恩田陸さんの短編集です。収録作品は『曜変天目の夜』『新・D坂の殺人事件』『給水塔』『象と耳鳴り』『海にゐるのは人魚ではない』『ニューメキシコの月』『誰かに聞いた話』『廃園』『待合室の冒険』『机上の論理』『往復書簡』『魔術師』です。
あらすじ
『曜変天目の夜』 国宝の曜変天目茶碗を見に美術館に来た、元判事・関根多佳雄。老婦人が倒れる所を見て、昔の友人を思い出す…。
『新・D坂の殺人事件』 渋谷のD坂で死体が降ってきた。関根多佳雄は彼の死の原因を推理する…。
『給水塔』関根多佳雄と、彼の散歩仲間・時枝。彼らはいつも通り散歩していた。ある給水塔の前に差し掛かると、時枝はその給水塔にまつわる噂を語り始めた…。
『象と耳鳴り』 象を見ると耳鳴りがするという老婦人。彼女は其の原因となったであろう、幼少期に目撃した奇怪な象による殺人事件を語り始めた…。
『海にゐるのは人魚ではない』 ー海にいるのは人魚じゃないんだよ。あれは、土左衛門さー少年の謎の言葉を聞いた、関根多佳雄。彼は息子の春と共に、最近起こった一家心中の真相を推理する。
『ニューメキシコの月』 怪我で入院してしまった関根多佳雄。彼は友人の貝谷に、ある医者による連続殺人事件の話を聞く。多佳雄は、はっきりと分かっていない殺人の動機を推理する。
『誰かに聞いた話』 関根多佳雄は、永泉寺の銀杏の木の根元に銀行強盗が盗んだ金が埋められているという話を聞いた。だが誰に聞いた話かが思い出せない。彼の妻・桃代はそれを推理する…。
『廃園』 昔の友人の庭。そこには、薔薇が沢山植えられていた。多佳雄はそこに呼ばれた事を思い出す。庭の主が彼をそこに読んだ訳とは…。
『待合室の冒険』 列車が止まっている。そんな時、関根春は同じ待合室にいる一人の人間の動きに注目する…。
『机上の論理』 関根春と関根夏は、従兄弟の隆一に数枚の部屋の写真を見せられる。彼はこの部屋の主を当ててみろという。春と夏は、それぞれの推理を隆一に披露する。
『往復書簡』 渋谷孝子は、伯父の関根多佳雄に手紙を出す。文通しているうちに、孝子の町の人々を恐れさせている放火魔の話となった。多佳雄は放火魔の正体を推理する…。
『魔術師』 都市伝説…その正体は必ずある。関根多佳雄や貝谷は、S市の都市伝説の正体を推理する…。
なんと12編もの小説が収録された短編集です。あらすじを書くだけで疲れました…。最後の方は手抜きですがあまりつっこまないで下さい。
『六番目の小夜子』に出てくる関根秋や『図書室の海』に出てくる関根夏の父親・多佳雄が主人公の短編集です。彼らの兄の春も出てきます。秋に弟か妹がいたら冬という名前になるのかな?
さて、秀作ぞろいの短編集でしたが、『給水塔』『待合室の冒険』『往復書簡』が特にお気に入りです。殆どの話がそうですが、少しの情報であれだけ推理できる多佳雄は凄い。安楽椅子探偵ものはあまり読みませんが、これを読んで他の安楽椅子探偵ものも読みたくなりました。
この短編集の中でベストを選べと言われたら迷わず『待合室の冒険』と答えます。これは本当に傑作です。短編だからこそ、という魅力があります。
評価:B
posted by みさと at 09:55| 奈良 ☁|
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読書(ミステリ系)
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