2017年08月18日

グローバリゼーション・パラドクス

 ダニ・ロドリックさん著、大川良文さんと柴山桂太さん訳の本です。国民国家と民主主義とハイパーグローバリゼーションは鼎立しないという「国際経済のトリレンマ」を骨子に盲目的なグローバリゼーションを批判しています。
 詳述はしませんが、わかりやすいようにこれまでの例を挙げてみると
国民国家+民主主義:ブレトンウッズ体制
民主主義+ハイパーグローバリゼーション:ユーロ体制 (世界政府)
国民国家+ハイパーグローバリゼーション:金本位制
であります。ロドリックさんは、歴史・経済・政治の観点からグローバリゼーションを適度に抑える一つ目の選択肢を提唱しています。
 実はこの本は授業の教科書として読んだもので、その授業を担当したはったのが訳者の大川さん(非常勤講師としてですが)。また別のコマでは柴山さんの授業も受けていました(柴山さんは私の学部の先生!) ということで親しみのある人たちの訳したもので、興味深く読むことができました。
 とはいえ、全くの畑違いの分野で、読んでも「なるほど」とか「確かにそうか」くらいで、自分なりの考察は中々出来ません。そもそも根本となるところは理解できますが、細部の理論まで理解できたかというとかなり怪しいところ。
 しかし、私は普段グローバリゼーションを考える時に文化の面やナショナリズムとの関係の面ばかり考えがちでありましたが、貿易・金融面についても考えることができたというのはかなり勉強になったところだと思います。

 知識がなく、他にしっかりした経済書を読んだことがないがゆえに、グローバル経済について語ろうとすると、ロドリックさんや大川さん、柴山さんのおっしゃることの受け売りばかりになってしまっている気がします。もう少しちゃんと語れるようにしたいなぁ。

評価:B
posted by みさと at 23:23| 奈良 ☀| Comment(0) | 読書(小説以外) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

都市をたたむ

 饗庭伸さんの本です。人口が減少していくこれからの都市をどうデザインしていくかを考察しています。この本で根幹となる考え方は縮小都市の「スポンジ化」であります。都市が拡大する時、都市核から農地を虫食いにするように外へ拡大していくことが多く見られます(スプロールと言います)が、一方で都市が縮小する時。都市は外側から縮んでいくのではなく、中心部も縁辺部も含めて、モザイク状に空洞(空き地、空家)ができていくスポンジ化現象が見られます。ここに置いて、そうした空洞をイベントスペースや緑地など多様化するニーズに答える多様な使い方をすることが重要だというのが筆者の述べるところ。
 筆者は街を豊かな生活を送るための「道具」であることを徹底して考えているため、歴史・伝統や街の文化は軽く見る傾向があります。そういったところには同意しかねますが、スポンジ化する街をただ住宅で埋めるのではなく、多様に埋めていくべきという考えにはかなり共感を覚えます。(ニーズがどれくらいどのように多様化しているのかは議論する必要はありますが。)これの前に読んだ勝原文夫氏の『農の美学』において風景の観点から生産緑地の重要性が述べられていましたが、スポンジ化する街を再農地化していくことも一つの良い施策として考えられると思います。
 大都市郊外にある衛生都市の中心部では、商業施設が閉店したり町屋群を取り壊してできたスポンジの穴を分譲マンションで埋めることが見られますが、これは中心性喪失を助け、都市がただの住宅地になることを推し進めます。しばしばこういったところでは人口が減少しています。このような街での分譲マンションは将来のゴーストタウンの種を蒔くことにもなります。現時点でのニーズもそうですが、スポンジの穴を埋めるのに街の将来を考えて埋めることも必要だと思います。この辺りのことも暇があれば詳しく考察してみようかな(といいつついつも放置していますが(^_^;)。)
posted by みさと at 11:48| 奈良 ☁| Comment(0) | 読書(小説以外) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年08月03日

街を変える小さな店

 恵文社一乗寺店店長・堀部篤史さんの本です。京都市左京区内にある様々な個人店を紹介しています。
 左京区は現在私が生活の拠点としているまちなのですが、紹介されているお店の中で行ったことがあるのは恵文社と出町ふたばだけ。(恵文社は下宿のすぐ近所ということで通っていたり、出町ふたばは友達がバイトをしていたりしますが…)
 ほとんど喫茶店で気分転換したり、飲みに行ったりすることもなく、学校と下宿、あと数少ないお店(ほとんど定食屋)のルーティンで生活しております。下宿を初めて一年弱が立ちますが、左京区という町にまだなじみ切っていないような気も。
 町と深く結びついた、紹介されているような店々を訪ねてみたいな、という気持ちになりました。(そこを目的地として消費しにくというのはこの本の趣旨からは外れているような気もしますが^^;)

評価:B
posted by みさと at 18:48| 奈良 ☀| Comment(0) | 読書(小説以外) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年08月01日

日本風景論序説 農の美学

 勝原文夫さんの風景論です。風景論シリーズその3。人々は幼少期に過ごした自己形成空間から「個人的原風景」、また国民的風土・歴史的伝統によって形成される「国民的原風景」からなる「原風景」を基準にして風景を審美しているというのが本旨であります。「国民的原風景」というのは、「ふるさと」とか「春の小川」に歌われる、山河麗しい農村風景と考えられます。都市の住民であっても、農村の景色を見て懐かしい、と感じるのは国民的原風景があるからということです。
 中でも興味深かったのが、都市にある農地――生産緑地のお話。生産緑地は農村風景の一端を示すものであり、人々はそれを通じて農村風景への欲求を満たしているということ。なんとなく都市にある田園は好きでしたが、この本を見てその理由が解き明かされたようでおお、となりました。どんどんと宅地化の進む生産緑地をみると、少しやるせなく感じます。

この本を読んで、人々の「原風景の揺らぎ」についていろいろと思うところがあったのですが、授業のレポートにしてしまったので、書くのはやめておきます。レポートにした内容をブログに書くの、別に悪い訳ではないと思います(逆はアウトでしょうけれど)が、念のため。また気が向いたら書くかもしれません。
たぶん、風景論シリーズまだまだ続きます。笑。

評価:A
posted by みさと at 15:15| 奈良 ☁| Comment(0) | 読書(小説以外) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

われも恋う

 堀田あけみさんの連作集です。収録作品は『両手一杯にかすみ草』『桔梗のかなしみ』『われもこう』『クリスマスの花』『グッバイ ナルシス』『So Many Roses たくさんの薔薇の花』です。

あらすじ
 大学生の俺は、自分が信仰するように恋する有紀子のために起こした行動をきっかけに、花屋でアルバイトすることになった。六つの花をめぐる、六つの恋の物語。




 サークルの本棚でふと手に取ってみた本です。殆ど恋愛小説というものは読んだことがなかったのですが、中々楽しんで読めました。
吾亦紅の花、個人的に好きで手に取ったということもあります。すぎもとまさとさんの歌もあってか、もの悲しいイメージが強い花ですが、この小説でちょっとだけイメージが変わった気がします。われも、また、紅い。
一番のおすすめは『両手一杯にかすみ草』ですね。女性の不器用さ、変化がとても良い感じ。強がって着飾る女性と可憐なかすみそうの対比も好きです。両手一杯のかすみそう、素敵ですね。
『桔梗のかなしみ』も、花のイメージと物語があっていてよいな、と思いましたが、「トルコキキョウ」は私のイメージしていた桔梗とは違うみたいで……。でも、ちょっとやるせなくて、切なくて、悲しい良いお話です。
 ちょっといじっぱりで古風な主人公とか、かすみ草に出てくる女性とか、これが書かれた1991年だからでてきた発想なのだろうな、と思いました。現代のジェンダー観とか文化とかだと全然違うものが出てくる気がします。現代なら、携帯電話――ましてやスマートフォーン、ラインがあって恋愛の形も全然違ったものとなっていることでしょうし(19歳でありながら去年スマホを持ってから恋愛したことがない、自分に苦笑いですが)。

 いつ役に立つことがあるんや、なんて思いながらも花言葉を覚えてみたいな、とも少し思いました。


評価:B
posted by みさと at 14:53| 奈良 ☁| Comment(0) | 読書(その他の著者) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする