する人への憧れが心のどこかにあるのも確かで、沢登を純粋に楽しいと思ったり、そこでさまざまなこと(生の実感や新たな自然観など)を得たりしていることも事実。実際に沢に行くと、沢を続けたいという気になります。
 こうした葛藤は沢をやる限り永遠に続くのだろうな、と思います。冒険家への憧憬はありますが、自分は冒険家にはなれない。

評価:A
posted by みさと at 12:33| 奈良 ☁| Comment(0) | 読書(小説以外) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする