2016年06月27日

麦の海に沈む果実(再)

 恩田陸さんの長編小説です。

あらすじ
 二月の末日、青の丘にある全寮制の学園に転校してきた理瀬。そこは、三月しか転入生を受け入れてこなかった「三月の国」で会った。至れり尽くせりの教育を受けられる一方、自由な外出もできず、半ば学園内に隔離された状態になる者も多い。ある者にとっては「養成所」であり、ある者にとっては「墓場」であった。




 丁度5年前、中学時代に読んでいたく気に入った本です。ミステリ要素をふんだんに含みながらも少し現実離れした雰囲気に包まれた一冊です。
 5年前、理瀬と同世代だった自分も、はや大学生。また当時と違った風に物語を読むことができました。理瀬たちの若さ、幼さ、そして、それらが持つ甘いようなほろ苦いような、まっすぐ見るのが恥ずかしいような感情。これらは彼女らと同世代では気づきにくいものだと思います。
 またこの小説の魅力は、キャラクターの魅力にも直結しているような気がします。普段前面に出ている恐れの感情から芯の強さ垣間見ることのできる理瀬。ある意味で「正しい」クールキャラ・黎二。その他にもヨハン、憂理、聖……。登場人物の一人一人が個性的で愛着がわきます。孤立した学園都市、という要素だけでどこかワクワクしてしまいますが、そこに暮らす人々が魅力的なら、なおさら……。

評価:A
posted by みさと at 23:48| 奈良 ☔| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書(恩田陸) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年06月01日

地名の社会学

今尾恵介さんの本です。地名の成り立ち、階層、現状について分かりやすく述べられています。市町村の下の、大字・小字・町丁などの地名がどのような仕組みになっているのかは意外と知らない方が多いのではないでしょうか(高校のとき「大字」って何て読むのと友達に聞かれて衝撃を受けた記憶があります(^_^;))。地名に関するイロハが極めて明快に書かれているので、地名についての入門書にちょうど良いのではないでしょうか。
 また市町村の統廃合や住居表示の実施で古来より脈々と受け継がれてきた地名が消滅しつつある現状についても強く問題提起がなされています。最後に引用されたマーガレット・ジェリング氏の言葉にあるよう実際地名は「過去への道標」であり、測りきれない文化的価値があると私も思います。
 少々感情的な面もありますがかなりわかりやすい本です。これまであまり地名について意識してこなかった人も、この本を読んで少し考えてみてはいかがでしょうか。

評価:B
posted by みさと at 13:34| 奈良 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書(小説以外) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする