2015年07月28日

情動

 新津きよみさんの短編集です。収録作品は『女友達』『愛甥』『別居』『義理の兄』『ステップファミリー』『実家』『ひとり』です。

あらすじ
 美登利は敏子と歌舞伎を見に来ていていた。敏子は別れた旦那・圭一の母親で、嫁姑時代から着物の着付けを教えてもらっていた。別れた後それで縁が切れたかと思ったが、着物で歌舞伎を見にいこうという誘いが来て、それからしばしば一緒に行っている。二人の奇妙な関係を、美登利の妹などは「キモい」などと表現するが…。(女友達)




 久々の新津さんの作品。そして、久しぶりにたった二日で読了した一冊です。中学生の頃などそれが普通でしたが、受験生としては中々そのようなことも残念ながらできずにいました。
 全て家族にまつわるストーリーです。いずれも非常に短いながら、嫉妬、妄信、憧憬、絆、愛着などなど様々な人間感情が、少しねじくれたというか。狂気を帯びて感じられます。しかし、現実の人間に思考を至らしめてみると、実際この小説に描かれているように、人間感情はねじ曲がって、複雑に絡み合って、狂気じみている気がします。
 新津さんを読むといつでも思うのですが、人間の感情の暗がりを描かせると本当に新津さんは当世随一ですよね。短い一編一編の小説群は、それぞれ現実世界を濃縮した傑作ばかりです。この「家族」というテーマはこの新津さんの作風によく合っていて、新津さんの魅力がよく現れた一冊だと思います。
 おすすめはねじれた愛情、愛着が強く感じられる『愛甥』『義理の兄』、少し毛色は違いますが『ステップファミリー』です。ぜひ、みなさん読んでみてくださいね。

評価:AA
posted by みさと at 23:00| 奈良 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書(新津きよみ) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年07月10日

明日の記憶

 荻原浩さんの長編小説です。

あらすじ
 広告代理店営業部長の私・佐伯は50歳にして若年性アルツハイマーだと診断された。仕事の遂行が困難になってゆき、記憶が覚束なくなってくるのが恐ろしく感じた。娘の結婚・出産を控え、私の不安・恐怖はますます募る……。




 妹に勧められて読み始めた一冊です。私は最近社会福祉に興味があって、「こんな本があるのやけれど」と勧められたとき、迷わず読もうと決めました。
 あるはずの将来を奪い、日常を崩し、過去までも蝕ばんでゆく恐ろしい病気。こういう病気こそ周囲の理解が必要ですよね…。
 ともあれば夢の中に入ってしまいそうな不安定さが次第にページを繰っていくごとに増してくる感じがして、読んでいて自分まで不安になってきます。もし自分の身にこんなことが起これば…などと想像すると、本当に怖いです。恐怖と悲しみ、不安。それらすべてが身体にじわじわ染みこんでくるような感じがしました。
 ラストシーンは涙なくしては読めません。感動。電車の中で泣いてしまいそうになりました。社会福祉に興味ある人はもちろん、そうでない人にも是非読んでいただきたい一冊です。

評価:A
posted by みさと at 21:58| 奈良 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書(その他の著者) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年07月01日

春琴抄

 谷崎潤一郎さんの中編小説です。

あらすじ
 盲目の美女・春琴は三味線の達人であったが、吝嗇や嗜虐の気があるわがままな女性であった。少年・佐助は春琴の身の回りの世話をしていたのだが、ふとしたきっかけに年下の彼女を三味線の師匠として仕えるようになる。男女の関係を持つようになっても、春琴は佐助を旦那と認めず、佐助は弟子兼世話役としての生活を長らく続けた。
 あるとき、春琴は誰かに大火傷を負わされるが…。




 谷崎潤一郎さんは、学校の授業で読んだ『陰翳礼讃』に甚く感銘を受けて、興味を持ちました谷崎さんの本を何か読みたい、と思って家の書庫を探していて見つけたのがこの小説であります。あらすじを見てみると「被虐」とか「官能」とか書いていて「これって高校生が読んでもええんやろか…」と思いましたが、まあ江戸川乱歩さんの「芋虫」とか「人間椅子」とか読んでるし今更やなどと思いまして読み始めた次第でございます。
 先に挙げた二作品ほどエグみは少なく予想以上に読みやすかったです江戸川さんの持つ怪奇色は薄くやはり耽美派というだけあって官能的という言葉がよく合っています佐助が己の目を潰す場面には思わず自分まで目を覆いたくなりますが憐憫は殆ど感じず驚きと感嘆と少しの恐ろしさを感じました。盲目になったからこそ敬愛する春琴の永遠の美が保たれるようになったのです同時に複雑な恋愛関係もある意味でさらなる境地へ移行したように思えます中々常人では共感しがたい世界ではありますが読んでいて本当に圧巻されます。
 耽美派…。意外と好きなジャンルかもしれないです。もっと谷崎さんの本を読んでみたいな、と思いました。今年は受験勉強で中々読めないのが残念です…。

 気まぐれで句読点の使い方を真似てみましたが、素人がやったら読みにくいだけでしたね(苦笑

評価:A
 
posted by みさと at 22:56| 奈良 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書(その他の著者) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする